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仕えるもの語  作者: マッド
禁忌あるいは、奇跡
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番外編 第三話

 クーガとミストが中庭にたどり着きクーガが握ってる手を少し弱める。

「‥‥『幻影(ミスト)』」

ミストがクーの手を振りほどきながら足元から霧が吹き出してあたり一帯を灰色の霧が包む。

「鬼ごっこかな。ミストから遊んでくれるなんて珍しいね」

クーガはこの状況でも満面の笑みを浮かべながら楽しんでいる。

「私、別にクー様と遊ぼうとしてるわけじゃないですからね!」

ミストが怒りながらクーガの周りに複数の分身を生み出し操ってクーガの動きを固定する。


「なーんだ、残念」

 クーガは少しがっかりした顔を一瞬だけうかべたが何か思いついたかのように楽しく踊り分身たちの間をすり抜けて分身たちを軽く壁側に飛ばす。霧でできているということもあり壁にぶつかった瞬間に衝撃も起こらずに霧散する。

「あれ、思ったより軽かったんだけど‥」

クーガは想定以上に分身たちが軽かったため少し驚いた様子で目をゆっくり瞑り音に集中する。


‥‥コロッ‥‥


クーガの左耳に飴玉を転がす音が広がる。

「そこだよね」

クーガが目を開けながらわくわくしながら音が聞こえた方に元気一杯駆け出す。


走る速度は次第に上がっていきミストの影も見えてくる。

「タッチ!」

「うわっ!」

 その場から逃げようとしているミストの背中に勢いよくクーガが抱き着く。

 ミストは驚いて逃げようとしていたが、クーガの突進の勢いに引っ張られ、重心が崩れる。


ふわり――。


二人の体が芝生へと倒れ込む。

 ざわり、と優しく広がる緑の絨毯が、転倒する衝撃をふんわりと吸収した。ミストの頬が芝生に沈み、ほんのりとした草の湿り気と、爽やかな香りが鼻をくすぐる。

クーガは大笑いしながら、ミストの背中から降りる。


「私の勝ちだよ!ミスト!今度はミストが鬼の番!」

「もう‥‥嫌」


 ミストは芝生に顔を突っ伏しながら飴玉をなめてつぶやく。

先程から舌の上で踊っていた飴玉の感覚がなくなり、指先が軽く草をかき分けて腰についているポケットから飴玉が入った箱を取り出そうとする。

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