第三十話 呪いを極める家の闇
「君たちが知っているようにサイエン家は呪いを研究している」
カリは淡々と話し続けて僕とセロナは黙ってそれを聞いている。
「そのうちの一つが人体の中に機械を付ける研究」
カリは右手で右目を覆ってすぐに離す。覆った目は真っ赤な赤色から青色に変化しており髪色も青の一色ではなく赤色が混ざっているような髪色になっている。
それをした後にカリが左腕の服の裾をめくりを右腕を見せてきた。その腕は人間や魔族の特徴が当てはまれず機械か何かで形成されておりカリはそれを普通の手足のように動かしている。
「それは?」
セロナが左腕に視線を動かしながらカリに質問する。
「家族にね……無理やり…肉体の改造をされたんだよ。呪いの才能がないならこのくらいのことには協力しろって。必死に抵抗しても…駄目だったよ。ボク自身体は強い方ではないからね」
カリは悲しそうに左腕を右腕でなでながら話す。
「それじゃあ、ジパングでの暴s……黒髪は何ですか。その腕と関係あるんですか」
「暴走でいいよキュウク君。あれはこの身体とは別の実験。悪魔と人体の融合っていう研究の産物かな。後で話すから今は……」
「まて、今悪魔といったか。それは一大事だぞ!?」
セロナがカリの言葉に出てきた悪魔という単語に強く反応する。
悪魔、1000年前の災厄イデアが何体も召喚して暴れさせたり、300年前に人間の国で一匹召喚されてその国を亡ぼしたりして、魔族や人間の中で忌み嫌われている種族。肉体の維持がこの世界では持続しないため長くても一週間までらしい。
「やっぱりそういう反応をするよね。先にそっちの説明をするべきだったね。反省」
カリは軽々しくいっているがその声の真実は違う気がした。
「ボクは何故か悪魔との適合率だけはサイエン家の中でトップレベルに高かったらしくてね大体8、9歳の時かな。そのくらいの時期に呪いを使ってボクの魂と悪魔の魂をがちがちに固く混ざりあってるんだよね。その悪魔がボクの力の本質?っていうものを無理やり解放させた時になるのがあの暴走状態のこと。あの姿になると悪魔も力を操れないらしくてね。ただただ人間や魔族を殺すだけの兵器になり下がるんだよね。昔ねボクといっしょに遊んでくれた友達も殺したことがあるんだよ。最悪の気分だったよ」
芝生に、ぽつ、ぽつ、と落ちる雫の音が聞こえた。
カリは笑っていた。
それなのに、泣いていた。
「ボクは、最悪だったよ」
いつものように軽い口調で話しながら、彼女はゆっくりと指を震わせた。
何かを必死に抑え込むように、唇の端だけが無理やり持ち上がる。でも、その裏にある苦しみは、目の奥から溢れ出していた。
僕は言葉を探した。何か声をかければいいのか?でも、何も言えなかった。
芝生の上に落ちる涙の音が、無駄に大きく感じる。
「ただの兵器になり下がって、ボクは……ボクは何をした?」
カリの視線は遠くに向けられている。
「おっと…、ボクとしたことが……涙を……流してしまったね」
カリが悲しい声を続けながらも頬を伝っている涙を左手でふいた。
「……続きを話そうか…」
カリが震えている唇を開こうとしたとき、
「もういい、お前の事情はさしった。それとカリ、お前があたしたちこれを渡した意味もな」
セロナの瞳が、まっすぐにカリを捉える。
その瞳には怒りはなかった。ただ、鋭い観察と強い意志がある。まるで、カリが 誤魔化そうとしているすべて を見透かしているかのようだった。
カリは一瞬、目をそらしそうになった。でも、セロナの手はしっかりと彼女を支えている。
「そんな…怖い顔しなくてもいいのに」
カリが笑いながらセロナに冗談を言うが、
「しっかりしろ!」
セロナはカリに強くカツを入れる。
そんな時、扉をバンと強く開ける音が届きセロナとカリはもちろん僕も体が跳ねるように驚く。




