第二十七話 訓練場に行く前に
ジパングでの出来事から三日後・・・
魔王城の病室でセロナがベットに座りながら僕はカリのことについて聞く。
「セロナ、クーを治療してた時のカリの様子について何か分かりますか」
「あの時のカリは、必死になってクーを直そうとしていたんだが途中からどす黒いカリとは別の魔力が出てきてクーガの傷を瞬きした瞬間に直したんだ。キュウク、お前はそんな芸当できるか」
「直すことは時間をかければできますが瞬きする一瞬のうちに直すのは不可能ですね。僕のお母さんで魔王軍一の治癒術者ならできるかもしれませんね」
ただ、確証はもてない。クーの傷の状態だと流石のお母さんでも数秒はかかるだろう。
「そうか。じゃあさっきの続きだがクーガの傷が治った直後に魔力が揺らいで一度照明が途切れて暗闇になったんだがすぐに付け直したらそこに黒い恰好になったカリが現れてあたしが魔法を発動する前に首を掴んでその勢いで氷のドームの最も脆くなる部分を見抜いて的確に壊す・・・、その後はキュウクも知っているはずだ」
話しを聞いて僕は恐怖を感じる。停電したら目の前に幽霊が現れて襲ってくるようなものなので正直すぐに動こうとしたセロナの心は頑丈ですごいなと思う。
「その時のカリを一言で表すなら何ですか」
「そうだな・・・」
僕の質問にセロナが一瞬黙り込んでから一言。
「あの瞬時に弱点を見抜いて最低限の行動で動くさまは……冷徹な殺人鬼とでも表現しようか」
「そうですか…」
僕とセロナの間にしばらく沈黙が流れる。
「キュウク様、カリ様がセロナ様を連れて訓練場に来てほしいとの伝言をお伝えにまいりました」
カレンが扉を開けて入室してきた。
「了解、セロナ動けますか」
カリからの伝言を聞いてセロナにたずねる。
「別に動けるが、そいつは誰なんだ」
セロナがベットから立ち上がりながらカレンを指さす。
「彼女はカレン。僕の尻尾から生まれた…眷属って言えばいいのかな」
「そうなのか」
セロナが僕の答えに納得し訓練場へ歩き始める。
歩いている途中で、
「カレン、後で会議開くからそれまでに書類の整理頼めるか」
「了、命令を実行します」
カレンが僕の部屋に戻っているのを見送ったら、念話で、
『ミスト、聞こえてるか』
『げぇ、キュウク様急に何ですか』
ミストと話し始める。ミストはカレンと同じ僕の尻尾から生まれたうちの一人で能力の幻影が便利なのでいつも無茶してもらっている。
『その発言は貸し一つと言いたいところだが、今すぐにウェザーを呼んどいてもらえるか』
『その命令は私がウェザ兄のこと苦手なの知ってのことですか。私、あの中二病の兄が大嫌いなんですよ!』
ミストが激しく怒りながら話す。ウェザーのことが嫌いなのは初耳だが今はそんなこと気にすべきことではないな。
『じゃあセンゴクのことよんどいてもらえるか』
『うっ…あのシスコン姉ですか…。ウェザ兄とセン姉どっちを選んでも地獄じゃないですか!?』
『どっちか呼んどいてもらえるか』
センゴクに苦手意識あるのは知っているのでそれをエサに揺さぶりをかけてみる。
『分かりました。ウェザ兄呼んどきますね』
何か諦めたかのような声でミストがウェザーを呼んでくれることになった。
『よろしくな』
ミストとの会話を切って僕は前を向き歩く。




