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仕えるもの語  作者: マッド
勇者が造った異世界の国
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第二十一話 冥土の翼、舞い踊る始まりは突然に

 朝の食事を済ませて今日も町を歩いている。


「三人さ、好きな物って何?ボクはね薬!」

「急に何ですか」


 クーと僕、セロナの三人にカリが突拍子もない質問をした。


「いやぁ、何となく気になったから。嫌いなものは大体知ってるし」


 カリの理由に呆れつつ、自分の好きな物について少し考える。


「あたしは魔法全般だな」

「私は甘い食べ物!砂糖とかな」


 セロナ、クーの順番で答える。クーの答えはまぁ何となくわかってたけど、セロナは氷系の魔法なのかなと思ってたけど魔法全般なんだなと思った。


「僕は‥‥‥」


 今更ながら自分の好きな物って何だろうか疑問が浮かぶ。苦手なものは甘いものっていうのは分かっているけど好きなものは深く考えたことないなと考える。


「‥‥‥クーですかね」


 考えたすえに一つの答えが小さい声で口から漏れ出る。何故かセロナとカリから変な眼でみられている。クーの方は僕の言葉にほんの少し頬を赤らめて照れているように見えた。


「‥‥‥いや決して恋愛感情とかじゃないですからね。付き従う立場として仕えて後悔しない主ってことですからね!」


 僕は慌てながら顔の前で手を振る。振ってから思ったが何故変な眼で見られて真っ先に恋愛というのが出てくるのであろうか、まさかな‥‥‥と自分の心に疑問を持ったがその思いはすぐにかき消す。


「その反応、キュウク君もしかしてクーガちゃんのこと好きなのかな~」

「お前の好きな物なんてそこまで興味ないし、これ以上深く詮索はしないよ」


 カリは意地悪そうに僕の言葉から推測する。セロナは絶対に勘づいているような態度をする。

 そんな時、僕たちの目の奥にある山の頂上付近が勢いよく爆ぜる。爆発と共に音と熱が直に肌に伝わり体が心の底から震えているのを感じる。

 爆発に驚いていると後ろから強い殺意を感じるボールひとつくらいの大きさの魔力の弾が僕に向かって飛んでくる。

 間一髪で右に体をずらして躱し、飛んできた方を見る。そこには、鷹の羽を生やしてその場にとどまり空に浮かんでいるフードを被った男がいる。


「誰だ」


 セロナがその男にいち早く魔法を発動し牽制の氷柱一回だけを放ちながら正体を探る。

 氷柱は男に躱され当たることはなく空のかなたまで飛んでいく。男はフードの下からセロナを少しだけ見た後に僕を見下ろしている。


「‥‥‥多少は楽しめそうだ」


 男がフードを脱ぎながら朱い眼で見ながら周りに響くドスのきいた声で話す。


「敵‥‥‥だよね」

「そうだろうな」

「ホント、キュウク君といると面白いものが見れるね、ふっしぎー」

「僕を疫病神みたいに言わないでください」


 僕たちは警戒を強め僕は弓矢を空間から取り出し、クーは魔法で即席の剣を造り、セロナは魔法を発動する準備をし、カリは試験管をバックから取り出す。


「おっ、やる気があるのか、それなら冥土の土産に俺のラクンという名前を覚えておけ」


 男_ラクンは話しをすると同時にこちらに急降下して目で追えない速度でクーに腕の鷹の爪で切りかかる。

 僕はラクンとクーの間に割り込み弓矢を盾として攻撃を防ぐ。


「‥‥‥ッ!? これ一応特注品なんですけどね」


 僕とクーが一歩後ろに下がった。盾として使った弓矢がボロボロになって壊れた。一応この弓矢誕生日の時に特注で自分にプレゼントしたものなので壊れたことが残念に思ったが今はそんなこと考えている場合じゃないと考え空間から昨日買った刀を取り出した。

 これなら、あの男の攻撃も防げるはず。


「怪我はないですかお嬢様」

「大丈夫だよ。ごめん油断した」


 クーを心配したが、大丈夫そうだな。ラクンの方に集中しているとセロナとカリが動き出す。


氷柱雨(アイスレイン)!」

上昇する弾丸(アップバレット)!」


 セロナとカリはラクンの左右に分かれ二人同時に魔法を発動する。


 セロナが男の真上と正面、左に魔方陣を出し、カリも一本の試験管の中にある液体を飲み干して男の真下と真後ろ、右に魔方陣を出し両方の魔方陣から似たような形の無数の礫を放った。セロナの方は氷の礫でカリの方は石の礫だろうか。あれは、逃げ道ないし僕はどうやったって防げないだろうな。カリのことだからあの薬、魔力増加と魔法結界無視の効果が乗ってるだろうな。

 そんな礫たちはラクンに当たり土煙が舞う。


「よし、初めてのことだけど上手くいったね!セロナちゃん」

「あたしが合わせてやるんだ。成功するにきまってるだろ」


 2人が僕とクーの方に戻りながら祝勝の雰囲気を醸し出す会話をしている。


「えっと、倒したんですか?」


 僕が()()()に質問した。


「あぁ絶対に倒した。魔力ももう感じないしな。あたしを信じr‥‥‥」


 セロナが僕の質問に答え終わる前に何かに気づきラクンを倒した方を見た。


「鬼式流 流鬼舞(リュウキマイ)二式!」


 クーが僕たちの前に出て剣をもう一本形成し、飛んでて来るいくつもの魔力弾を建物の方に踊るように華麗に受け流した。魔力弾は建物にぶつかって崩れ落ちていく建物も何個かある。


「お嬢様、ありがとうございます」

「感謝するぞクーガ」

「助かったよクーガちゃん」


 僕たちは三者三様の言い方でクーに感謝する。けど、倒した方から同じ魔力弾が飛んできたってことは‥‥‥。


「ああまじ最悪油断したわー」


 土埃の中からラクンが多少は服が汚れているが全然ぴんぴんしながら茶色の羽を閉じて出てくる。

 僕たちはより一層ラクンを警戒する。体内の神経をすべてをラクンに向ける。


「訂正するわ、これは本気で楽しめそうだ!」


 ラクンは不気味な笑みを浮かべながらこちらを見下ろす。

2025年11月30日 読みやすさの改善、セリフ追加+修正

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