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仕えるもの語  作者: マッド
第一章 序章
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第二話 恐怖の夢と日常の交差点

2025年11月1日 読みやすさを改善させてもらいました。

 静かで暗い場所だった。

 周りを見渡しても暗闇が続いているだけでここがどこだかわからない。匂いも何もしない。

 冷たい風が流れている。冷たく湿った空気が肌にまとわりつき、冷たさが体の内側の更に内側まで届く感じだった。水滴がぽちゃんと落ちる以外の音が何も聞こえない。

 不気味な気分だ。ただただ水滴の音が続くだけでそれ以外は何も聞こえてこない

 【恐怖】  これがこの空間に居て最初に抱いた感情だった。


「………リート」

「何だ?」


 どこからか声が聞こえた。女性の声でおとなしく物静かな印象を受ける。


「デリート、デリート、デリート、デリート、デリート、デリート、デリート、デリート、デリート、デリート、デリート、デリート、デリート、デリート、デリート、デリート、デリート、デリート、デリート、デリート、・・・・・」


 直後、数秒ごとにデリートという言葉暗闇の中に広がる。

 それは狂気を感じるように何回も何回も続く。前から聞こえるのか後ろなのか上なのか横なのか恐怖で心がむしばまれるそんな気がした。

 どこか分からない暗闇に包まれた不気味な空間。恐怖という感情で頭いっぱいになった。

 そんな時、目の前から僕とクーがと同じくらいの年代の少女が現れた。

 赤色がベースの黒が所々にありクーの髪色をひっくり返したような髪がより一層この場を恐怖で埋め尽くしてくる。顔もクーに似ていて瓜二つ。

 何が何だか分からないハテナが恐怖を塗り替えしていく。


 その少女が僕の頬に手を伸ばしてきた。


 伸ばしてきた手は美しく綺麗でひ弱な印象を受けた。


消去(デリート)


 声はとてもきれいで自分の全てを見透かされているような透明感がありながらも何か闇を感じる声だった。

手は肩に触れはじき返そうにもひ弱な印象とは裏腹にとても力があり手を弾き返せなかった。

心音が跳ね上がり、息をすることさえ危機を感じる雰囲気がする。

 こんな恐怖、王妃と対面するときと同じいやそれ以上の恐怖が‥空気が頭いっぱいのハテナの食らいつくす。

意識がもうろうとしていき目の前の影が少しずつ薄れていく

「…………けて」

薄れていく言葉の中、デリート以外の言葉が……聞こえた………気が…した。


そこでここでの意識は消えた。



 ◇◇◇



「はぁ、はぁ、なんだ‥‥‥夢、か」

 ベットから勢いよく起き上がった僕は荒い息をあげさっきの夢について考えた。

何だった今のは?最近よく同じ夢を見るが何一つ分からない。

そう思っていると。

「キュウ、おっはよーいい朝だね。そんな顔して大丈夫?」

「ああ、大丈夫ですよ。心配されるほどではありません。それより」

 ガチャリとドアを開けクーが元気よく声を上げ話しかけてきた。

朝の憂鬱な気分がクーの声でかき消される。

 朝も夜もクーいつも元気だなと思いつつもクーの服装に疑問を持つ。


「なんで上のパジャマが脱げているんですか!?」

クーのピンク色のパジャマが脱げて白くて見惚れてしまいそうな肌が露出している。

「えっ…ってホントだ!えっと…ゴシテキありがとね」

 気づいていなかったらしい。そんなことあるか?と思いつつもたまに下もズボンが取れていることは多々あったしそこまでは驚かないな。

「無理して難しい言葉使わなくてもいいですよ。クーにその言葉遣いは似あいませんから。」

 ご指摘という言葉を知っていることに驚いたがその言葉は正直クーには合わない。偉い人がいる場面ではそうして言葉も使ってもらうがこういう場面には使わなくていいと言っておくべきだろうなと思った。


「少しからかっているよね。」

僕の先ほどの言葉がからかっているような印象を受けたのかクーは怪訝な顔してこちらを見つめた。

「いえいえそんなことは」

決してそんなことはないと必死に訴えた。

「ならいいんだけど。それより早く朝ごはん作ってよ」

 僕の顔を見て嘘はついていないなと思ったのかいつもの太陽のような見ると周りを元気にさせる感じがする笑顔をして僕に食事の用意を求めた。


「ちょっとだけお待ちください」

 僕はベットから立つと調理場に向かって歩いて行った。


___数十分後


「うーんいい匂い!」


 木製の椅子に座りながらクーがよだれを垂らしながら話す。確かにいい匂いがする。けどよだれを垂らすのはさすがにやめてもらいたい。


「できましたよ。それとよだれを垂らすのははしたないので魔族学院ではやめてくださいよ」

 食事を机に置きクーはフォークを持っておいしそうに食べてくれた。ご飯を毎日作ってるから、おいしく食べてくれてうれしいなと思った。

「あっそうだそうだ聞きたいことがあるんだけどいい?」


 クーからの突然の質問食事を食べながらそれを見守る僕に聞いた。


「ああもちろんい…」

「ありがと。聞きたいことはね魔族学院のことなんだけどね。そもそも魔族学院って何?」

 自分の言葉を遮られたことにほんの少し怒りを覚えたが仮にもクーは僕は主だから手を出すことは出来ない。


「はぁ」

少し静かなため息を出すことで我慢した。


「少し怒ってるでしょ」


 怒りがさらに高まるがおそらくわざとではないと思う。クーの嘘を隠せない性格がそう物語っている。

 無自覚だと思うけどこうも言われると心が読めるのではと思ってしまうことも多々ある。


「怒ってないですよ。クーの無知に驚いているだけです。それより魔族学院についてですよね。2時間拡大版で…」

「疲れるんで手短にね」


「仕方ないですね。魔族学院とは初代魔王様が設立した名誉ある学校の一つですよ。入学試験を突破し、 この学校卒業した人がこの国の建築を一新したとか個々の魔法使いは各地の災害を素早く解決しているとかすごい魔族の方がたくさんいますよ。要は、すごい学校ってことですね」


「ふ~んけど私、入学試験なんて受けてないから入学できないんじゃないの?」



「推薦入学と聞いてますが魔王様からは入学した直後にクラス分けのテストがあるからそこでいいところ見せてこいとのことです」

 このことも一度なぜ試験を受けていないのに行けるのかと魔王様に質問したら

『推薦だよ推薦クーにも…わが娘にもそういっといてくれよキュウ』

 と軽いけれども絶対的な威厳を感じる言い方でに返された。

「お父さんはほんとに自由だなぁ」

「あなたが言わないでください」

 魔王様もそうだがこの一族は全員自由人なのではないか?


「はぁ!?私、お父さんよりきっちりしているんですけど!!あんな自由人の魔族と同じにしないでよね!!」

 クーはお怒りのようだが先日、魔王様と話したけどまったく同じ内容を言っていたなと僕は考えた。


「‥‥‥どの口が言っているんだが‥‥‥」

 クーにばれないような小さな小さな声でつぶやいた。


「なんか言った」

「いえ何も」

 おっと危ない。相当お怒りのようでこれ以上怒らせるとまずそうなので発言をやめた。


「まぁいいや、そのクラス分けのテストまであとどのくらいだっけ?」

 機嫌を戻したのかいつもの調子に戻った。本当に良かった数年前本気で怒らせたとき城の一割くらいは壊れたからな。


「二日ですよ。昨日も教えたでしょう。まったく」

「ふーん。って思ったより時間無いじゃん!!やっば準備何もしてないよ!」

 クーは相当驚いたようで椅子から勢いよく立ち机の上に置いた食事が落ちそうになった。そこはなんとかキャッチして何の問題もない。というか昨日へやの掃除をしたときに何にも準備してない方が驚いた。

 まぁ準備させたらさせたらで厄介なことになるし都合は良かったんだけどね。


「大丈夫ですよ。すでに用意自体はやっておりますのでそんなに焦らなくても」

「さっすがキュウ。なら焦る必要はなさそうだね。」

「あっ、けど」

「けど・・何?」


 僕の言葉にクーは不安を隠せていなかった。クーはさらに僕の瞳の奥を覗くようにこちらを見た。


「制服の採寸が出来ていないので後で付き合ってくださいね」

「何だそんなことか。一人になるかと思ったよ。」

 クーは僕の言葉に安心していたようだが一人になるっていったいクーの中ではどんなこと想像していたのだろうか。この人意外と一人はいやらしいから学院で孤立しないようにしないとな。



「ところで採寸って何?面白いもの」

「服のサイズを測るだけですよ」

「なーんだ、つまんない」

 少し暗い空気になっていたのがクーの明るさで元の空気になった。


 ◇◇◇



 食事を食べ終え、片付けをしているとさっきの夢について思い出す。クーに似た人物、似ているがまったく違う人物だと感じる独特な雰囲気。何も感じない、何もないただただ暗闇という名の恐怖が続く空間。

「吐き気がする……」

 あのなぞがなぞを呼ぶ空間の感想だった。

 どんな不気味なことが起こってもいつもの一日は幕を開ける。

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