第十二.五話
暗い空間、奥に一つの魔族の像が飾ってある。その像は黒曜石で作られており不気味な雰囲気を醸し出している。冷たい空気が流れて、部屋全体を苦しくしている。
空間の真ん中に石で作られた丸い机と石で作られた椅子が四つほど置かれている。
「まったく、誰もいないなんて哀しい哀しいな」
アインが椅子の一つに座る。
「哀しい哀しい言い続けるな。怒りが出てくる」
いかつい見た目をした屈強な男が何かを持って椅子の一つに座る。
「ドン、アインそんなにー言い争いしてたらー私がー喜べないんで黙ってもらってていいですかー」
キンがアインと屈強な男_ドンの言い争いを止めようしているのか分からない発言しながら扉の方から歩いてくる。
「ところでドン。ちゃんと持ってきたんだろうな、イデア様の剣は」
「当たり前だろう。お前らみたいに失敗するはずないだろ。まったく人一人捕まえてくることすらできないとか怒りが出てくるぜ」
ドンが禍々しい黒い瘴気を放っている剣を机に置きながら、アインとキンを煽る。
「何?」
アインがドンの言葉にイラついたのか手を上に振り上げようとした。アインが手を振り上げた瞬間、ドンが低い声でうなり、椅子の脚を床にめり込ませた。
「ドンーあなたはー私より弱いので私が喜ばない行動をするんだったらー殺しますよ」
キンは笑顔でその様子を見る。その笑みには冷酷で残虐な瞳をしていた。
「ちっ、まぁいい。ところでラクンはどこにいる」
ドンとアインは戦闘態勢を崩し、緊張した空気が多少はなごむ。
「あぁ確かにあの馬鹿がいませんねぇ。おい、アイン。何かー知りませんかー」
「あいつは目的の一つの竜の血を取るためにジパングに行ってくるとしか言われてないな。あいつの協調性のなさは哀しい哀しいね」
キンの圧に屈しアインはラクンという人物の居場所について話す。
「ジパングですかー。私は喜ぶことはなさそうですし、あんな馬鹿が死んだら逆に喜べるのでーいきたい人がいたらどうぞ逝ってください」
キンは無表情になり、アインとドンに聞く。
「あんな奴死んだところで関係ないし、涙という物が出るかもしれないから僕はいかないね。あいつが死ぬのが哀しい哀しいよ」
「俺も同じだな。あいつが死んでも怒りは出てこないしな」
「そうですかー。なら放置でいいですね。私はこれで失礼します」
キンはそれだけ言い残し部屋を出ていった。
「キンの自由奔放さも哀しいね。ドン君これからどうするんだい」
アインは手袋をして剣を両手で大切に持ち像の隣にある部屋に入っていこうとする。
「俺はじゃあポンペイの方までいってくるぜ。確か竜の血があったはずだしな」
ポンペイ・・・巨大な火山を中心に広がっている国
ドンは素早くこの場から離脱した。