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いざ、王宮へ⑨

「………?」

コンスタンスは潤んだ目で王妃を見上げ、胸に手を当てた。

「王妃…様…?私に…薬を盛った…の、ですか…?」

「ええ。痺れ薬と、媚薬を少々、ね」

「びや…く…っ?」

どうやら、ホットチョコレートに薬を盛られていたようだ。


王妃はツカツカと部屋の奥に向かっていくと、奥にあるドアを開け放った。

「ご覧なさい、コンスタンス。この部屋は、貴女が寵姫として王宮に上がった時のために、貴女のために私が用意した部屋よ。フィリップを待って、フィリップに愛されるためのね」

そう言って王妃が笑う。

ドアの向こうに目をやれば、天蓋付きの大きなベッドが部屋の真ん中に置かれている。


「どうして…、薬など…、」

体に力が入らないだけでなく、溶け出しそうなほど熱い。

コンスタンスはどうしようもない体を持て余し、身悶えた。


「辛いでしょう?コンスタンス。普段清楚で貞淑な貴女にそんな目で見られたら、フィリップも我慢できないでしょうね。私が出て行ったら入れ違いにフィリップを呼ぶよう使いをやるわ。その体、フィリップに慰めてもらいなさい」

「どうして…!どう…、して、そんな酷い…こと…」

「既成事実を作るためよ。フィリップは優しいから、強引には出られないの。だから母である私がお膳立てしてあげたというわけ。貴女は今から王太子の情けを受ける。情けを受けたら、もうその瞬間から貴女はこの部屋の住人よ。いくら実家や婚家が騒ごうとも、一度国王や王太子の情けを頂戴した女が後宮を出ることは出来ないわ」


たしかに、聞いたことがある。

たとえ人妻であっても、国王や王太子と情を交わした女はそのまま愛人にされ、後宮に留め置かれると。

国王や王太子の子を宿した可能性があるからだ。


「そん…な…っ!」

コンスタンスは絶望の目を王妃に向けた。

「辛そうね、コンスタンス。フィリップに鎮めてもらうといいわ」

王妃は声を上げて笑い、そして部屋を出て行った。

「いや、いやぁ…」

1人、身悶えるコンスタンスを部屋に残して。


その頃、ルーデル公爵夫人とエリアスは苛立っていた。

コンスタンスが王妃と共に後宮の奥に消えたまま、いつまで待っても戻って来ないからだ。

何度か侍女をつかまえて問いただしたのだが、

「お話が弾んでおりますので」

などとばかり答える。

今さら息子の元婚約者と、一体何の話で盛り上がるというのだろうか。


オレリアンもまた、後宮の入り口で苛立ちを隠せないでいた。

先程王太子が戻ってきてからも、だいぶ時間が経っている。

お茶会などすぐに終わるものと思っていたが、そんなに時間がかかるものだろうか。

だが、後宮の入り口には警備兵が配されているため、迂闊に足を踏み入れることも、中の様子を伺うことも出来ない。


「…コニー…」

相手は王妃であるし、母や兄、そして夫である自分が待つこの場でコンスタンスが何かされるとは思えないが、オレリアンは言いようのない不安を抱え、妻の名を呟いた。


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くっそ王妃に特大のざまぁを。
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