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16歳、やりなおし⑩

「つまり…、殿下は私を妾にご所望なのですね」

父の話を聞いたコンスタンスは呆然と呟いた。

衝撃を受けたのは当然である。

つい先日まで婚約者として想いを寄せ合ってきたはずの王太子に側妃として望まれているなど、どうして受け入れられようか。

側におきたいと望むことが例え愛情から出たことだとしても、所詮は側妃…、妾である。

どうしたって一番にはなれないのだ。


慕っていた相手にそんな風に思われたなど、日陰の身を望まれたなど、どうしようもなく哀しみが溢れてくる。

しかし、それと同時に、言いようのない憤りも込み上げてくる。

未来の夫と思い定めていた彼が、そんなことを考えるなんて。

未来の母と慕った王妃が、そんなことを容認するなんて。

王太子の元婚約者としての、公爵令嬢としての矜持が、到底許せるものではない。


「お父様、私、なんだかとっても腹が立ってきましたわ」

コンスタンスは顔を上げ、父を真っ直ぐに見据えた。

「コニー…?」

コンスタンスの反応が思っていたものと違い、公爵は思わず目を丸くした。

てっきり、打ちひしがれ、泣き出すのではないかと思っていたのだ。

だがコンスタンスの目は力強い輝きを放っていた。


「今の話を聞いて、なんだか吹っ切れました。私は大事な少女期をお妃教育で無駄にされた挙句捨てられ、今度は妾に召し上げられそうになっている…、そういうことですよね?」

「コニー…」

コンスタンスのしっかりとした口調に、父、母、兄の目に喜色が浮かぶ。

「もし本当にそんなことをお考えなら、私と、我がルーデル公爵家を愚弄するものですわ」

「ああ、その通りだ」

「お父様、お母様、お兄様、今まで御心配おかけして申し訳ありませんでした。私はもう大丈夫ですわ。今のお話を聞いてすっかり目が覚めました。私後日、王宮に行って参ります。そして、記憶を失っていることを悟られずに王妃様にお会いし、金輪際心配はご無用ときっぱり告げて参りますわ」


「コニー!」

公爵夫人はギュウッと娘を抱きしめた。

「お茶会には母も一緒に行きますからね!」

「よし、私は護衛としてついて行こう」

と兄エリアス。

「だがもしかしたら…、王宮に行けばフィリップ殿下にもお会いするかもしれないぞ」

「望むところですわ。殿下にお会いして、きっちり引導を渡して参りましょう」

そう言うとコンスタンスは父に向かって笑って見せた。


もうとうに、フィリップとの赤い糸は切れていたのだ。

い加減、前を向かなくてはいけないのだろうと思う。


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