プロローグ
ヒロインが記憶喪失になるお話ですが、すみません、医学的根拠には基づいていません。
以前書いたものを、少し見直して投稿しております。
「コンスタンス!」
最後に見たのは、驚愕に目を見開きながら自分の名前を呼ぶ青年の顔。
その深く蒼い瞳を見つめながら、コンスタンスの意識は沈んでいったー。
(長い長い夢を見ていたような気がする…)
少しずつ浮上していく意識の中、コンスタンスはまだ目を閉じたまま微睡んでいた。
瞼が重くて、もう少しだけ寝ていたい気分だったのだ。
(ああ、でももう起きなくちゃ。今日からお妃教育が始まるんだから…)
昨日正式に、王太子フィリップと公爵令嬢コンスタンスとの婚約が整った。
フィリップは8歳でコンスタンスは7歳。
まだまだ恋もわからないコンスタンスではあるが、フィリップの妃になるのは嫌ではない。
…というかむしろ嬉しい。
フィリップは子供の目から見ても素敵で優しい王子様だ。
それに2人は所謂幼馴染のような関係で、その仲も良好であった。
正式にフィリップの婚約者になったコンスタンスはいずれ王太子妃、王妃になる身。
今までは両親である公爵夫妻に可愛がられ、甘やかされて育ってきたが、これからはそうもいかない。
だって今日から、厳しいお妃教育が待っているのだから。
(そうよ!早く起きなくちゃ!)
コンスタンスは重い瞼を思いっきり開いた。
しかし。
(…あれ…?)
何か違和感がある。
天井の模様がいつもと違うような気がして、コンスタンスはなんとなく目をキョロキョロさせた。
「…奥様!」
突然耳の脇で甲高い声が聞こえて、誰かが自分の顔を覗き込んだ。
ポロポロと涙をこぼしながら自分を見つめる女性の顔に、見覚えはある。
でも、この人は明らかに自分が知っている人間より年をとっている。
それに…。
「ああ良かった!奥様、もう大丈夫ですわ!」
奥様って……、誰のこと?