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ヘルメットとリボンタイ  作者: 阿野二万休
第1章 自由業の自由
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06 都民の覚悟

「やっぱり私、手を出した方がよかったんじゃないですか?」

「……まあ、反論はしない」


 久太郎と色葉は並んで立ち、目の前の惨状を見つめた。


「金返せ! この、この、イカサマ(チート)野郎!」


 中年男は必死の形相でモヒカンギャングにしがみつき、細い腕を必死になって叩き付けている。一方ギャングは相手を突き放そうとするけれど、中年男は自分の指にモヒカンをぐるぐると巻き付け、耳や鼻にかじりつく。巨体に疾靴(テックス)も、密着してしまえば大して意味はない。周囲のギャラリーは沸きに沸き、その場で賭けを始める始末。


「私の、私の金だ! この、イカサマ、チート……(ゼット)でイカサマ!? 恥を、恥を知れ!」


 東京移民は叫ぶ。


「私、こっちのおじさん応援したくなってきました」

「僕も……あ、おっさん、ポケットあさってる」


 よく見ればでたらめに拳を叩き付けているように見えて、ギャングの服の、ポケットから中のものを抜き出そうとしている。なかなかのしたたかさに久太郎は少し感心した。このおじさんならきっと、いい都民になるだろう。


 感慨深い思いを味わっていた久太郎だったが、浮世絵に描かれたタコと海女のように絡み合いながら転がる二人が、どんどん筐体へ近付いていくのを見て顔を青くした。




 ……まずい。




 一瞬、色葉に動いてもらうことを考えたけれど、一瞬だけでその考えは捨てる。周囲に対して配慮しながら暴れろ、と色葉に言うのは、小学校低学年の鼻を垂らした男子に外で遊んでも服を汚すな、と言うようなものだ。




 久太郎は疾靴(テックス)で加速しその場からジャンプ、筐体と二人の間に滑り込もうとする。




 一般に、カジノ(ゲーセン)で負けの込んだプレイヤーがコントロールパネルを叩くことは、台パンと呼ばれるいつもの光景だ。ハンマーで叩いたのでもない限りセキュリティも反応しない。


 しかしそれなりの質量が、筐体そのものにぶつかった場合はどうなるか?


 跳んできた久太郎を見たギャングが体を大げさに引き、それに併せて中年男は離されまいと髪を強く引き……ぶぢんっ、といやな音がして、モヒカンがちぎれた。大きくのけぞった中年男はその勢いのまま、がごん、と大きな音をたてて筐体に、すさまじい勢いでぶつかる。遅れて、久太郎はその現場に着地。




 ……来ませんように来ませんように来ませんように……!




 と、必死で祈った久太郎の思いも空しく。




 一陣のフリル、レース、リボンがそこに舞った。

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