蒼の少女
色彩学園に通い始めて数ヶ月。
「やぁ、おはよう、リーブちゃん」
「おはようございます、菜花さん」
気さくに話しかけたのは転校生の紫 菜花だ。
長い茶髪を揺らしてリーブの顔を覗き込む。
「もう少し砕けた口調でもいいんだよ?」
「いえ、菜花さんは良くても私が良くないんです」
「むー、そう言うなら仕方ないか……」
菜花は諦めた様にやれやれ、と肩をすくめる。
「今日は1時間目数学かぁ……」
「おはようさん、リーブはん」
「あっ、猫先輩。おはようございます。」
彼女は鼠色 猫。
3年生で、今年で卒業する年齢だ。
「リーブちゃん、そろそろ部活決めないと退学になるよ。」
「えっ嘘!?……猫さん、探偵部に入れてください!」
「かまへんで〜!ほな早速手続きしに行こか」
そう言って歩き出す猫。
「あ、はいっ」
慌てて後を着いていくリーブ。
手続きはスムーズに行われ、リーブは無事探偵部に入部出来た。
「今度ウチらで歓迎会するで〜!」
乗り気な猫。
「探偵部にはどんな人がいるんですか?」
「ん〜、ゲームしてたり本読んでたりスマホいじったり……自由な部活やな。依頼が来たら解決する感じやね」
「なるほど……。」
メモをとるリーブ。
「そういやリーブちゃんは洗礼を受けなアカンで」
「洗礼?」
「そうやで。ウチとバトルして攻撃が当たれば勝ち。制限時間内に攻撃を当てられなければ負け。簡単やろ?」
「わかりました……!」
「と言っても学園内でドンパチするのもあかんなぁ。外行こか」
そう言って中庭へ向かう猫。
駆け足でついて行くリーブなのであった。
「ここならええやろ」
中庭に出て、仁王立ちする猫。
「ほんじゃま、始めよか」
「行きます……!」
リーブは木刀で切りかかる。
「遅いで」
ひらりとかわされる。
「まだまだ……!」
そのまま身体をねじって回転斬りを繰り出した。
その攻撃は猫の右腕にクリーンヒットし、猫は嬉しそうにしている。
「リーブちゃんやるやん!改めて入部を認めるでー!」
「あ、ありがとうございます……!」
息も絶え絶えなリーブ。
とりあえず部活の入部は出来た。
「……ん?」
探偵部の張り紙を眺めている青髪の少女。
「こんにちは。入部希望者ですか?」
「……ん、まぁそんな感じ。」
「ならさっき部長が出かけて行ったので一緒に待ちましょうか。」
「……ん」
こくり、と頷く少女。
「……」
「……」
「来ませんね」
「ん、そうだね。」
「あっ、リーブちゃん!探したで〜」
そう駆け寄ってくる猫。
「スマホのメアド教えるの忘れとったわ。はい」
「ありがとうございます。あとその……入部希望者がいらっしゃって……」
「……こんにちは。青崎 柘榴と申します。」
「ええでええで!洗礼は明日やな!明日の放課後、中庭で待ち合わせ!」
「わかりました。」
少女はそれだけ言うと姿を消した。
「不思議な子だったなぁ……。」
自室のベッドでポツリと呟く。
波乱の一日はこうして終わりを告げるのであった。