黒曜 錦
「こんにちは。翠川リーブさんですね?」
突如現れたニコニコと笑みを浮かべる青年。
「あ、あなたは……?」
「私は黒曜 錦。あなたを潰しに来ました」
「何言って……」
驚いたような顔で告げるリーブ。
「ではお命頂きますね」
そう言って錦はナイフを投擲する。
「っ!」
足に強化能力を使用しギリギリで回避すると距離を詰め懐目掛けてパンチを繰り出す。
「甘いですよ」
「しまっ……!」
喰らったはいいものの無傷であった。
大きな隙を作ってしまったリーブに容赦なく蹴りが繰り出される。
「カハッ……!」
腹にクリーンヒットしもんどり打って倒れ込むリーブ。
「ふーむ。意外としぶといですね。」
「っぐ……ぁ……。」
「なら手を変えましょう」
どこから出したのか巨大なハンマーで潰そうとした。
「おっと、僕なしで面白いことしてるじゃないか。」
「あなたは……!」
錦は割って入ってきた菜花を見ると驚いた顔をする。
指1本でハンマーを止めていたのだ。
「菜花……さん……?」
朦朧とする意識の中、菜花の姿が凛と見える。
「僕のリーブちゃんに手を出すなんていい度胸じゃないか」
珍しく怒っている菜花。
笑顔だが目が笑っていない。
「これ、返すね」
そう言ってハンマーを持ち上げ、振り下ろす。
「このっ……!」
錦はハンマーを仕舞う。
「……分が悪いですね。今回は見逃して差し上げます」
そう言って姿を消した錦。
「リーブちゃん、大丈夫かい?」
菜花がリーブに手を差し伸べる。
「はい……ありがとうございます、菜花さん」
リーブはその手をとると立ち上がる。
「とりあえず保健室行こうか」
「はい……。」
菜花の肩を借りよろめきながらもゆっくり歩いていく。
時刻はすっかり夕方になっていた。
「翠川リーブ……本当に腹の立つ奴ね」
「お嬢様、申し訳ございません。邪魔が入り始末出来ませんでした」
「アンタもつくづく使えないわね」
「仰る通りでございます」
「まぁいいわ。チャンスはまだあるもの。にしても紫菜花……アイツの正体も気になるわね」
「彼女は……色彩学園の創設者です」
「…………は?」
思わず飲んでいた紅茶を吹き出しそうになっていた。
衝撃の事実に驚きを隠せなかった餡子なのであった。