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僕は雪だるまかもしれない

作者: あずき



僕は雪だるまかもしれない。


しかし一方で、雪だるまでは無いかもしれない。


自分の姿が見えないからはっきりと分からないんだ。



僕はただここに置物のようにずっといるだけ。



寂しくはないよ。


目の前を通る人は見えるし、音も聞こえるから。


車の音、風が木の葉を揺らす音、子供たちがはしゃぐ音。




ある時目の前に小さな女の子がやってきた。



その子がキラキラした目で僕に聞いた。



「あなた、名前はなんて言うの?」



そう聞かれても返事が出来ないからなんだかもどかしい。



女の子は続けて言った。



「私が名前をつけてあげる!そうだな、今日はなんだかポカポカしてるから、ハルにしよう!」




ハル……。


僕にも名前ができるなんて、嬉しいな。




女の子は僕をぎゅっと抱きしめた。




「あったかい」




女の子は言った。



僕は雪だるまかもしれないのに、あったかいなんて不思議だな。


きっと、心が暖かいんだ。


僕もあったかい。


ふわふわしててとても気持ちい。





それから女の子は毎日僕の元にやってきた。



「ハル!今日はご飯持ってきたんだ。あと、ブランケットも持ってきたよ!」



女の子は僕の目の前にカップに入ったご飯を置き、僕の下にブランケットを敷いてくれた。



ずっと冷たかったのに、そこだけふわっと暖かくなった。



この子は優しいな。



けどね、僕は体を動かせないからご飯は食べられないんだ。



ごめんね。



また悲しくなった。



けれど、僕の心はあったかかった。




来る日も来る日も女の子はやってきた。




ある時僕のもとに来た女の子は泣いていた。



「ハル。いかないで。ハルがいなくなっちゃうの、悲しいよ」



そう言って初めて会った時みたいに僕をぎゅっと抱きしめてくれる。




あったかい……。




「……冷たい。あったかくなってよ!いかないで!ハル!」




冷たいのは当たり前だよ。


僕は雪だるまだから。


だから冬が終われば消えちゃうんだ。



この子に会えなくなるのは、悲しいなあ。


なんとか想いを伝えたいな。


今まで僕のそばにいてくれてありがとうって。


それから、もう泣かないでって。




『くぅん……』




その時空に声が響いた。



「ハル?……ハル!」



きっと僕の想いが神様に届いたんだ。


最後に、伝えられた。


もう後悔はないよ。



ありがとう。


名前も知らない女の子。


読んでいただきありがとうございました!

初めて超短編小説を書いてみたのですが、難しいですね(^_^;)


最後の鳴き声は一体なんだったのか、様々な解釈をして楽しんで頂けたら幸いです。よければ、あなた様の解釈を聞かせて下さると作者とっても喜びます。


活動報告に私の解釈を載せておきます。そちらの方も併せて読んでくださると嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
[一言] 自分のことを雪だるまと思っている僕。 女の子に名前をつけてもらって、 抱きしめてもらって。 僕の心があったかくなれてよかったです。 確かに最後の鳴き声は気になりますが、 それはみなさんのご想…
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