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黄泉からのマユ  作者: 工藤かずや
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新たなる戦い


マユはその足で瀬能と杉並警察へ向かった。

鑑識係の部屋の手前の装備室で、

殺人犯と相対するための極超カメラを身につけるためだ。


カメラは上着のボタンに仕込まれていた。

ボタンの中心のわずか1ミリ足らずの隙間に

高性能なレンズがはめ込まれており、

外部からは全くわからない。


焦点は正面2メートルに設定されており

シャッターは手に下げるバッグの持ち手だった。

手に力をわずかに込めるだけでシャッターが切れる。


そり精巧さにマユは舌を巻いた。

これなら相手からシャッターを切った瞬間がわからない。

デジタルだから何枚でも無制限に撮れる。


そこでマユは担当者相手に数十枚の写真を撮って

撮影のコツを覚えた。

写真には自動的に日時が書き込まれる。


毎日、夕方ここへ立ち寄ってその日の記録を

報告するよう瀬能から言われた。

これまで眉が遭遇していた数百人の殺人者が

記録として警察に残るのだ。


社会の安全のためには絶対に必要なことだと

マユは改めて納得した。

彼女から離れた場所に専属の刑事が数名つく。


それはマユの安全を護ると同時に

彼女の撮った対象人物の身元を探るためだった。

民間人として委託されたマユの任務は重要だった。


おそらく杉並署始まって以来初めてのことだろう。

だが、マユは少しも緊張はしなかった。

なぜもっと早く警察はこれをしなかったのか、

とさえ思った。


署を出て駅へ向かいホテルへ着くまでに

すでに三名の対象者を捉えていた。

いずれも捜査一課の刑事が尾行し、

姓名と住所を確認していた。


これで少なくとも殺人容疑者と見られる者たちは、

野放しにはなっていないのだ。

だが事件の証拠も証人も何もない。


人権問題が絡むため、

これ以上警察は本人とは接触できない。

だが、マユのおかげで膨大なデータベースが

杉並署に出来ることになる。


これまで迷宮入りになっていた事件、

事件と認知されていなかった物が

日の目を浴び、進展するのは確実である。


杉並署幹部はマユの働きに大きな期待を寄せた。

同時に、いかに超高性能カメラを使用すると言え

マユが大きな危険にさらされるのは目に見えていた。


もちろんマユがフェニックスー不死身の火の鳥であることを

捜査一課のスタッフは誰も知らない。

両親の死と光代の死から、マユは人知れず新たな決意をしたのだ。


リーパーから与えられたこの異能は自分一人の物でない。

世の中の役に立ってこそ意味があるのだ、と。

かけがえのない人たちの犠牲で、マユは成長したのだ。


だが、これまで経験したことのない大きな危険領域へ

踏み込んだことも事実だった。

それはマユが想像したより、

はるかに大きなものであることにいずれ気づくことになる。


邪悪な人間の恨みしと憎しみは果てしない。

これまでマユは、善意の者たちに囲まれて生きてきた。

マユの新しい任務は、彼女が真の大人の女にならなければ

果たせないものだった。








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