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黄泉からのマユ  作者: 工藤かずや
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鎮魂の復讐


マユはベッドに横たわっていた。

迷いに迷ったが、朝霞母娘を瀬能に渡しマユはホッとしていた。

父の言葉で警察組織には関わるなと言われていたが

今はこれしか二人を救う方法はなかった。


ベランダに音もなく光代が舞い降りた。

今回のことは光代の協力があった。

彼女の力なくして朝霞親子をここへ導くことはできなかった。


光代こそは影の功労者だった。

マユは起き上がってポットから熱い湯を出し

紅茶を入れてやった。


光代は笑顔を見せ、病院で待つ女性の元へ飛び立って行った。

彼女の善意で二人の女性が救われた。

紅茶を飲みながら光代の飛天を見送った。


その時、地上から一筋の光が走り光代と交錯した。

光代の身体が火の塊となり、地上へ落下していく。

「光代!!」


マユは叫んで階下へ降り、光代の落下地点へ走った。

一瞬何が起きたかわからなかった。

光代は空き地で火だるまとなっていた。


もはや手のつけようがなかった。

火炎の中の光代を、呆然と立ち尽くしてマユは見つめた。

誰がこんなことを!


心の底からの憤怒だった。

もう光代は病院で待つ女性には会えない。

背後で声がした。


やはり光代を追ってマユを襲った男だった。

「化け物を一匹退治してやった。次はお前の番だ」

彼は巨大な火弓を手にしていた。


それで光代を射落したのだ。

彼以外に五人の配下がいた。

いずれも火弓を手にている。


マユの中にこれまで経験したことのない激しい怒りが湧いた。

薄笑いを浮かべる男に向かって吠えた。

マユの口から紅蓮が走り男を火が包んだ。


これもリーパーから与えられた異能だが、

かつてマユは使ったことがなかった。

怒りが次々と火炎を放った。


勝ちて経験したことのない激しい怒りだった。

男たちは火だるまとなって地獄の業火の中で悶えた。

逃げる男たちの最後の一人までマユは焼き尽くした。

空き地は瞬時にして男たちの火葬場と化した。


男たちの体がすべて燃え尽きると、

マユは遺骸となった光代の残骸を抱いた。

こらえてもこらえても涙が溢れた。


自分のせいで光代は変わり果てた姿となった。

遠くで消防自動車のサイレンが聞こえた。

数台がこちらへ向かってくる。


マユは光代の遺骸を抱いたまま、そこを離れた。

美しい光代の顔も焼けただれていた。

あてもなく暗い道をマユは歩いた。


自分に協力さえしなければ、光代はこんな目に合わなかった。

これが朝霞母娘を救った代償なのか!

初めて使った殺戮の技を、マヨは後悔していなかった。


奴らはみんな地獄へ落ちればいい!

マヨが生まれて初めて抱いた復讐と憤怒の感情だった。

今も病院であの女性は光代の来るのを待っている。


気がつくと家の前にいた。

家へ入り、光代の遺骸を彼女がいつもマユ手作りのカレーを

食べていた食堂のテーブルに置く。


そして灯油を家中にまいた。

この家は父と母が残してくれた思い出の家だ。

ここを光代の火葬の地とする。


なんの後悔もなかった。

ここから光代は父と母のいる天へ向かうのだ。

火をつけた。


床に火が走った。

マユは外へ出た。

背後で家が燃え上がる。


それを背にあてもなく暗い道を歩いた。

かけがえのない友を無くした。

おそらく彼女は最後の飛天だった。


泣きながら、マユはただ暗い道をただ歩いた。












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