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黄泉からのマユ  作者: 工藤かずや
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FBI上級捜査官


雨宮の仕事を手伝うようになって、三ヶ月が過ぎた。


その日、雨宮から電話があった。


ぜひ、マユに会いたいというのだ。


なんだろう。


仕事では毎日のようにラインで連絡を取り合っている。


直接会う必要などないはずだ。


それでなくとも、雨宮は忙しい。


どうやらプライベートなことらしい。


雨宮の傘下へ入れということなら断るつもりだった。


これ以上、マユはプロファイリングの世界へ深入りするつもりはなかった。


詳しい詳細は伝えてこないが、マユは雨宮にとってなくてはならない存在になっている。


18歳の少女にとって、それ自体異常なことだった。


マユは学校へは通っているが、


普通の少女ではなくなっていた。


おぞましい事件のアドバイザーとして

ある程度のバイト代を得ている。


クラスメイトにはもちろん、学校へは秘密にしていた。


唯一知るのは雨宮を紹介して瀬能だけである。


マユは学校へ通うだけで、かろうじて心のバランスを保っていた。


それほど異常犯罪の世界がマユの心に重くのしかかっていた。


事件の詳細を雨宮から聞かなくても

おおよその想像はできる。


それがマユにとって心の負担になってきているのだ。


それが現実だった。


自分がこうなるとは彼女は予想もしていないだろう。


雨宮から来るFAXの陰には残虐な死体の存在がある。


それがマユを重く押し潰していった。


決して実態を伝えない雨宮の慎重な配慮はわかる。


三日後、いつもの吉祥寺のカフェで

マユは雨宮にあった。


雨宮のどうしても伝えたい要件とは

想像を絶したものだった。


アメリカFBIの上級捜査官がマユに会いたいと言っているというのだ。


FBIは雨宮の出身機関でもあった。


おそらく雨宮は警視庁にマユの詳しい活躍を報告しなくても、FBIにはしていたのだろう。


FBIがマユに関心を持つのは当然である。


難解な事件を有象できた。解いてやると称して


FBIに接触してくる霊能者や占い師が

おおぜいいるのはマユにも想像できた。


それらはすべて実態を伴わない売名行為である。


FBIへの協力者というお墨付きが欲しいのだ。


あわよくばそれでマスコミへの宣伝をしようとしている。


全ては売名行為だったろ。


FBIはそんな輩にうんざりしていた。


長いFBIの歴史の中で、本物は一人もいなかった。


だが、何度とくる雨宮の報告の中で、

マユと言う女子高生の存在にはFBIに注目していた。


そしてついに上級捜査官が、直接マユに会いに来日するというのだ。


雨宮にとっては名誉なことだった。


だが、マユにとっては必ずしもそうではない。


それが分かるから、雨宮はマユの存在を秘蔵してきたのだ。


FBI上級スタッフの来日は、歓迎できることではなかった。


しかし、マユの状況は雨宮が想像していた以上に深刻だった。


亡き父の捜査機関への協力は絶対にするな!という遺言を自分は破っている。


FBIの出現は決定的だった。


いずれはマスコミへも知れるし、公然の秘密となる。


大きな事件もないのに、FBI上級捜査官の来日そのものが不自然だからだ。


捜査官と会うことを断り、これを機会に雨宮との連絡を絶とうとさえ思っていた。


でなければ、父の霊前に立つことさえできない。


マユの悩みは深かった。


吉祥寺のカフェで雨宮とあったマユは、正直にそれを告げた。


雨宮の衝撃は大きかった。


今や彼女の仕事に、マユはなくてはならない存在だったからだ。


それと同時に、女子高生のマユをそこまで追いやった自分に責任も感じた。


即座に雨宮はFBIの捜査官に合わなくても良い、とマユに告げた。


マユは雨宮の仕事の秘蔵っ子である。


どうしてもてもなくてはならない存在だった。


売り込んでくる霊能師や占い師たちと

マユの行動は、まさに正反対だった。






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