表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄泉からのマユ  作者: 工藤かずや
18/54

愛と死の連鎖


京華の彼は、自動車事故で亡くなった。

突然のことだった。


乗っていた車は真紅のBMW。

京華は大破した車を、ほとんど真新しい車を買える金額で修復してもらった。


彼が乗っていた車に、あくまでこだわったのだ。

そして新車同様になったBMWで京華は二度事故を起こした。

いずれも彼女は奇跡的に軽症で済んだが、それを伝え聞いたマユは嫌な予感をした。


マユは元彼・涼の乗った車で、後を追おうとしているのではないのかと思った。

十分に考えられることだった。


京華はそれほど彼を愛していたから。


結婚の約束もしていた。

友人の友人である京華に、マユは会いたいと思った。

京華はマユより二つ年上の二十歳だった。


一途に彼を思い詰める昔のマユと同じだった。

友人の紹介でマユは京華と会った。

挨拶もそこそこにマユが見たのは、京華の寿命だった


まだ四十年あった。だが、安心できない。

寿命はあくまで順調に生きた時の結果で、状況と心境の変化で変わる。


愛車のBMWで事故を起こしても、今の京華は死なないはずだ。

マユにはそう見た。


初対面だが、決して事故を起こしてはならないと忠告した。


亡くなった彼が誰より悲しむからだ。

京華は快く承諾してくれた。

しかし、マユはそれを信じなかった。


一度した死の決意は、そんな簡単に翻るものではない。

自分では忘れたと思っても、死の香りはいつまでもつきまとうからだ。

マユはそれとなく友人を通じて、京華の様子を聞いた。


数ヶ月後に、新しい恋人ができたという。


恋人との関係は順調そうだった。

近いうち婚約するという噂まである。

京華は新しい人生に踏み出す決意をしたようだった。


これなら何もかもうまくいく。

初めてマユはそう思った。

やっと元彼、涼を忘れたと思った。


事故はまさにその夜、起きた。

大きな事故だった。

レンタカーで彼と別れた直後に、池袋近くの交差点で10トントラックに激突されたのだ。


即死だった。

マユは現場で変わり果てた京華をお迎えした。


死は常に意外な場所で待っている。

予測なくやって来る。


車が真紅のBMWではなく、元彼・涼の想いから解き放されたのがせめてもの救いだとマユは思った。


愛と死の想いは連鎖する。

それが愛と死の宿命だ。

生きる者の業だった。

遺された彼は、見るも無残なほど焦燥していた。


マユは彼が心配だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ