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黄泉からのマユ  作者: 工藤かずや
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死神になった正


正とまなみに連絡が取れなくなった。

スマホも通じないし、

吉祥寺の彼の部屋へ行っても

空室になっている。


忽然と二人は姿を消したのだ。

組織はなんとかして、

マユをおびき出そうとしている。


それだけはわかった。

二人は既に消されているかもしれない。

マユと関わったばかりに不幸にしてしまった。


彼らは何が何でも寿命交換させたいのだ。

これまでのしのぎで最高なものだから。

マユは荻窪、吉祥寺をさまよい

彼らの目に触れるようにした。


マヨを動かすことが不可能と

分かれば諦めるだろう。

マユは火の鳥だ!今はそれしか手がなかった。


何度か殺されるだろう。

覚悟のうえだ。

もうこれ以上犠牲者を出したくない。


吉祥寺のスタバでモーニングを摂っていたら

正が来た。

スタバにモーニングセットはない。


あくまでマユのモーニングだ。

言動からいつもの正ではないとわかった。

やはり正とまなみは消されていた。


リーパーが正の姿を借りて現れたのだ。

何も飲み物を購入していない。

スタバのルールを知らないのだ。


「人間強欲さ、目的のために手段を

選ばぬ非情さにはつくづく呆れた。

そんな輩は一掃することにした」


あの温厚なリーパーがそんなことを言うのは珍しい。

マユは自分のゆずシトラスティを正の前に置き

自分は新しくスタバラテを摂って来た。


「彼らを殺すの?」

リーパーの正は無言で笑った。

「我々には自然死という概念はあっても

殺すと言う言葉はない」


私があくまで寿命交換を忌避した理由を

わかってくれたの!人間の欲は獣に劣る。

獣は足ることを知っているが

人間の欲は際限がない。


それを正当化し法律のぎりぎりを狙う悪質さを持つ。

「私は何をしたらいいの」

マユは聞いた。


「何もしなくていい。ただ、ある組織から

毎日十人二十人という大量の

葬式が出ることになる」


「それがすべて自然死か事故死なのね」

「私のサインだ」

話していて、私は以前の正が懐かしかった。


むかし「友を選ばば書を読みて、六分の狭気、

四分の熱」という歌があった。

それがマユの恋人の条件でもあった。


石田と正もそんな種類の男たちだった。

なぜか、彼らは若くして命を落としていく。

「これからも汚い手で寿命交換を

行おうとする輩はすべて同じ運命を辿る」


マユに残されたのは杉並署の織部だけだった。

私には彼がいる!

父は彼との接触を禁じたが、

マユは織部を強く意識した。


彼に会いたかった。

マユのゆずシトラスティをすべて飲み干して

リーパーの正は店を出て行った。


寿命交換の中止をわざわざ告げに来たのだ。

「死神でもゆずシトラスティが好きなんだ!」

彼が去った席で、マユは妙におかしかった。


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