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黄泉からのマユ  作者: 工藤かずや
14/54

パパとの別れ


パパが変わってしまった。

ほとんど家にいることがないし、

いてもマユと話さないし目も合わさない。


だからと言って不機嫌なわけではない。

人が違ってしまった。

そう思うしかない。


だが、マユの作ったカレーは

いつものように食べてくれる。

どうしちゃったんだろう。


三日も四日も家に戻らないこともある。

これまでも捜査でそういうこともあったが

それとは明らかに違う。


マユを避けている。

笑顔を見せない。

話をしない。


マユは寂しかった。

いつものパパはどこへ行ったんだろう。

そんなある日、署の織部さんから電話があった。


彼と接触することはパパから禁じられている。

どうしても、至急会いたいという。

パパに関することだという。


彼はパパの捜査を引き継いでいるという。

どういうこと?

パパは署へ行ってないの?


マユは杉並署の近くのカフェで

織部さんに会った。

彼から父のことを聞いて驚愕した。


父はもう十日近くも署へ出ていないという。

しかも無届けの出署拒否だ。

このままでは父は懲戒免職になるという。


期限はあと二日。

いったい父に何が起きているのか!

ただ一つ考えられるのは母の死だ。


しかし、母の死は捜査一課が途中から

極秘裏に捜査し、結論が出ているはずだ。

その結論は父に告げられていないと言う。


あまりに不可解なので告げられなかったのだ。

寿命交換だのマユの異能だの、

死神の存在だの捜査一課の手に余ったのだ。


それで母の自殺は錯乱として処理され

極秘事項として公開されなかった。

父にも真相は伝えられていない。


だが織部だけは、マユが殺人者を

見分けたことで真相を知っていた。

父は署を無断欠勤し、自分の手で

母の死の真相を突き止めようとしているのだ。


マユは唇を噛んだ。

自分が父と母を不幸にしてしまった。

哀れなママとパパ!


その夜、久しぶりに帰ってきた父は、

食卓で私と向き合った。

彼は自分の手で真相を突き止めてきたのた。


父の様子でそれがわかった。

さすがは捜査一課のベテラン刑事だった。

だが、それによって彼は新たな苦しみが始まっていた。


「事情はよくわかった!だが、パパにはどうしても信じられない!」

無理もない。彼の捜査で経験したことのないことなのだ。

寿命交換だ?そんなことは絶対有り得ない!


「ママの兄貴、入院している知之叔父さんの命があと二日だ」

マユは驚いた。あの叔父さんがそんなになってるなんて!

「パパの寿命はまだ、20年近くあるはずだ」


パパの意図がわかった。

自分と叔父さんの寿命交換して見せろと言うのだ。

マユは父の顔をじっと見た。


父の死は一年後だった。

マユは何も言えずに下を向いた。

父は悟った!


苦笑してつぶやいた。

「そうか、俺の命は短いのか」

下を向いたマユの目から涙が溢れた。


私はかけがえのない人たちを、不幸にしていく。

深夜、父は黙って家を出て行った。

そして、二度と戻ることはなかった。


そんなマユに織部だけが寄り添ってくれた。

すべての事情を知っていたのだ。

「マユちゃんのせいじゃない」


その一言がマユには辛かった。






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