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苦くて、大切な想い出

作者: るん

熊野寮アドベントカレンダー2020その2

12月25日分 差し替え

 室の昼休みに告白とやらをしたことはありますか?

 もちろん、罪の告白なんかじゃなくて、愛の告白ですよ~~(´>///<`);

 しかも、昼休みに!クラスメイトのいる前です!

 そんなアニメや小説みたいなことがあるのでしょうか?

 それがあったんですよ。

 どうしてそうなったのでしょうか。


 中学の時の話です。

 まだまだ若かった私にも好きな人がいました。

 その理由は何だったのでしょうか。

 今となってはもう定かではなかったと思いますが、おそらく一目惚れだったような記憶があります。


 肌寒い風が、溶けのこった雪の山をなでる。そんな春の日のことでした。

 入学前講座というものが私の中学校にはありました。

 そこに、遅れてきた子。

 私はその子にビビッと来たのです。

「あ、好きかもしれん」とね。

 もちろん、すぐ座席表を見て名前を確認しました。


 そして、待ちに待った入学式。

 運がよいことに私とその子は同じクラスになったのです。

 そこからはいろいろなことがありました。

 その子が掃除当番の時には常に手伝うようにしたり、授業中にジェスチャーやアイコンタクトで連絡を取り合ったりしました。


 当時は、「恋している」ことが楽しかったです。

 誰にも言えない気持ちだけど、気づいてほしい気持ち。

「好きな人いるの?」と聞かれても「いるよ」としか答えない。

 クラスメイトの女子の名前を囁かれてにやけないように頬を引き締めたこと。

 ある日、厚紙からものを切り出す作業で、学校にはハサミしかないことを見かねて、カッターを持っていたことがありました。

 カッターで作業を進めていました。

 他の人とは違うことができている。そんなことに酔いしれて僕は、いい気になっていました。

 そして、私はカッターを片手に友達にこんなことを言ったのでした。

「アイ アム カッターボーイ」と。

 私の活舌があまりよくないこともあって友達にはこう聞こえていました。

「アイ アム カッタオモーイ」と。

 その時に、その間違いを指摘すればよかったのですが、この気持ちにあの子に気づいてほしくて否定せずに、その友達からの追求を楽しんで受けていました。


 一度、ヒヤッとしたこともありました。

 それは、ある秋の日のこと。その子が友達に「〇〇(私の名前)っていつも掃除手伝ってくれるんだよね」といったことがきっかけでした。

 その友達の子が私に向けて、「△△(その子の名前)のこと好きなの?」って聞いてきたのです!

 いやもう、鳥肌立ちましたよね。背中の汗すごいし。

『やばい、やばい、やばい』って心の中で叫んでました。

 今もそうなのですが、他人に行っていない恋愛ごとって詮索されると心のアラートがすごいことになるのはなんでなんでしょうね。

 その時はとっさに、「そんなわけないじゃん」と否定してしまったのです。

 しかも、その子の前で。

 今思うと、少しばかり後悔しています。

 もしここで、告白することができていればあのようなことにはならなかったのではないのか。

 そう思う心は私の中に内在しています。


 一年間もあったのに、なぜ私はその子に告白しなかったのでしょうか?

 関係性を崩したくなかったから?

 機会がなかったから?

 甲斐性なしだったから?

 そのどれもが正解であり、間違いでもある。

 一番の理由ではなかったから。

 一番の理由。それは、『その子に好きな人がいたから』なんです。

 その子は、もう入学したてすぐのころから同じクラスの□□が好きって公言していました。

 だから、私は彼らを引き合わるためにいろいろなことをしました。

 偶然をよそって同じ作業をさせたりと。

 だから、もうすでに私がその子の隣にいることは無理だとずっと思ってました。

 なぜなら、その子はそのことを揶揄されても恥ずかしそうに「やめて」というだけだったからです。


「恋愛は奪い合いだ!」という言葉があります。

 でも、私にはそんなことはできませんでした。

 どうしても、他の人の想いや願いを通そうとしてしまう。

 だから、他人の想いを知ったうえでなお、その人と自分が幸せになれるように頑張っている人物には憧れを感じます。

 よくあるハーレムものを好き好んで読んでいた時期が私にはありませんでした。

 ハーレムものが好まれている理由としてよく挙げられるのは、『いろんな女の子から言い寄られるから』というものがあります。

 確かに、そういった性質はあるのかもしれません。

 でも、それだけではないのです。

 ハーレムものが成り立つためにはどうしなければいけないのでしょうか。

 ただ、いろいろな女の子から言い寄られればよいのでしょうか。

 それだけでは成り立ちません。

 一人のことが好きな複数の異性間でお互いの気持ちを認め、受け止めた上で、みんなで幸せになるためにはどうすべきなのかを考え、実行する必要があるのです。

 その姿は当時の私から最も離れた姿でした。

 だからこれ、私は憧れを感じ、ハーレムものが好きだったのだろうと今ならそう思います。


 そして、運命の歯車が回り始めた2月。

 またもや、今度はクラスメイトの女の子に「ねぇ、△△のこと好きでしょ」と聞かれました。

 次はその子のいないところでした。

 私はその時、「うん、そうだよ」と答えました。

 その時の顔を熱さ、胸の高鳴りは一生忘れることはできないでしょう。


 次の日には、クラスの他の女子から「△△のこと好きなの、ホントなの」と聞かれました。

 恋愛話って広まるのがはやいなって感じました。

 昨日の今日で、もはやクラスの公然の事実化していたことは否定できないです。

 それが、事実になったのは3月のこと。

 まだ、溶け残りの雪がある。肌寒くも、春の訪れを感じさせる日のことでした。


 そうして、私たちは学年を一つ上へ進めました。

 私とその子は別のクラスになりました。

 やはり、少し寂しくはありました。でも、その子とその子の好きな人が同じクラスだったということを聞いて「がんばれ」って心の中で応援した記憶があります。

 当時、私は携帯を持っていませんでした。さらには、SNSさえもやっていなかったのです。唯一といえば、2chぐらいでした。PSPを改造し、2chを見ていたことはまた次の話。(あまり板に張り付いたりしていたことはないのですがね)

 そういうわけで、私は春休みに何があったのか理解できていませんでした。

 私だけが何も知りませんでした。


 そうしたまま、学校が始まり、2週間がたちました。

 その日のお昼休み、私は友達と弁当を食べていました。

 ひょんなことから、その子の話になりました。

 そこからは、あまり覚えていません。

 ただ覚えているのは、クラスメイトが、その子を僕の教室まで連れてきたことは覚えています。

 そうして、私は顔を真っ赤にして、全力で叫びました。

「ずっと前から好きでした」と。

 その時の緊張と、クラスからのヤジは今でも忘れることができないです。

 その言葉を言った瞬間に、その子は教室から全力で駆けていきました。

 僕はそれをただ見ることしかで来ませんでした。


 その後、彼女の友達から「返信ほしい?」と聞かれました。

 私は「いらないから」と恥ずかしまぎれに答えました。

 なぜなら、私の恋は報われるはずがない、報われてはいけないと感じていたからです。

 私には、彼女の恋を押しのけてまで自分が報わることが許せなかったのです。

 それ以降、彼女と言葉を交わしたのは挨拶っきりで、ちゃんと話をした記憶はありません。


 これは後から聞いた話なのですが、その子は私が告白した1週間ほどぐらい前に□□(その子が好きな人)から告白されていたらしいのです。

 私が告白したときには、まだ付き合ってはいなかったのですが、当時周りが私に告白させようとしていたのがようやくわかったような気がしました。

 これは、さらにもう少し時間が経ってからの話なのですが、その子の恋は報われたようです。それを聞いた日の夜、こっそり泣いてしまったのはココだけの話です。


 それからというもの、私は勉強ばかりしていました。

 その子のことを一刻も早く忘れようと。

 恋愛なんてわき見をしないようにと。

 そのおかげで今の私があるのは否定できないです。

 だから、後悔はしていません。

 ただ、一つ心残りがあるとすれば、その子に謝罪と感謝を伝えることができなかったということです。

 私は告白という形で自分の気持ちに決着をつけた。その子を利用してしまったことへの謝罪。

 私はその子のおかげでここまでくることができた。私を導いてくれたことへの感謝。

 それを伝えることができませんでした。

 今となっては、その子と連絡する術すらありません。

 だから、これがその子まで届くことを祈らんばかりです。

 私のこの想いを。


 ――ごめんなさい。そして、ありがとう――


これ以降、私は人に恋愛話をするのをやめました。





私が恋愛を諦めたのはまた別の話。

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