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犬に転生したら何故か幼女に拾われてこき使われています  作者: 絶華 望(たちばな のぞむ)
必然が彼らを冒険に誘う

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アンネローゼの旅日誌4

皇紀311年 土の精霊2の月 15日 水曜日


 今日は港町に向けて旅に出た。最初は楽しかった。でも、話す事も無くなり退屈になった。今まではセバスやマリー、聖女の盾のメンバーが居たので、暇になったら話しかければ面白い話が聞けた。

 今はシュワちゃんとキョウちゃんとラビちゃんしか居ない。しかも、シュワちゃん以外は会話が成立しない。キョウちゃんは意味不明な答えが多く困惑する。ラビちゃんは「はい、ご主人様」しか言わない。シュワちゃんとはそれなりに会話が続くが、話題が尽きてしまった。

 そんな時、ベルタに出会った。同じ年頃の女の子と身分の差を気にせずに話すのは初めてだった。皇女として同い年の女の子と会ったとしても身分さで普通の会話は出来なかった。

 とても楽しい一時だった。ベルタとは友達になれる気がした。でも、シュワちゃんは渡さない。私の大切な友達なのだ。


 楽しい旅の途中で悲しい人たちに出会った。元領主の被害者だった。シュワちゃんはちゃんと分かってくれていた。彼らに出来る限りの事をしてくれた。だからこそシュワちゃんは私の一番の友達だ。私が言わなくても私がして欲しいと思った事を実行してくれるのだから。



皇紀311年 土の精霊2の月 17日 風曜日


 大罪戦士が襲って来た。彼らが何故、私を狙っているのか分からないが、どうにかして私を捕えたいらしい。きっとシュワルツェンド皇国とフーリー法国の同盟を阻止するのが目的なんだろうと思う。

 でも、私にはシュワちゃんが居るのだ。負けるはずは無いと思っていたが、シュワちゃんが動かなくなった。きっと灰色の女の仕業だ。そして、キョウちゃんがおかしくなった。ラビちゃんは黒い女に攻撃されてかわすので精一杯の状態だった。

 この状況で動けるのは私だけだった。今までシュワちゃんが助けてくれた。今度は私がシュワちゃんを助ける番だと思った。効くか分からないが魔法『聖撃』を使った。結果、灰色の女を倒せた。

 シュワちゃんが自由になったので紫色の男を倒した。黒の女と金色の男は逃げた。戦いに勝った後で、シュワちゃんが私に救われるのは二度目だと言っていた。一度目は最初思いつかなかったが、何となくシュワちゃんが初めて私の前で号泣した時だと分かった。

 あの時、私が話したのは、ただの経験談だった。それは、本当に何でもない事だった。でも、それでシュワちゃんが救われたのなら良いと思った。


 ベルタがシュワちゃんが救世主と呼ばれていることを知った。その結果、なんで私だけシュワちゃんが守るのか不満だったようだ。私はベルタが食事の後、人知れず吐いているのを知っていた。その理由も知っていた。なぜなら一時期私も同じような状態になったからだ。

 その時はセバスや聖女の盾に本当に申し訳の無い侮辱的な行動をしてしまった。でも、その時、セバスと聖女の盾のメンバーは私に教えてくれた。『守る』という約束は、軽いものではないと……。

 ベルタもデニスさんやクラウスさんの覚悟を知る時が来るだろう。でも、今はまだその時では無かった。だから、シュワちゃんがベルタに説明していた。その説明の中でアイスが出てきた。

 私はアイスが有能だとは思ったが、正義の味方だとは思えなかった。どこか打算的で利己的な一面が見えたのだ。でも、有能なのは間違いなかった。その点は信頼しているが、シュワちゃんが言った事を実現しようとしているとは思えなかった。

 でも、もしそうならば、宰相になって欲しいと思った。前の宰相はとても有能だった。大臣たちの画策によって死んでしまったが、父上もそれを知っていて宰相の位を空位にした。これは、大臣と父上の駆け引きだった。父上は皇国という政治形態で出来る抵抗をしていた。アイスが宰相になってくれれば、この国は変わるかもしれないと思った。

 ベルタは私が皇女だと知って、今までの無礼を詫びてきた。それは、とても寂しい事だった。やっとできた同年代の友達を失いたくなかった。だから、私は、今まで通りで良いよと伝えた。

 それでも、ベルタは身分の壁を理由に私との間に壁を作ろうとした。だから、私はこういった。

「身分を隠して旅をしているんだよ?ベルタが私を皇女として扱うとそれが台無しになるんだけど?」

 そう言うとベルタは嬉しそうに応えてくれた。

「分かった。アンネがそこまで言うなら私はアンネを友達として扱うね」

 こうして私の人生において初めての同性の友達が出来た。



皇紀311年 土の精霊2の月 19日 光曜日


 今日は念願の港町アムスに着いた。ベルタとの再会を約束して、宿を手配し、冒険者ギルドでベルタと再会した。幽霊船討伐のクエストを受けて、外に出た時、赤い巨大な竜が現れた。それを見た瞬間、私は恐怖を感じていた。

 本能があの存在を拒絶していた。理由は全く分からなかったが、酷い嫌悪感と絶望感と拒否感があった。そんな最悪の存在と共にシュワちゃんが移動した。その瞬間から心臓が激しく動き始めた。

 何故か、シュワちゃんが生きて帰ってこないと思ってしまった。赤い光とけたたましい音が響き渡った。血まみれの男の人、白い箱型の馬車、白い服を着た人達。そして、白い布を顔に張り付けた男の人……。シュワちゃんが大切な人に会いに行った日にシュワちゃんの視界を通して見た光景と似ていたが、私が見た視点とは違う光景だった。

「いや~~~~~~~~~~~」

 私は叫んでいた。訳も分からず叫んでいた。

「どうしたの?アンネ」

 ベルタが聞いてきた。でも、私は上手く答える事が出来なかった。

「分からない。分からないけど怖いの」

 私は震えていた。私はシュワちゃんの視界を見ていた。シュワちゃんの無事を願って補助魔法を発動させた。人目があるので詠唱は行わなかった。

 スキル『愛の奇跡』が発動し『絆』のスキルを獲得した。その結果、シュワちゃんを強化できた。

 シュワちゃんは赤い竜を切り刻んでいた。戦闘を優位に進めているようだったが、シュワちゃんは死んだ。空間転移の魔法で攻撃をかわしていたが、何故か攻撃を回避できなかった。私はシュワちゃんの復活を願った。

 それは、即座に実行されシュワちゃんが蘇った。だから、私はシュワちゃんに『勝って』とお願いをした。シュワちゃんは快諾してくれた。その後でシュワちゃんからお願いをしてきた。刀を作って欲しいという内容だった。私はセバスから剣と刀の違いについて聞いていた。


 セバスが大切にしている刀があった。

「ねぇ、セバス。どうしてその剣を佩かないの?」

 私の純粋な疑問に対してセバスはこう答えた。

「これは、剣ではありません。刀という東洋の武器です」

「刀?」

「そうです。剣ではなく刀と言います。斬る事に特化した最強の剣です。なので、私が本当に殺すべき相手以外に使うつもりはございません」

「なら、持ち歩いた方が良いのでは?」

「相手は、一国の王です。アンネ様を護衛している時に奴が現れる事は無いですからな、私がこの刀を持つ時はシュワルツェンド皇国がオールエンド王国に攻め入る時だけです」

 その時は、それで納得した。


 シュワちゃんも刀を望んだ。スキル『愛の奇跡』が発動しスキル『使い魔武装付与』を獲得した。スキルを使ってシュワちゃんに武器を送る事が出来た。その後で、シュワちゃんは赤い竜を倒した。

 私は心底安心してシュワちゃんに抱き付いた。それを見て、ベルタは優しい顔をしていた。私はシュワちゃんに撫でて貰って安心した。その後でベルタは私に謝ってきた。聖女が何に狙われているか理解し、ベルタの敵と私の敵を比べたら、シュワちゃんしか私を守れないと思ったようだ。


 それから、嫌な事を忘れる為に皆で町を回った。新しい服を1着だけ買った。他にも欲しい服はたくさんあったが、お金はシュワちゃんが命がけで稼ぎ、色んな人を助ける為に使っているのを知っていたので1着だけにした。

 服を買った後でレストランに入った。その時、ベルタに「6年後結婚するって決めた時は私も結婚式に呼んでね」と言われたが、私は結婚について『お父様が決めた相手とするもの』だと教えられていた。だから、シュワちゃんと結婚する事はありえないのだ。

 でも、ベルタが知りたかったのは、平民がする様な自分で自由に決められる結婚相手の事だったらしい。そういう意味で考えた時、シュワちゃんは該当すると思うが、シュワちゃんは否定していた。私の思いは友達の延長だと、男として好きになるというのは未だに分からないままだった。

 私がシュワちゃんを好きになったのは出会った瞬間だった。黒くてモフモフで可愛い姿を見てから、ずっと一緒に居たいと思っていた。その気持ちは今でも変わっていない。そんな会話の後で美味しいご飯も食べた。


 ご飯を食べた後で、市場を見て回った。市場は色んな品があって楽しかった。シュワちゃんが刀を買おうとした時に、少しトラブルがあったが、結局値引き交渉だったらしく、真銀貨10枚の刀を真銀貨1枚で購入できたらしい。

 ベルタが「市場の商品にはボッタクリ価格で売っているものがあるから気をつけてね」と言っていたのが正しかったと証明された。私も気をつけて買わないといけないなと思った。


 最後に、遊覧船で海の神秘を見て、美味しいお菓子を食べた。そして、綺麗な夕焼けが見れた。とても楽しい一日になった。


 宿に戻って夕食を食べた後でシュワちゃんと幽霊船退治に関する作戦会議を開いた。基本的にシュワちゃんが幽霊船を消滅させるという作戦を提案されたが、私は却下した。

 幽霊船が出現している理由は分からなかったが、幽霊は元は人間なのだ。輪廻転生出来なかったから、迷って出てきているだけなのだ。魂を消滅させてしまえば、その者は転生出来なくなる。理由も知らずに問答無用で消滅させるのは可哀そうだと思った。

 ちなみに、幽霊に蘇生魔法は効かない。幽霊になった時点で、何らかの呪いを受けている為、まともに蘇生しないと聞いた事があった。

 だから、私が彼らの魂を救う事にした。シュワちゃんのお陰で私はだいぶ強くなった。聖女としての新たな魔法も覚えた。その力を使う時が来たのだ。


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