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犬に転生したら何故か幼女に拾われてこき使われています  作者: 絶華 望(たちばな のぞむ)
必然が彼らを冒険に誘う

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ボストロール討伐3

 僕は向かってくるトロールの集団に魔法『殲滅の黒雷』を使った。黒い雷が迸る黒球が出現し、黒い雷がトロールの先頭集団を薙ぎ払った。トロールたちは一瞬足を止めたがすぐにダメージを再生し押し寄せてくる。『殲滅の黒雷』のダメージは700前後だった。一撃で殺せなかった。

 もっと威力の高い魔法が必要だったがスキル『愛の奇跡』は発動しない。理由は単純だった。トロールの狙いがラビだからだ。アンネには見向きもしなかった。ラビが狙われる事を知っていたからアンネと離して布陣したが、これが仇となった。

 今ピンチなのはラビなのでアンネの為に魔法を覚えたいと本気で思えなかった。だから、手持ちの魔法で対処する事にした。

 魔法『殲滅の黒死病』を発動させる。黒い闇が僕を中心に地面に広がっていく。そこに足を踏み入れたトロールに状態異常が付いた。それは病だった。徐々に生命力が減っていく。だが、減った生命力はその都度、回復してしまった。

「ひぇ~~~~~~~。助けて!助けて!」

 トロールの集団が迫ってきた事でラビが再びパニックになる。

「大丈夫だ!僕とキョウレツインパクトがこいつらを倒す!」

「早く!早く!倒してください~~~~~」

 トロールたちは、僕に攻撃する事も無く一直線にラビを目指して走っていく。僕はラビの元に向かって走り、トロールを追い抜いた。そして、そのままトロールの先頭を走り続けながら魔法『黒の剣鎖けんさ』を発動する。十本の剣鎖がトロール十体の心臓を貫くが、それでも死ななかった。そして、心臓を貫かれているのに走るのを止めなかった。

「ああ、ダメだ。お終いだ~~~~」

 ラビは早々に諦めていた。トロールたちは、ラビを守るキョウレツインパクトの位置まで迫る。僕は黒の剣鎖を解除してキョウレツインパクトの横を通り抜けてラビの前に向かった。キョウレツインパクトは拳で足でトロールを吹っ飛ばしていく、サッカーボールのようにトロールたちが飛んで行く。さすがに筋力1500の攻撃は一撃でトロールたちを絶命させていく。だが、トロールの数が多いため、すぐにラビがトロールに囲まれてしまう。

 僕はラビの前でトロールの先頭集団を迎え撃つことにした。ラビとの約束を守る為、僕は奥の手を使う事にした。魔法『道具生成』で漆黒の刀を作り出した。そして、必殺の技を出す。

「修羅一刀流、ついの太刀、修羅無限闘舞」

 残像を残して、僕はトロールたちを切り刻んでいった。砦の門から出てきていたトロールは全て倒した。その数は300体だった。だが、門の中にはまだトロールたちが居た。僕は魔法『空間転移』でラビの前に戻る。

「ああ、シュワルツ様。ありがとうございます」

 一旦ラビの周りに居たトロールたちが全滅した事でラビは感激していたが、戦いは終わっていなかった。僕の体力はすでに空っぽだった。修羅無限闘舞は強力な技だが体力の消耗が激しかった。

「ラビ、残念だけど、まだ戦いは終わってないよ」

「ええ~。あんなに倒したのにまだ居るんですか~」

 ラビは不安そうな声でそう言った。僕はラビの前で剣を構えるのがやっとだった。だから、奴に託すことにした。

「キョウレツインパクト、後は頼んだぞ」

「兄貴に任されたからには、このキョウレツインパクト必ず期待に応えて見せやす」

 そうこうしているうちにトロールは次々と砦から出てきてこちらに津波の様に迫って来ていた。それを見てキョウレツインパクトは僕にこう言ってきた。

「シュワルツの兄貴にお願いがあります。暫くの間、ラビを守ってもらえませんか?あっしは攻撃に専念したいと思います」

「分かった。任せろ」

 僕はラビに結界を重ね掛けして守りを固めた。

「後は任せてくだせぇ」

 そう言うと奴は目を閉じ両手を胸の前で合わせた。

「我は解き放つ、封印されし力を……」

 奴がそう言うと奴から闘気のようなものがあふれ出した。どうやら、大罪戦士を倒した技を放つつもりらしい。

「我は勝利、約束された勝利の覇者」

 新たに門から出てきたトロールたちはキョウレツインパクトと僕を無視してラビを囲んで棍棒で叩いていた。結界が攻撃を防いでいるが、それほど長くは持ちそうになかった。僕は魔法『黒の剣鎖』でトロール十体を足止めしていた。

 僕はラビがパニックになると思っていたが、そうはならなかった。

「あの詠唱は、草原の覇者ヴィーゼ・マイスターの必殺技『麒麟きりん』……」

 キョウレツインパクトの詠唱を聞いて、ラビは驚愕していた。

「我が逝く道は覇者の道、我が道を塞ぐ者は悉く敗北する」

 キョウレツインパクトは目を見開いた。

「喰らえ必殺シャインニングトルネードジャイロアタック!」

 キョウレツインパクトが強烈な光を放ち消えた。トロールたちが空中に浮いて複数の打撃を受けているような音がした。打撃音が止んだ後、キョウレツインパクトは胸の前で腕組みをして現れた。そして、倒れているトロールに憐みの視線を向けていた。その背には『覇』の文字が白で書かれていた。

 どこかの格闘ゲームの必殺技の様な事をしていた。効果は絶大だった。トロールたちは全て死んでいた。キョウレツインパクトの討伐カウンターは200台になっていた。

 ラビは感激の眼差しでキョウレツインパクトを見ていた。

「あの、先輩は 草原の覇者なのですか?」

「分からないっす」

「でも、さっきの技は草原の覇者にしか使えない必殺技です。だから、先輩は草原の覇者なんです」

「当然っすよ。俺っちは覇者なんですから」

 あまり会話はかみ合っていなかったが、どうやらキョウレツインパクトの技は草原の覇者という種族が使う特別な技らしかった。

「草原の覇者って何?」

 僕が質問するとラビは嬉しそうに語り出した。

「草原の覇者とは、ここよりもずっと東にあるという広大な草原を支配している聖獣なんです。その姿は白い毛並みの馬に似た生物で、高い知能と高い誇りと深い慈悲を持っているんです。その草原には魔物も魔族も人間も肉食獣も居ない草食動物たちの楽園なんですよ」

 キョウレツインパクトが聖獣だという余計な情報を手に入れてしまった。

「ちなみに、草食動物以外が草原に入ろうとするとどうなるの?」

「死にます。草原の覇者が殺しに来るんです。必殺の技『麒麟』あの詠唱が完成したら、どんなものでも死にます。しかも、草原の覇者はとても強いので詠唱を中断させる事は実質不可能なんです」

 何という事だろう。あいつが勝手に作り出した技だと思っていたら、ちゃんとした技だったらしい。

「なんか、技名が違うがなんでだ?」

「それは、技名がいまいちだったんで俺っちが変えたんです」

「そうか……」

 僕は、それ以上考えるのを止めた。

「良かった。私はもう死ぬことは無いんだ。本当に良かった……」

 ラビは何故か安心しきって嬉し泣きしていた。どうやら、草原の覇者は草食動物の守護神的な存在らしい。

 トロールは倒したが、ボストロールが残っていた。だが、ボストロールはラビのスキルに呼び寄せられなかった。

 なので、砦の中に入る事にした。トロールの数が冒険者ギルドで聞いた数より多かったが、報酬が増えたので良しとする。


 僕は義勇軍の位置までキョウレツインパクトとラビを伴って移動した。すると、ものすごい歓声で迎えられた。

「凄い!何があったのか全く分からなかった」「さすが黒の魔法使いシュワルツ・マギア様」「キョウ殿も強かった」

 僕が剣を使った事を認識されていなかった。まあ、常人には見えない速さの技なので暫くは魔法使いのままでいけそうだった。

「さて、トロールはあらかた倒しました。これからボストロールを倒しに行きます」

「俺たちはどうすれば?」

「距離をあけてついてきてくれますか?」

「分かりました」

 ここに残して他の魔物とか出てきたら全滅するのは目に見えていた。多少危険でも近くに居てもらった方が守り易いと思った。


 全員で砦に入ったが、中は空っぽだった。僕は魔法『索敵』で砦内を探った。するとボストロールは砦の中庭に居た。千里眼で様子を見ると中庭の中央にボストロールが居て、端っこには近隣の村から奪ったと思われるものが転がっていた。

 ボストロールはトロールよりも一回り大きかった。身長は4メートル位で、毛の色が深い青色だった。奴は訓練場の真ん中で眠っていた。

 LVは30で、能力値は生命力と体力が3000台で、筋力は300台その他は100台だった。スキル欄には『瞬間自己再生』があった。ボストロールは寝ていたからラビのスキルに反応しなかったようだ。

 中庭には僕とキョウレツインパクトが入った。他のみんなは戦いに巻き込まれないように中庭の外で見守って貰うようにした。中庭に面した通路には窓が付いていて、中庭の様子を見れるようになっていた。

 ラビにはボストロールに見つからないように注意をしていたので、中庭から見える位置には居なかった。

 僕とキョウレツインパクトが中庭に入るとボストロールは目を覚ました。

「なぜ人間が居る。部下たちはどうした?」

 ボストロールは人間の言葉を理解していた。

「みんな死んだよ」

 僕は、答えるとボストロールは立ち上がって2メートルはある棍棒を持った。

「どうやったか知らんが死ね」

 ボストロールは棍棒をキョウレツインパクトに向かって叩きつけた。キョウレツインパクトは片手でその棍棒を受け止めた。凄まじい衝撃音が響くがキョウレツインパクトは涼しい表情だった。そして、こん棒を握りつぶす。さすが筋力1500は伊達じゃなかった。

「あ?え?」

 ボストロールは狼狽えていた。僕はキョウレツインパクトに指示をだした。

「やって良いぞ」

「合点承知!」

 キョウレツインパクトに任せた理由はレベリングだった。僕は母さんとの特訓でLV66になっているのでLV30の雑魚では経験値を稼ぐことも出来なかった。一方キョウレツインパクトは先程、トロール200体を仕留めてレベルが31に上がっていたが、ボストロールはLV30なのでキョウレツインパクトがLVアップする可能性があった。だから、任せる事にした。

 キョウレツインパクトは優雅な動きでボストロールの鳩尾に蹴りを放った。凄まじい衝撃音が鳴り響くがボストロールは平然としていた。1500ダメージが入っていたが瞬時に回復していた。

「強いようだが、俺には及ばないようだな」

 ボストロールは勝ち誇ったように言った。キョウレツインパクトは、無言で優雅な連撃を放った。だが、ボストロールはその全てを無防備に受けて、平然としていた。

「さて、今度はこちらの番だ」

 ボストロールは力任せにキョウレツインパクトに殴りかかる。キョウレツインパクトは流れる様な動きで拳を受け流した。そして、戦いを終わらせる事にしたようだ。

「我は解き放つ、封印されし力を……」

 例の詠唱が始まり、奴から闘気があふれ出す。それを見てボストロールは、明らかに動揺していた。ラビの時は目を閉じていたが、今回はキョウレツインパクトは目をあけたまま詠唱を開始した。ラビの時は敵が多数居たので、それら全てを把握するために音に集中していたらしい。今回は1体だけなので、目をあけて戦いながら詠唱出来るらしい。

(なんで、こんな所に草原の覇者ヴィーゼ・マイスターが居るんだ!)

 ボストロールは慌てて、キョウレツインパクトに殴りかかった。だが、キョウレツインパクトは太極拳を彷彿とさせる優雅な動きで攻撃を受け流して詠唱を続ける。

「我は勝利、約束された勝利の覇者」

 ボストロールが必死に詠唱を止めようと両手を組んでハンマーの様に打ち下ろすが、キョウレツインパクトは優雅に片手で受け流した。

「我が逝く道は覇者の道、我が道を塞ぐ者は悉く敗北する」

 ボストロールは逃げ出そうとするが、キョウレツインパクトは奴を逃がさなかった。ボストロールに足払いを放って転倒させた。

「喰らえ必殺シャインニングトルネードジャイロアタック!」

 先ほどトロールたちを全滅させた光景が繰り返された。そして、ボストロールは死んだ。それと同時に歓声が上がる。戦いを見ていた義勇軍からだった。

「すげえ、素手でボストロールを倒しちまった」「キョウ殿強すぎだろ」「俺は今伝説を目の当たりにしたのかもしれない」「キョウ様素敵~」「キョウ様結婚して~」「私を抱いて~」

 みな口々にキョウレツインパクトを褒めたたえていた。キョウレツインパクトは口を開かなければ本当にカッコいい漢だった。

「キョウレツインパクトこういう時は、『こいつも俺を満足させてくれる相手では無かったな』というとカッコいいぞ」

 僕が念話でキョウレツインパクトに伝えると、奴は早速実行した。

「こいつも俺を満足させてくれる相手では無かったな」

「うぉ~~~カッコイ~~~~~。俺も言ってみて~~~~~」「馬鹿、お前じゃゴブリンだって倒せないだろう」「あれは、キョウ殿が言うからカッコいいのだ」「いや~~~素敵~~~私が満足させてあげるわ~~~」

 最後にちょっとやめて欲しい声援があったが気にしない事にする。アンネが悪い影響を受けなければ良いが……。気になって、ちらっとアンネを見た。

(ニンジン持ってるんだあの人)

 良かった、悪い影響は何もなかったようだ。


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