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犬に転生したら何故か幼女に拾われてこき使われています  作者: 絶華 望(たちばな のぞむ)
必然が彼らを冒険に誘う

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夢の続き2

 僕とキョウレツインパクトは湖のほとりで月を見上げていた。何故か奴は腕組みをして月を見上げていた。その姿は格闘家のようだった。僕も対抗して腕組みをして月を見上げた。

「綺麗な月ですね、シュワルツの兄貴」

「ああ、そうだな」

「それで、あっしを連れ出したのは、どんな理由で?」

 アンネが湯浴みするからだと言っても奴には理解できないだろうから、別の理由を教えた。

「キョウレツインパクト、これからは僕と二人でアンネローゼ様を守らなければならない。これは分かるな?」

「ええ、分かってるっす」

「という事はだ。訓練が必要だろう?」

「なる程っす。じゃあ、シュワルツの兄貴が直々にあっしを鍛えてくれるんですか?」

「ああ、まずは突きの出し方からだ」

 僕は格闘技などしたことが無い。だが、たぶん出来るのだ。日本に戻った時、不良相手に僕は簡単に勝利した。それは、母さんの才能を受けついていたからだ。母さんは魔拳士だった。だから、僕も格闘術を使えるはずだった。

 僕が突きを出すと、どうするのが正解か感覚で分かった。僕を手本にキョウレツインパクトも突きを出した。その突きは完璧だった。

「お前、格闘術習ったことがあるのか?」

「いえ、ないっすよ」

「そうだよな」

 僕はキョウレツインパクトのステータスを改めて見た。スキルの欄に『覇者の闘法』というものが加わっていた。そして、戦闘スタイルは何故か『覇者』になっていた。戦闘スタイル覇者ってなんだ?

 よく分からないが格闘術の才能が有るのだけは確かだった。

「ふむ、筋が良いようだな、キョウレツインパクト。組手を行ってみるかい?」

「兄貴、よろしくお願いします」

 こうして、僕とキョウレツインパクトの組手が始まった。先に動いたのはキョウレツインパクトだった。それは綺麗な前蹴りだった。僕はそれを半身になってかわし、懐に潜り込んだ。そして、正拳突きを放った。だが、キョウレツインパクトは片手で僕の正拳突きを受け止めた。僕はそのまま、下段蹴りを放つが奴は片足だけで跳躍しバク転して攻撃をかわした。

「やるじゃないか」

「兄貴も凄いっすね」

 そこから、カンフー映画さながらの組手が行われた。戦い方は対照的だった。身長の高いキョウレツインパクトは太極拳の様な優雅で大きい動きで攻撃してきた。対する僕は体が小さいので必然的にキョウレツインパクトの攻撃をかいくぐって戦う事になる。なのでフェイントを織り交ぜ縦横無尽に動いて攻撃するしかなかった。

 動きは対照的だったが実力は拮抗していた。僕たちが組手を始めると、何故か野次馬が増えた。

「うお、すげえ、なんだあの二人!」「長身の兄ちゃんすげぇ」「いや、ちっこいのも動きが良いぞ」「なんだ、何が始まったんだ?」「こっちで凄い格闘家が組手をしてるぞ!」

 なぜか、篝火が焚かれ、僕とキョウレツインパクトを中心にリングの様なものが即席で作られていった。僕とキョウレツインパクトは野次馬は気にせずに組手を続けた。

 僕がキョウレツインパクトの右側に飛んでから、空中で奴の頭部にめがけて左足で回し蹴りを放つと、キョウレツインパクトは右腕で僕の蹴りを防いだ。僕はそこから左足を軸に回転し、右足を奴の脳天に叩き落した。だが、奴は左手で受け止めた。そして、僕の右足を地面に振り下ろした。僕は両手を突き上げて地面に着地し、右足を捻って奴から逃げた。

「やべえ」「なんだ今の動き」「すごい奴らだ」「いいぞ、もっと魅せてくれ」

 30分ほど戦ったが勝負はつかなかった。僕とキョウレツインパクトは芝生の上で大の字になった。そして、乱れた息を整えながら月を見ていた。

「いや~、兄貴強いっすね」

「いや、キョウレツインパクトも強いぞ、これなら安心して背中を任せられるな」

「あざっす。兄貴」

 寝そべりながら僕はキョウレツインパクトに拳を突き出した。キョウレツインパクトも拳を突き出し、軽く合わせた。

「うぉおおおお~、引き分けだ!」「いや~、凄いもん見せてもらったよ。ありがとう」「いい試合だった」

 野次馬はいつの間にか100人規模になっていた。そして、物凄い歓声が沸いた。

「兄貴、あいつら何なんです?」

「観客ってやつだ。僕たちの戦いに見惚れているのさ」

「騒がしい奴らっすね」

「まあ、そうだがほっておこう。そのうち居なくなる」

 僕の言葉通りに奴らは戦いが終わると順次居なくなった。しかし、何人か残っていた。

「やあ、いい試合だったね」

 残っていたのは、兵士っぽい人たちだった。

「いえいえ、それほどでも」

「君たち、ここで働く気は無いか?」

「ああ、無理です。すでに雇い主が居るので」

「そうか、それは残念だ。君たちの名前を聞いても良いかな?」

「あ、僕はちょっと訳ありなので名前は言えません」

 シュワルツの名を出したら『黒の魔法使いシュワルツ・マギア』だとバレる。そうなると騒ぎが大きくなりそうだったので、隠すことにした。

「そうか、なら聞かない事にするよ」

「そっちの君も名前は秘密かい?」

 僕は念話でキョウレツインパクトに指示を出した。

(キョウレツインパクト、ここはカッコよく答えるのがタフガイの務めだ)

 そして、キョウレツインパクトにセリフを伝えた。

「俺の名前は、キョウ・レツ・インパクト。俺より強い男を探す旅をしている」

 どこかの格闘ゲームのキャッチコピーみたいな事を言わせた。理由は面白そうだったからだ。そして、名前をあえて区切ったのは、キョウレツインパクトって名前だと強い印象を与えられないと思ったから、あえて区切らせた。これで奴の名前はキョウとして伝わる事だろう。

「そうか武者修行の旅の途中か、なら誘うのは野暮ってもんだな、旅の無事を祈っているよ。キョウ殿」

「ああ、ありがとう」

 こうして、格闘家キョウの伝説は始まった。


 野次馬が居なくなった後で、僕とキョウレツインパクトは水浴びをする事にした。なので『念話』でアンネにお願いした。

(アンネ。キョウレツインパクトの人間化を一時的に解いてもらえないかな?)

(え?なんで?)

(ちょっと汗をかいたので、水浴びしようと思って)

(え?水は冷たいけど大丈夫?)

(獣の姿なら全然平気だよ。むしろ心地いいぐらいだよ)

 これは本当だった。犬としてこの世界に来てから湯浴みをしたことは無い。体を洗う時は水浴びだったが、冷たいとは思わなかった。

(分かった。解除するね)

 アンネのセリフの後でキョウレツインパクトは馬に戻った。僕も犬に戻って水浴びをした。

「運動した後の水浴びは最高っすね」

「ああ、そうだな」


 水浴びが終わり、魔法で僕はキョウレツインパクトの体と僕の体を乾かした。魔法『温風』を使った。この魔法は水浴びの後で体を乾かす為に習得した魔法だった。アンネが湯浴みを始めてから1時間たった。そろそろ湯浴みが終わる頃だった。なので、念話で確認する。

(アンネ。お風呂終わった?)

(うん、終わったよ)

(じゃあ、キョウレツインパクトを人間の姿にして欲しい)

(分かった)

 キョウレツインパクトは人間の姿になった。僕も人間の姿になる。そして、魔法『空間転移』で部屋に戻った。

 アンネは寝間着姿で、髪を乾かしていた。といってもドライヤーが無いからラビがタオルで髪を拭いていた。皇宮ではメイドの誰かが魔法を使って乾かしていた。なので、僕が魔法で乾かすことにした。

「アンネ。僕が魔法で髪を乾かすよ」

「ありがとうシュワちゃん。よろしくね」

「ああ、任せてよ」

 僕は魔法『温風』でアンネの髪を乾かした。部屋に櫛が置いてあったので、櫛も使って髪をすきながら乾かした。アンネの髪はサラサラになった。

「ありがとう」

 アンネの笑顔に癒される。

「シュワちゃん。人間の姿で一緒に寝てみる?ここなら誰も文句を言わないよ」

 アンネは恋愛感情も無くそんな事を言ってきた。

「駄目だよ。僕は男の子でアンネは女の子なんだ。一緒に寝て良いのは夫婦だけなんだよ」

 少なくともこの世界の常識ではそうだった。

「どうしてなの?」

「そういう決まりなの」

「納得できない」

「駄目なものは駄目なの」

「どうしたら一緒に寝てくれるの?」

「そうだね。アンネが僕の事を男として好きになったら考えるよ」

「今も好きだよ」

「そういう好きじゃないよ。少なくとも今は絶対に分からないと思う」

「じゃあ、いつになったら良いの?」

「15歳の誕生日を迎えた後で、それでも好きだって思えるのなら人間の姿でも一緒に寝ても良いよ」

「分かった。今は我慢する。じゃあ、犬の姿に戻って」

「分かった」

 こうして僕は自分の倫理を守った。邪悪な感情が無くても血縁じゃない小さな女の子と添い寝するのは何かいけないような気がした。犬の姿なら良いのだ。なぜなら、僕は犬なのだから……。

 アンネは寝る前に日記みたいなものを書いているようだった。なので、キョウレツインパクトに人間のベットの使い方を教える事にした。

「ベットに入る時には靴を脱ぐこと」

「靴ってなんです?」

 キョウレツインパクトは何一つ分かっていなかった。

「先輩、足についているこれの事ですよ」

 ラビはメイドスキルのお陰で僕の説明が無くても靴を脱いでメイド服を脱ぎ寝間着を着ていた。僕はラビと協力してキョウレツインパクトに作法を教えた。

「次は上着を脱ぐんだ」

「上着って何?」

「先輩、上着はこれですよ」

 何とかキョウレツインパクトを寝間着に着替えさせ終わると、アンネも日記を書き終わっていた。

 僕は犬の姿でアンネと眠りについた。


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