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3話 人殺し

パパッと書いたのでおかしいところがあるかも知れません。それでもよろしければどうぞ。

「ユーリアさん、Eランクの依頼あるか?」

「Eランクの?あるにはあるけど、あなたたちFランクパーティーだから依頼受けることはできないわよ?」

「それがだな。」

「私がいるから大丈夫ね。」



 俺の言葉を遮って前に出たのは昨日出会ったルシエラさん。Aランクと聞いたので丁度いいやと短期のパーティー申請をしたのだ。



「え?ルシエラさん?あの『孤高の魔導師』として有名な?」

「あら?こんな所にまでこの名前届いてたのね。」



 これは俺に対する自慢なのだろうか。いいや、俺も2つ名持ってるから関係ない。『永低の冒険者』って響きがカッコイイ2つ名持ってるし。悔しくなんてないし?


 何か虚しいので止めておこう。しかしルシエラさんは昨日話していたように1人で活動していたのか。魔導師なのに。凄いな。



「ねえあんた、ちょっとこっちに来なさい。」

「ん?何だ?」



 ユーリアさんに襟首を掴まれて強制的に連れて行かれた。といってもそこは取り締まり室で色々尋問する場所だ。


 あれ?俺悪いことしてないのになんでこんなとこに連れてこられたの?もしかして嫌われすぎて冒険者クビとか?そうなったら俺はどうやって生活していけばいいんだ。


 なんてどうでも良いことを考えていたらユーリアさんが鋭い目をしながら問い詰めてきた。



「どうやって彼女とパーティーを組んだの?彼女は『孤高の魔導師』って言われてこれまでパーティーを組んだことがないのよ。最強と言われたクラン、『至高の演舞』の勧誘さえ断ったのに。あなた、まさか脅したんじゃないでしょうね?」

「質問が多い。あと長い。説明するから落ち着け。」



 俺は昨日あったことを1つずつ説明していく。ルシエラさんがアイラとアカリの2人を実の下の子のように可愛がっていること。ボロ宿のオヤジに助けてもらってそこで働いていることなど。


 説明後も納得はしていないようだが、なんとか解放して貰った。



「ルシエラさんがいるならゴブリンの巣を壊滅させる依頼はどう?西の森に丁度ゴブリンの巣ができて物資が届けられない状態なの。」

「ゴブリンの巣か。集団戦になれるという点で良いな。3人も良いか?」

「「はい。」」

「ええ。」

「じゃぁ、それで頼む。」



 『ゴブリンの巣討掃依頼』を受けた俺たちは早速馬車に向かう。無属性魔法の身体強化を使えば早いが、2人はまだ使いこなせないため馬車で行く。できるだけ体力も消費したくはないからな。


 西の森と言えばここから3日経った先にある深い森だ。魔物はFランクからAランクまで幅広く存在する。噂では吸血鬼も確認されているとかいないとか。



「さてと、これから2人にはゴブリンの群れと戦って貰うわけだが、ゴブリンについてどのくらい知っている?」

「えと、確か低いながらも知能があって罠を仕掛けたりだまし討ちをしてきたりします。」

「あと集団で襲うことがほとんどだから1人にならないこと。」



 どうやら2人とも基礎的な知識はあるようだ。少し安心した。これで知識がなかったらパニックになったとき危ないからな。特に新人冒険者は初めての人型魔物で冷静な判断ができずに死に至ることが多いから。



「他に何かあるか?ルシエラさんとかは?」

「そうね。ゴブリンは火属性魔法が弱点だからそれを覚えておけば良いかもね。」

「そうだな。じゃあ、後少しの補足を入れるからよく聞けよ。まず、ゴブリンは集団で行動することが多いが、稀に1体で行動する奴もいる。そいつとはやり合うな。最低でもAランク冒険者が2人必要なくらい強い。」



 といってもそんな個体は数千から数万に1体だ。そいつは異常個体といわれ、人語を理解し、知能も優れ、基本ステータスもゴブリンの数倍か、数十倍。一般の冒険者では太刀打ちできない相手だ。


 見分け方は1体で行動していること。武器が鋭利なこと。あとは目線がウロウロしていることだ。



「次に弓を使うゴブリンや魔法を使うゴブリンだ。弓には毒が塗ってあるから注意しろ。麻痺毒だが、2時間は体が動かなくなるほど強力だ。魔法は火属性が主体だから水の加護を身につければ何とかなる。」

「「分かりました。でも、師匠って」」

「物知りなのね。」

「まぁな。俺の天職は学者だ。でも実際に調べるほどの金銭はない。ならば冒険者となって知識を吸収すればいいと思ったんだよ。実際に体験できるからより詳しく知ることができるしな。魔物や魔法の知識は任せろ。一般より詳しい自信がある。」



 そのあとは誰も話さずしばらく進む。ちまちまと小休憩を入れながら順調に進行していった。


 もうすぐ夜になるためひと晩過ごすことになる。もっというならあと4日は野宿だ。


 火属性魔法を使い、火を付け、薪をくべる。ご飯は肉だけ。それも魔物の。塩は持ってきたから素朴な飯だが、腹は満たされるだろう。



「すまんな。こんな飯で。物足りないかもしれないが我慢してくれ。」

「いえ、満足です。」

「うん。美味しいよ!」

「意外と魔物の肉も美味しいのですね。」



 3人とも満足しているようで安心した。今日だけでかなり進んだ。予定より早く着きそうだが、その分体力も消費しているだろうし、3人には寝て貰う。もちろん時間が経てば俺はルシエラさんと見張りを交代する。


 火を絶やさぬように注意しながら座っていると人の気配がした。数は30を超えている。盗賊だ。それもそこそこな規模の。



「…ナイトオブライト」



 夜目が利くように闇光属性魔法をかける。これは夜中でも普通に景色が見えるようになるための複合魔法だ。もちろん俺オリジナルの。


 人は目に入る光を認識して景色を見ている。夜は光がほとんどないため見えないのだ。ならばその光を増強させる幕を目につければ?夜でも景色を見ることができるわけだ。その分光が目に入ると眩しくて見えない。火の光ほどなら大丈夫なように調整しておく。



「……。」



 周囲を見回し、攻撃に備える。相手は弓を構えている。3人は馬車の中のため安全だろうが俺は安全でない。できれば静かなうちに対処したいが。



「まだ来ないか。いや、俺が疲労するのを待ってるんだな。」



 1つの予想を立てた俺は素早く行動する。水属性魔法で火を消し、辺りを暗くする。と同時に初期スキル『隠密』を発動させ、さらに風属性魔法で足音を、光属性魔法で光を吸収し、無属性魔法で身体強化を使う。3つの魔法同時使用『トリオ』。


 できる人は少ないと聞くが、意外と簡単なのだ。3つ同時に魔法を創り出すから難しいのであって、少しずらして構成すれば簡単にできる。それは数が増えても一緒だ。



「ちっ!どこ行った!?」

「お頭!馬車の中に3人いました。そのうち2人は女性です。」

「…そうか。あの男はどうでも良い。女を連れてこい。全員で愉しもうじゃないか。」



 俺が背後にいるとも気づかずに話す2人。心の中でほくそ笑みながら俺は音を立てずロングソードを抜く。相変わらず切れ味が悪いが、人を殺めるのは簡単だ。


 首にある頸動脈を狙い、斬る。その際に風属性魔法の付与を忘れない。風属性魔法により、傷を開き、血をより流させる。さらに切れ味も上がる。



「かっはっ!?」

「っ!?お頭!?どこからだ!」

「…後だよ。」

「なっングッ!?」

「お前だけは生かしておいてやる。アジトを教えろ。」

「プアッ。こんなことして無事でいられると思うな。こっちの方が数が多いんだよ。」



 勝ちを確信しているのだろう。高笑いをする痩せ型の盗賊。だが奴は気づいていない。他の奴らは既に首を刎ねた。つまりもうこいつしか残っていないのだ。


 俺はこいつらの仲間であろう首を転がし、脅す。



「これでもそう言えるか?」

「え?あっ……あぁ…。」

「俺は勇者みたいに優しくないし、他の冒険者ほど甘くはない。襲ってきて命を狙えば俺は相手の命を奪う。容赦はしないぞ。分かったか?アジトを教えろ。」



 こういう奴らを逃して報復された。そんな奴を何人も見てきた。だから俺は容赦しない。襲ってくれば殺すし、殺さなくても四肢のどこかは欠損させる。


 非道と言われても構わない。仲間が酷い目に遭うことを防げるのならそんなことなど関係ない。


 所詮世界は弱肉強食。弱者が強者に何を言おうが関係ないのだから。



「分かった。」

「先に言っておくがデマカセを言ってみろ。その首が胴体とサヨナラすることになるぞ。」

「わ、分かった。」



 俺の脅しが利いたのだろう。男は大人しくアジトに案内した。アジトと言えどもそこは廃墟だった。中には大量の食料、金、武器がある。



「これは今まで奪ってきた物か?」

「あ、あぁ。」

「人質は?」

「地下に十人ほど。」

「そうか。俺は今から依頼でゴブリンの討掃に行くがお前は人質全員を連れて馬車に乗れ。物はマジックポーチに入れるからな。いいな?」

「分かりました。」



 男は思いのほか素直に従った。その後、人質は馬車に乗せ、物は全てマジックポーチに入れた。男は用事を終えた後も大人しく、反感する気はなさそうだ。それを確認し、草むらへ向かう。


 我慢の限界だった。



「おぇっ、うぷっ。えぇぇぇ。」



 吐いた。夜食べた肉が出てきた。中の物が無くなれば胃液が出てくる。喉が痛い。焼ける。だが嘔吐は止まらない。


 初めて人を殺した。自分の手で。自分と似た姿をした者が冷たくなる。目を見開き、白目をむく。紅い液体が剣を伝い、手に触れた。ヌルヌルとしていて気持ち悪い。


 人型の魔物を殺すのには慣れていたが、人は殺したことがない。学者のため感情はある程度制御されていたが、緊張が切れ、嫌悪感が俺を襲う。



「はぁ…はぁ…はぁ…。まだまだだな。この程度で吐いていては何もできない。」



 未だに続く嫌悪感、罪悪感をありったけの理性でねじ伏せる。精神が悲鳴を上げ、さらにえずくが、堪える。また移動が始まる。こんな所で何時までも吐いているわけにはいかない。


 近くの川で顔を洗う。きっと今の俺の顔は蒼白いだろう。少し落ち着いたので馬車に戻る。



「おかえり。遅かったわね。なんか人もたくさん乗ってるし。話は聞いたわ。人を殺したのね。」

「…。あぁ。殺した。30人以上の人をな。」

「そう…。あなたのおかげで私たちは助かったわありがとう。」



 ルシエラさんの言葉で俺は少し罪悪感が薄れた。普通なら嫌悪しても良いところをお礼されたのだ。嬉しくないわけがない。だが、納得もいかない。


 生きるため、身を守るためとはいえ人を殺したのだ。褒められることもお礼を言われることも無いはずだ。


 そんな俺の表情を感じ取ったのかルシエラさんは続ける。



「あなたがいなかったら男のアイラは殺されて私とアカリは良いように弄ばれていたわ。そんなことにならなかったのはあなたが盗賊をやっつけてくれたおかげ。だから、ありがとう。」

「…俺は人殺しだ。生きるため、身を守るためとはいえ禁忌に手を出した。そのことは変わらない。」

「ええ。あなたは人殺しよ。最低な行為に身を投じたわ。」



 俺の自白にさらに追い打ちをかけるルシエラさん。だがそれは俺を責め立てるような声色じゃなかった。むしろ俺を心配するような優しい声色だった。



「私は思うの。人殺しって言うほど悪いことかしら?」

「は?」



 ルシエラさんの突拍子もない言葉に素で聞き返してしまう。人殺しと言えば昔から禁忌とされているものだ。やって良いはずがない。



「エルフだからかかしら?それは置いておいて、人を殺す。それは普段からやっていることよ。」

「どういうことだ?」

「飢餓で苦しみ、死ぬ子供。それを気づかずに放置する私たち。これも人殺しではないかしら?理論で言えば実に効率的よ。弱った子供よりも元気な子供を手に塩をかけてまで育てる。そして優秀な子に育てる。効率重視で考えればいい手だわ。武器で言う悪い武器は捨てる。それと同じよ。」



 言いたいことは分からなくもない。だが、それは生きている物ではないからだ。



「感情面では理解できないでしょう。でも理屈では理解できてしまうのよ。効率を考えれば0を10にするより70を85にする方が労力も少なくて簡単。そう言う物なの。人間はいらないことを考えすぎよ。生きるために殺す。生物としてのありのままの姿じゃない。強い子孫を残すために弱い物を捨てる。これも生物としてのありのままの姿。あなたは何もおかしいことをしていないの。」

「なんだよそれ。メチャクチャすぎるだろ。」



 余りにもその言い分は破綻していた。生きるためとはいえ人を殺す。それはいけないこと。魔物でもそこまでしない。弱い者を見捨てることはあれど殺すことは少ない。ならばやはり殺すのは悪いことではなかろうか。


 だが、そう考えないとやっていけないのは事実。妥協など許せないが、後からしっかり自分の考えを固めれば良い。


 そう思えば過剰な責任は感じなくなった。



「分かったよ。今はその考え方で生き抜く。でも、納得はしない。」

「それでいいの。エルフのように長い人生でも人のように短い人生でも納得できる事の方が遥かに少ないのだから。」

「それもそうだな。でも最後に。」



 俺は自分で殺めた人たちを集め、火で焼いた。この骨は俺が管理し、家を買ったときに墓を立てる。これは俺なりのケジメだ。なんてカッコよく言うがただ単に責任から逃げたいだけかもしれない。


 そこは分からないが少なくとも俺的に意味のあることだと思う。



「それじゃあ、見張り頼んだ。」

「分かったわ。お休み。」



 精神的に疲れたのか。寝転がってすぐ、俺の意識は消えた。

今のところ五千文字異常目指して頑張ってます。何かアドバイスや矛盾点、誤字脱字があれば教えてくださるとありがたいです。


もしよろしければ次回もよろしくお願いします。

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