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2話 親睦を深められた…のか?

3話目です。言うことはそれだけです。どうぞ。

「ここがスロタルボアのいる草原。『アルフ草原』だ。魔物はスロタルボアがほとんどだ。いたとしても別の草食系の魔物だけだから安心して討伐してこい。突進には気を付けろよ。」

「「はいっ!!」」



 2人はスロタルボアの近くに寄った。アイラは聖剣でスロタルボアを切る。アカリは攻撃魔法。それも上級魔法で仕留めていく。俺は2人の戦い方を見続ける。


 アイラはどこか引け腰で深い傷を付けられていない。1撃で仕留められるはずのスロタルボアを5擊も入れて討伐している。単純計算で5倍の疲労感のはずだ。アイラは少し精神の方の強化をしなければならないな。


 逆にアカリは前に出すぎる節がある。今も突進をくらいかけた。幸い掠ったりギリギリ当たらなかったりだが、上のランクに行くと既に死んでいる可能性がある。アカリには後衛の戦い方を教えて、回避と離脱と接近のタイミングも教えなければ。あと、魔法の威力が大きいのは良いが、範囲が必要以上の大きさだからそこも改善しないとな。



「ハァ…ハァ…。た、倒せました。」

「どうだった?凄かったでしょ?」

「お疲れさん。2人とも初めてにしては上手く立ち回れていたぞ。よくやったな。」



 無事スロタルボアを討伐した2人は俺に報告してきた。やはり職業の影響だろう。素人にしては上手く動けていた。そこは褒めなければいけない。むしろ褒められることなのだ。


 しかしそれはそれ、これはこれ。危険な戦い方は止めてもらわないといけない。無理に職業の戦闘スタイルに合わせろとは言わない。そこの調整は二人次第だ。



「さて、報告は跡にして、今からこの草原で訓練するぞ。と言っても基礎自体はお前たちはできているからな。主に立ち回りと技術を高めてもらう。」

「分かりました。」

「はーい。」



 2人の返事を聞き、その場に座らす。始めは座学…とまでは言わないが簡単な知識からだ。特に職業別の適した立ち回り方について教える。



「今回見た感想だが、全体的には合格だ。」

「やった!」

「ふぅ…。」

「だが、所々雑な場面があった。今からそこを重点的になおしていくぞ。」



 2人は元気よく返事をし、真剣な表情になった。その2人に俺は丁寧に手ほどきをしていく。魔法の発動を早めるための方法。攻撃が来たときの躱し方、フェイントと本命の見分け方。長い間冒険者をしていたからこそ知ることのできた知識。全てだ。仮にこの2人が俺を騙し、襲いに来ても後悔はしない。負けるつもりもないが。



「今日はここまでにしよう。明日からはこの依頼受け、達成してから訓練を行う。いいな?」

「分かりました。でも、」

「なんだ?」

「僕たち、宿を予約してないです。」



 これは驚いた。少なくとも宿は取っている。もしくは上の階級の人らが用意していると思っていた。しかしよく考えれば少し前に村を出てきた子供だ。そこまで考えつかなかったのだろう。



「仕方がない。ボロくても良いなら俺の取っている宿がある。そこへ行くぞ。」

「ありがとう!」

「ありがとうございます。」



 早速依頼の達成報告を済ませ、スラム街に入る。ここは最下級の人らが住んでいる。元奴隷、重犯罪者、貧乏人などがほとんどだ。俺の稼いだお金はコイツらに分け与え、残った雀の涙ほどのお金で宿を取っている。


 本当はランクを上げて効率よく稼ぎたいところだが、ギルドから疎ましがられている俺はランクを上げてもらえない。貴族からの信用もないため後ろ盾は皆無に等しい。


 スラム街というものを2人は初めて目にするのだろう。絶句していた。



「ここはスラム街といってだな、元奴隷や重犯罪者、貧乏な人らが住んでいるところだ。街ってのは大きくなればなるほど貧富の差も広がるんだよ。」

「そんな。」

「ひどい。」

「ひどくもなんともないさ。野生動物だって草食動物などの弱い者は強者に怯えて暮らす。それでしか生きられないからだ。それと同じ。同じ種族でも弱者は怯え、強者はふんぞり返る。それが人間の本性だ。」



 でもな。と俺は続ける。



「強者だからこそ見落とし、弱者だからこそ見つけることができるものもあるんだよ。」

「弱者だから。」

「見つけられるもの?」

「あぁ。弱者は決して油断しない。油断できない環境で暮らしていたから。最下級だから足下をすくわれない。それ以上下が存在しないから。それだけじゃない。彼らは考えの固まっていない軟らかな思考で新たな摂理を見つけることができる。」



 弱者しかできないこと。弱者だからできること。それを俺は少ないながらも知っている。自分も弱者だから。知識はあれど固定された考えはないから。



「新たに発見された魔法の摂理。それを唱えた『リスト』はこのスラム街出身の人で俺に魔法を教えてくれた師匠だ。」

「師匠の…師匠ですか。」

「あぁ。今でこそ病気で体も動かせないが、師匠の思考は周りを超越していた。基礎知識がないから独学で学び、研究した。魔法の原理とは何か、今説かれているものとの矛盾点、魔法の原点。それら全てを360度、上下左右前後、内側外側全てから見直し、仮説を立てた。認めるものは少ないが、その説がより魔法を的確に表しているんだ。俺はそう信じている。」



 これまでの魔法は『マナ』とよばれるエネルギーを使い、台風や発火という『現象』そのものを創ると言われた。しかし、師匠はまた違う物を説いた。魔法とは『マナ』とよばれる万物に干渉する何かを利用し、温度の移動、物体の形状、人の精神などに干渉し、『現象』を引き起こしたと『書き換える』もの。というわけだ。


 違うのは干渉するものが『現象』ではなく『認識』という目に見えない物であること。『世界』の『認識』を『書き換える』ことでその『事実』を現実へと『反映』させ、『事象』を『引きおこした』という『結果』を『発生』させるのだ。


 ややこしい説だが、それなりに筋は通っているだろう。



「よく分からないよ。」

「うん。俺も師匠の言いたいことはよく分からないままだ。だが、魔法とはそんな物だ。曖昧で不確定な物だからこそ現実に干渉し、人の精神という不確かな物にまで影響を及ぼす。中途半端だからこそ確認できる物と確認できない物に関与できるんだよ。まぁ、これは大きくなったらまた教えてやるよ。ほら、ここが俺の住む宿だ。」



 相変わらずボロくて古くさい建物だ。しかし意外にも手入れは行き届いており、ホコリは1つもない。ただ残念なのが宿のオヤジが料理がド下手だということだろうか。


 慣れた宿のドアを開け、中に入る。



「ただいま帰ったぞオヤジ。」

「おう、お帰り。って2人新しい奴を連れてんじゃねえか。誘拐か?」

「んな訳あるかアホ。そう言うオヤジだって新しい女の子雇ったのか?それとも、甘いお菓子で釣られた幼い女の子を愛でるのか?」

「俺ァ年下には興味がねぇよ。年上のお姉さんが至高だろうが。」



 年上のお姉さんって、オヤジは既に50超えてんだからお姉さんじゃなくておばさんだろうが。オヤジが年下に手を出す訳がないことは知っているが、不安だ。



「誰が子供よ!私は既に200を超えてるって言ってるでしょ!!」

「驚いた。オヤジ、エルフなんてどこで雇った?」



 厨房から出てきたのは緑がかった銀髪のエルフ。それも耳が長いことから普通よりも魔法に秀でた『ハイエルフ』というものだろう。


 ハイエルフは普段は森から出ない。過去に人間と交流があったと聞くが、ある日を境に人間を敵視するようになった。理由はハイエルフやエルフは見た目の良い人が多いため性奴隷にされることが多かったんだとか。また、ハイエルフの血は濃度の高いマナがあり、それを摂取すれば長命になれるとも。


 後者はもちろんデマだ。むしろマナの過剰摂取は人にとって猛毒であり、耐えきれなければ体がバラバラに砕け散る。もともと人の体にあったものではないのだから当然だ。特にハイエルフのマナは純度が違いすぎる。人の純度を30パーセントとしたらハイエルフのマナは93パーセントだ。3.3倍の濃度に耐えられる訳がない。



「腹が空いて倒れてるのを拾ってな。食材はあると言ったら働くついでに飯を食わせてくれだってさ。これで俺の宿も飯を提供できるわけだ。そこの2人は?」

「あぁ、2人は東の村で見つかった今世の勇者と聖女だ。冒険者になったが色々知識不足でな。俺が教えている最中だ。」

「アイラです。よろしくお願いします。」

「アカリです!よろしくお願いします!」

「この宿屋のマスターをしているグリベルだ。よろしくな。」

「厨房担当のルシエラよ。よろしくね。」



 事故紹介を終えた俺たちはオヤジからの提案もあって親睦会を始めることになった。ただオヤジが酒を飲みたいだけだと俺は思っているが。2人が嬉しそうなのでよしとしよう。



「はい、オークの肉をステーキにしてみたわ。」

「…なぁ、オークの肉ってどっから仕入れた?安くはないだろ?」

「え?狩ったに決まってるじゃない。」



 呆れて物も言えなくなってしまった。エルフだから自費で購入したのかと思ったが、まさか狩るとは。エルフとオークと言えば成人以上対象の本によくあるものだ。あの話はあながち嘘ではない。オークはオスしかいないため、他種族の女をさらって繁殖するのだ。


 もちろん対象の意志など関係ない。逃げられないように足を折られ、無理矢理行為され、そして出産させられる。これにより精神が崩壊し、2度と戻れなくなった女性が何百人といる。俺がたまたま見つけたオークの巣でも30人ほどの女性がいた。あの時はまだ間に合ったから良かったものの、基本間に合わないことが多い。


 だからオークの討伐任務は基本男性パーティーおよびクラン、そして男性冒険者に依頼が回るのだ。しかしオークの肉は意外と美味しい。知る人ぞ知る美味な食材だ。しかし脂っぽい。多くは食べたくない物になっている。



「ルシエラさん、さすがに危ないでしょ。もし奇襲されてオークに捕らわれたらどうするんですか。」

「大丈夫よ。私これでもAランク冒険者になってるから。」

「あ、さいですか。」



 もうなんか色々と諦めてしまった。ハイエルフならそのくらいの実力があってもおかしくない。そういうことにしておこう。



「さてと、飯は奢るから2人は存分に食えよ。明日から特訓を本格的に始めるからな。あ、ルシエラさんも教えてくれると助かる。特に魔法を。」

「良いわよ。昼間は誰も来なくてヒマだしね。」

「ありがとう。」



 それ以降は余り話さずたべることに集中する。おかしいな。今は親睦会の筈だが。しかし俺に話をしろというのがおかしいんだ。元々俺は協調性が高いわけでもコミュニケーションが上手いわけでもない。むしろ苦手だ。


 特に自分から話しかけるなんてできない。知り合ったなら別だが。今でもルシエラさんや2人とも話すのに心臓が痛い。


 そんな俺の気持ちなぞつゆ知らず、2人は笑顔で料理を食べ進める。…お金足りるか?これ? 



「おい坊主と嬢ちゃん。余りたべないでやってくれ。ルシフの手持ちは少ないからな。」

「いやいい。たくさん食ってくれ。足りなかった分は入らないアイテムでも売って金にする。幸いにも魔物の肉は大量に持ってるしな。」



 2人はこれから英雄になるための過酷な運命を受けるようになる。ならば今くらいは全力で楽しませても良いだろう。勇者や聖女として活躍し、階級が上がれば自由が利かなくなる。貴族たちに使われ続けるんだ。少しくらい構わない。



「お姉さん、とても美味しいです。」

「うん!ホントに美味しいよ!」

「ありがとう。おかわりもあるわよ。」



 三人を見ていると実の姉妹、兄弟のようだ。そんなことを考えながら俺はオヤジと話を進める。これからのことだ。



「お前、本当にアイツらを鍛えるのか?」

「あぁ、乗りかかった船だ。最後までやり遂げないと気が済まない。まぁ、俺のできる範囲でだから余り当てにはならないけどな。」

「そんなことはないぞ。少なくとも俺が見てきた冒険者の中で1位2位を争うくらいにお前は強い。」

「だといいけどな。」



 チビチビと度数の高い酒を飲む。余りお酒には強くないが、酔いが覚めるのも早いらしく、チビチビ程度ならずっと飲み続けられるほどだ。状態異常もこれくらい早く治れば良いんだが。



「そろそろ親睦会は終わりだ。夜も遅いしな。」

「親睦会らしいことはしてないけどな。」

「堅いこと言うな。こういうのは気分なんだよ!」

「へいへい。2人とも、そろそろ終わるぞ。料理を食べ終えろ。はい、オヤジ。飯代。ちょっと少ないだろうからまた後で用意する。」

「いや、いつも利用してくれるからこれでいい。サービスだサービス。」

「なら、食費タダにしてくれ。」

「アホ。赤字にも程があるわ。」



 2人で軽口を躱し合い、俺は一人部屋に、2人は別の部屋に入る。明日からは俺がアイツらを指導して行かなければならない。生半可な指導じゃ裏をかかれ、呆気なくやられる。少し心苦しいが師匠と同じ。いや、それよりも少し簡単なくらいの修行はこなせるようになって貰わないと。


 またあの内容を反復するのかと思うと嫌になるが、2人のためだと思えば不思議と気が楽になった。気が付けば寝付いていたのは慣れないことをしたからだろう。


 2人の成長が愉しみだ。

物語の大まかな形は思いついてますが上手く進められませんね。次回から本格的な修行の話になると思います。多分…おそらく…きっと…。


わかりにくいことがあればご質問ください。アドバイスや意見などお待ちしております。


評価もしていただけるとありがたいなぁと思ってたり思ってなかったり。


また次回もお会いしましょう。ありがとうございました。

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