5.タイムリープした俺氏、【実弾】を集める為にド変態を飼いならすのコト。(上)
短めです。
【実弾】と言っても拳銃やその弾丸の事では無い。
この場合は「政治的意味合い」での【実弾】、即ち「現金」の事である。
駄菓子菓子、俺は悲しいかな、今は只の「小学生」である。分際を超える「金」を持っていれば逆に奴らに狙われ易くなるだけで良い事など何一つ無い。
「大人の、協力者が、欲しいな……」
実のところ、それが一番の難題である。
親に頼む。
ぶっちゃけそれはカンベン願いたい。
母親の方は先の事件の時の様に、余裕が無い性格の上、突発的な行動を取りやすい。先の例は元より、舅に虐められて離婚騒動を起こしたりしたのも確かこの年だった。
父親の方は言わずもがな、問題の解決方法よりも逃げ方を考えるのが先に来る、ある意味「事なかれ主義」、悪く言えば「敗北主義者」。そうして譲った先にある未来まで考える余裕が無い。
つまりは二人共、信用しきるだけの「信用」が無い。下手に金を持たせたら、その金を守る為に俺の意向など簡単に無視してくるだろう。
それでは駄目なのだ。
若い身空で「資本」も無く、金を借りられるだけの「信用」も無い。
それでいて、必要としている金額は「大の大人の年収分☓何人分」なのである。
最低でも数千万、可能なら億、が目標なのである。
対価を渡すと言うならともかく、それだけの【実弾】を管理させるには……
余程の信頼関係だけでは駄目だ。
ぶっちゃけ「奴隷契約の首輪」が欲しい。
……
…………
……………………
いや、待てよ?
「そうだ! 奴隷だ!」
奴隷契約を結んだ相手に言うことを聞かせる。
そのパターンとしてメジャーなのは、
① 呪いをかける。
② 借金地獄に落とす。
③ 暴力で追い込む。
一番スマートな方法としては、やはり借金であろうか?
暴力で追い込むのは、奴らと同じ轍を踏む様で業腹だし、そもそもこちらはそれを楽しむ様なメンタルは持ち合わせていない。
無論、呪い方など知らないので論外。
と、なると、やはり借金で縛るのが一番。だが、そこまで追い込める程の借金をしてくれるバカなんて何処に居る? ってか、本当のバカではこちらの役には立たないのである。
「借金、借金、サブプライムローン」
いや、バカは俺だ! サブプライムローンが問題になったのは2005年頃。16年も先である。今は1989年。四年前にバブル時代の元凶となったプラザ合意によって急激な円高を引き起こし、それまで5%程はあった公定歩合を一気に半分以下まで下げた。
結果、何が起こったかと言うと、金利の大幅ディスカウント。金を手に入れる為には「借金」をすれば良い。そう言う間違った常識が全国民に植え付けられて、実際、そうして銀行から融資された金を運用すらする事なく、今度は「使い道が無い」と言う理由で無駄に浪費して行ったのである。
バブル時代と言うと、誰でも稼げた時代、と言う認識だが、とんでも無い! 実際は、誰でも借金が出来たと言うだけで、稼ぐ能力なんてファンタジーな代物はこの時点で完全に日本から消滅していたのである。
そうして、バカな大人の借金漬けを見て育った子供達は、彼らの姿を見て反省したか?
そんな訳は無い。
バカな大人に育てられた子供達は、そんなバカな大人の真似をして、借金で自分を教育して、将来元を取れば良いと判断した。
所謂奨学金(此処では優秀な生徒に対する返済不要の奨学金では無く、利息を取られて返済を迫られるモノの事)問題は、この頃から猫も杓子も「奨学金」!「奨学金」で学校に通えば金に困ってる親に迷惑掛けない。
アホか?
学生時代、ってか、支払い猶予期間に積み上がる利息を計算に入れて無いのである。
「奨学金」と言う、一見頭良さそうに見える制度に騙されて、背負う必要の無い無意味な借金を背負わされ、それでも大したメリットの無い「大学」に行かねばならないと言う強迫観念に駆られた哀れな子羊、いやレミングの群れ、か?
だが、俺は思いついてしまった。
悪魔的なヒラメキによって。
人は俺を「人でなし」と罵る事になるだろう。
或いは俺を恨む人間を大量生産する事になるかも知れない。
だが、それでも結局は、俺の、この発明は、がんじがらめの無辜の人を救う事になるだろう。
そう、人を自在に「借金奴隷」として使役する為の制度。
名付けて「奨学金専門 おまとめ借り換えローン」
奨学金の返済が始まる前にそれまでの利息を含めて全額を「俺」が代理で一括返済する。
貸主は利息と元金を一括して払って貰い一両得。
借り主である学生は、それまでの奨学金とは比較にならない安い金利で「奨学金」(モドキでしかないのではあるが)が借りられるので一両得。
俺は安い貸金で借り主に恩を着せられる上、場合によっては金利以外の条件を付けて、自由に操れる手駒を得られるので一両得。
つまりは三方一両得の誰も傷付かない取引が出来ると言う事だ。理論上は。
そして、俺はその「誰も傷付かない契約」の栄えある第一号契約者として、
とある性犯罪者(として今後逮捕される予定のある人物)と接触する事を決意した。