13.いじめられっ子に何が起きたのか?
お久しぶりです。突然ですが、投下しますた。
ゴールデンウィークが明けた最初の登校日の事だ。
俺は白地に【胸糞】と書いてあるTシャツを着て登校した。先日のアキバ行で発見し、何故か心に刺さったので購入した逸品である。尚、帰ってから気が付いたのだが、タグの部分にも【胸糞】のロゴが刻まれていた。クールである。クールジャパン!
「おはようお兄ちゃん? ! な、何そのTシャツ!? 信じランない? センスが壊滅してるよ〜!?」
登校途中で出会い頭にいきなり俺にダメ出しをしたのは、チャコこと山田久代、小学4年生。ウチの隣に住んでいる謂わば「幼馴染」と言う奴である。
ちなみに将来を誓いあった事もある。だが、本人曰く「その時の事はわ〜す〜れ〜て〜!」とまで言われたので、結局その事は無かった事に。ちっ!
「や〜まだ〜(漢岩城風)誰のセンスが壊滅してるって!?」
こめかみをグリグリしながらチャコのツインテの感触を堪能する。コイツの髪質は柔らかいのにボリュームがあってなんか心地よいのだ。
「アタタタ! ハゲる! 将来ハゲちゃう〜!!」
流石に年下の女子をいたぶるのは体裁が悪い。ここらで勘弁してやるか。
「ふん! 俺のファッションセンスにケチを付けるからだ。それよりも随分久しぶりだな。今回は随分長いお勤めだった様だが」
「その言い方は不穏当過ぎ! 暫く京都に籠もってたから仕方ないじゃん!」
そういや、国営放送の大河ドラマで主人公の幼少期役やってるって話だったっけか?
「やっと大人編に移行するからお役御免になったのに、来た早々お兄ちゃんは躁状態だし、なんかSが出てるけど、一体何があったの?」
あ〜、やべ! 桜子相手に話する癖が出てるって事か? ん〜、ま、いっか。チャコだし。
「ん〜、お前だから言うが、ちょっと思う所があってな。少々本気を出して見ようかと「止めて!!」なっ!?」
何か喰い気味に絶叫された。
「お兄ちゃんの身体スペックが低いのは、多分【魔王】の復活直後はまだ弱い理論と同じで、本気を出したら世界が崩壊する時期が早く来ちゃう! せっかく一流女優への足掛かりを掴んだばかりなのに、それはあんまりだよ。うわ〜ん!!」
いや、一流女優がそんなわざとらしい泣き真似すんなや!
ざわざわ、ザワザワ、
ほら見ろ! 周りのオーディエンスがやたらとザワつき始めたやんか?
「あれ、山田久子ちゃんだよな?」
「久しぶりに見たけど、やっぱか〜え〜♥」
「隣の野郎は誰だ?」
「ほら、アレだよ。世界一弱い小学生って有名な」
「ああ、あのいぢめられっ子……」
「百人からの小学生殺し屋から命狙われてるって奴?」
「大人も奴だけは殺してOKって殺人許可証の出てる?」
「いや、でも、そんな奴があのチャコちゃんをいぢめてる? 助けに入ったらお近付きになれるかな?」
「いやいや! どう見ても嘘泣きだろ? ってか、どうしてあんなに親しくしてんだ?」
「一体、あのいじめられっ子に何が起きたのか?」
「「「謎だ」」」
いかん! 悪目立ちし過ぎた。今はまだ色々目立つのは不味い。
「とにかく詳しい話は」
「CMの後で?」
「何でだよ! 帰ってからお前ん家で説明してやる。序に協力して欲しい事もあるから、その積りでな」
「チャコ、荻窪の春木屋でラーメン食べたい〜」
「前向きに検討してやるが、太るぞ」
「語尾の力抜け加減がリアル過ぎてぷちムカつく!」
あ〜、そう言えばこのフレーズ十数年程先でギャル語として流行るけど、コイツこの頃から使ってたっけな。ブチムカつく。
「あ、センセ〜おはようございます!」
校門前で蝶名畑が立ってた。先日桜子に会社からチョナサン宛に大金を書留で送らせておいたんだよな。第一の【罠】として。
「そう言えばセンセ〜、もしかして最近思わぬ臨時収入があったんじゃないですか?」
「ドドドドどうしてソレヲ???」
挙動不審にも程があるだろ? 見ろよ。週番の生徒達が胡乱気に見てるやないか?
「多分それはセンセ〜が望んでたある種の【ご褒美】ですから、遠慮なく使って良いと思いますよ?」
「! な、何故それを?」
「と、言う占いの結果ですよ? 分かるでしょう? 差出人を見れば」
此処まで言えば流石に察した様である。そう、コレは我が家からの「心付け」である、と。
実は違うのだが。
真相はこうだ。
実は桜子の起こした会社の名は、実家の会社の屋号と被ってる。登録地の住所が違う事と、名前の最後に「。」が付いている事が違いであるのだが。
更に、チョナサンのアパートの隣が空家になっていた事もあり、そちらにも行政書士から格安で購入した会社を入居させた。屋号は「蝶名火田」。無論、看板なんかは出さないし、そも、住所が間違いだったり、読み難い形で書いてあったりするが。
つまり、本来自分宛では無い郵便物をネコババしたと言う体である。
しかも送った本人から遠慮なく使って下さいとのお墨付きである(と、言うミスリード)から、最早遠慮なく使えるであろう。適当な所で被害届を桜子に出させればスキャンダルの一丁上がりである。
それに加えてチャコの伝手でマスコミにリーク出来れば更に火がボーボーと言うスンポーである。上手くやれば上司の責任論にまで発展するやも知れない。
「いや〜持つべきは芸能人の知り合いだよなあ!」
「絶対、そんな事思って無いよね? お兄ちゃん! ブチムカつく!」
さて、そんな愉快な登校時間も終わると、授業が始まるまではこっちにチョッカイ掛けようと手ぐすね引いて待ってる輩も数多く居るので、授業直前までは教室外でヒマを潰す。此処で立ち回りを上手くやらないとクラス以外の輩に絡まれる事もあるのだ。
だが、今日絡んで来た相手は少々毛色が違っていた。
「三条、よね? 4組の」
「そう言うそちらさんは?」
そう言って絡んで来たのは、三人組の体格のやたらと良い女子だった。誰???
「アンタ、今朝四年の山田久子ちゃんをいじめてたらしいじゃない? 一体どういうつもり?」
こちらの誰何には答えず、一方的にこちらを糾弾し始めた。現場に居て普通程度の知能があれば、アレは気心の知れた間柄のじゃれ合いだと思うだろう。そうで無いなら、余程の阿呆か、現場に居なくて断片だけを他人から聞かされたかだろう。
「どういうつもりも何も、単に久しぶりに会った幼馴染と盛り上がっただけなんだけど「嘘! 見てた人が言ってたんだからっ!!」何て?」
流石にこの程度の胡乱な内容で他人と争う程阿呆だとは思いたく無かったが、どうも目の色が戦闘色に染まっている。多分四年生だとは思うがどう見ても体格差が俺のニ倍はありそう。
「どうやら言っても無駄のようね。あたしらが制裁してやるわ! 天誅!!」
どっひゃあ!! 問答無用かよ!? 体ごとがぶり寄りとか女相撲じゃあるまいし。
「何をしているのですか?」
そんな時、背後から突然声を掛けて来たのは、
「「「お! お姉さまっ!?」」」
何故にコイツらからお姉様呼ばわりされてるのかは知らないが、我がクラスの学級委員長であり、今年の風紀委員長でもある「球磨川 雅」その人であった。
今後は不定期に更新する事となりそうです。休んでる間に幾つも別の構想が出てきたりもしたので、或いは別の連載がはじまったり、それでもお付き合い頂ければ幸いです。