表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/17

10.いじめられっ子世に憚るのコト。

新章スタートです。

 

 結局、春の競馬シーズンは、中穴程度の結果ばかりだったので、実は然程実入りは良くなかったのである。まあこの時代、まだ枠連が最高にギャンブル性の高い馬券だった訳で、三連単どころか馬連すら無かったのだ。この後オグリと共にブームが起きてから、人気の爆発によってギャンブル性が高くなるのである。


 行って見て驚いたのは、当時まだ払い戻しが人力主体だった事。購入も漸く自動販売機にチェンジし始めたばかりでマークシートに戸惑う年寄の多い事。ってか客が年寄ばかりだった事に衝撃を受け、俺達は毎週悪目立ちしていた。


 とは言え、意外と子供の姿も多く、年寄の介護がてら子供の遊び場として活用すると言うのも有りだった。2階のデニ○ズやロ○ソンは当時まだゲーセンだったのだ。


 異物なりに毎週通った挙げ句、桜子がそれなりに存在を周囲の御常連様から認知された頃には先の負け分など物の数ではなくなっていたが。


 尤も、この春俺達の取った最大配当がNHK杯の30倍程で、皐月賞、ダービーと18倍台の決着。牝馬路線は流石に俺自身の成人前で馴染みが無く良く覚えて無かったので、あえてスルーか単勝のみの購入だったので、注力したのはやはり先の牡馬クラシック路線である。


 これを毎回3百万ずつ枠連に注ぎ込み果報を待つだけの簡単なお仕事である。占めて2億程の利益となったが、半分は翌年の税金対策に残して置いた為、実質使える資金は1億程となったのである。


「まあ、この資金はギャンブラー桜子の個人的収入だから、確定申告も個人でやらなきゃならんからな?」


 そう、プレッシャーをかけるとまたしてもトイレに駆け込みオロロロロロと吐きに行った。お陰で周囲のご老体からは「胃の弱い天才ギャンブラー」として覚えも目出度く、ほんの一月程で補導される心配も無くなったのは、ホント不幸中の幸いであった。


 この頃、平日桜子は会社関係の事で東奔西走していた為結構忙しくしていた。会社設立後は近隣の銀行周りをさせ、近場の全ての銀行に口座を開設させたのである。


 これは、やはり銀行と取引をするなら将来的には融資による【資金調達】が必須だからである。こちらは担当者が男でもいいからきっちり色目を使ってでも優位な立場を取れる様にしておけと命令しておいた。


 その際、大層役立ったのが桜子の【東大】出身の肩書である。資本金とは別に、各口座一千万程を当座と定期に分散して置いてあったので、担当者はそれなりに支店では覚えも目出度い立場を得られたのである。


 だから、初めての「融資」案件が来るのも早かった。


 最初の案件はメインバンクの【設備投資】になるのは必須であった為、同時に不動産も探させていた。場所は近所が良かったが、当時はまだ不動産が高く、都内23区など場所の確保すら難しい状態だった。


 結局、これも銀行の紹介で三鷹の分譲マンションの一室を当面の城とした。間取りは2LDKで6900万。中古でこの値段である。当時の相場が如何に狂っていたか分かると言う物だ。


 とりま、自己資金から四千万、融資で調達した三千万円を残りとして、支払いを完了すると、不動産の名義は会社となる為、此処に住む桜子には給与100万の内30万を家賃として還流させた。これは何も彼女への嫌がらせでは無く、普通に彼女個人への税金対策の一環である。


 そして、もう一つの秘密兵器を調達した。即ち「携帯電話」である。


 この頃、漸く「シモシモ?」のショルダーフォンは流石に姿を消し、「自動車電話」から「携帯電話」へとシフトして行く時期、電話会社もN○Tとツーカ○セルラーの二大勢力にKD○Iがシェアを伸ばし始めた頃で、自動車電話としては使えないPHSなる廉価版も普及を始めた、世が携帯電話に支配される前夜であった。


 普段から連絡の付けられる様に俺と桜子が携帯で繋がる必要は大いにある為、必要経費としては止むない出費である。


 でもこの構図、傍から見れば天才若手女社長が若いツバメの俺を囲ってる図、だよなあ。コッチの容疑で桜子が逮捕されなきゃいいのだが……


 一度平日にアポ無しでマンションに突撃した時なんか、室内を全裸で闊歩してたんだよ。このアホ! まあ、ストレス溜め込ませた俺も悪かったとは思うが、頼むからお外では止めてくれ。


「女社長、全裸で井の頭公園を闊歩」


 とか新聞沙汰にでもなったら流石に庇いきれん。


 まあ、この日は、奴の陰毛を俺手ずからきっちり全部処理してやると言うプレイに終始して奴の被虐思考を満足させてやったから、当面は大丈夫だと思うが……


 ともあれ、流石に夏を前に漸くポートフォリオも出来、体制の整って来た俺と桜子は、当初の予定通り、学校関連の問題を一気に解消する為暗躍を開始した。





 時期は少々遡るが、この年、俺は4月より『小学5年生』となり、入学して3回目のクラス替えを経験した。


 そして、予定通り担任として新任の「蝶菜畑 (チョウナハタケ)智仁(ノリヨシ)」が就任した。先に語った『暴力教師』である。


 奴の就任に際して、俺は奴の個人情報を徹底的に調べ上げた。この頃、当然ながら「個人情報保護法」などと言う代物は存在しない。ましてや、基本的に「住所・氏名」に関しては「連絡網」と言う物が毎年配られていて、生徒はおろか教師のソレも「公開情報」として常に晒されていたのである。


 例えば、俺の去年の担任だった「飯島民子」女史に対して、有志の女子生徒達が、この「連絡網」を利用して自宅を尋ね、誕生日の「サプライズパーティ」を行い、高額の誕生日プレゼントを献上した結果、彼女のタガは大いに外れ、あっという間に「収賄教師」に成り下がったのである。


 当時この程度の事で本来なら彼女は問題教師扱いにはならない筈だったが、PTAの煩さ方を敵に回したのが運の尽き。何しろ、当時は盆暮れの「お中元、お歳暮」を教師に贈る程度は常識の範疇として黙認されていたのだから。


 学校だけではない。例えば病院などでも、入院患者が手術を成功させた担当医師に対して「御礼」と称して既定の治療費の他に別途「現金」を手渡す事など「常識」の範囲内の事であったのだ。


 当時はまだ「師」の付く職業の者たちや、役人、或いは政治家等など、こういった他者からの「尊敬」? を受ける立場にあり、そういった人間に世話になったら全力を掲げて彼らの「恩」に報いる、と言うのが当たり前の世界であった。


 尤も、この年の暮れに日本人全体のタガが外れた結果、「大暴落」を経験するとそれまでの特権階級は一気に「信用」と「尊敬」を失い、その後の見苦しい命乞いの結果、一気に日本は平成と言う「停滞」の時代をひた走り抜ける事となるのである。


 それはさておき、我が「担任」の件である。


 当時は「ラズパイ」等と言う便利なアイテムはまだ生まれてもいなかったが、同程度の性能の品物は、アキバ巡りをすれば揃えられる程度には品物が充実していた。この頃まだ国有地売却前でヨドバシやUDXは影も形も無い、アキバがまだヲタクと外国人スパイの天国だった時代である。


 此処で、俺は部品を買い揃え、超小型のICレコーダーを複数作り上げた。


 小学生がこんな場所を出入りしていて目立たないのかって? 当然、この手の「頭の可笑しい」代物を入手したがる人材に年齢など関係無いのである。実際、数は少ないものの、俺なんかより小汚い格好でデカイリュックを背負った小学生など、意外とザラに店に出入りしている。むしろ、俺の格好が小綺麗過ぎるまである。


 ともあれ、ついでに色々とスパイウェアを物色中。あ! 瞼を二重にする魔法の「糊」発見! ついでに買ってこ。




 そうして、あらゆる準備を進めている間に、またたく間に4月は終わり、ゴールデンウィークも過ぎて5月中盤に差し掛かると「家庭訪問」が始まる。


 俺は此処で、最初の「罠」を担任に対して仕掛ける予定であった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ