表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

思念1 准将

学内階級准将の幼馴染が登場。

ミニガンの本名はM134、ググッてみよう!

「あー、体がダルい」

本日の第一声が、これで始まった。

体を半分起こした状態だったのだが、頭の重みでわざと後ろに倒れ、毛布を被った。

自分のベットは妙に落ち着くので、体を起こそうにもダルくて仕方がなかった。

2年前の故米国奇襲事件から日本軍は襲撃された時の対策を行っていた。

食料を配給制、各家族の人数分小火器とその弾薬の配給。

学校の授業も数学を銃の射程距離の計算と理解。

国語は作戦専門用語の暗記。

理科はさまざまな火薬の実験や調合。

社会は日本の伝統的武術や武具の勉強。

体育はCQBやCQCの訓練。

家庭科はサバイバル時の食料調理や調達の勉強。

技術科は火器のクリーンや組み立て、手榴弾や爆薬の組み立てなど。

中学生にこんな授業をさせ知識をつけさせるということは、遠まわしに政府は戦争にでも行けと言っている様なもんだ。

そんな授業なんか、こっちから願い下げだね。

と心の中で考えつつ重い目蓋を閉じ、深く深呼吸した。


「オーイ! 中尉!! 起きてるー?!」

ノック音と大きな呼び声で、本日の二度寝を妨害された。

ドアの外の声の主は一発でわかった。

毎朝わざわざケンを起こしに来てくれる幼馴染の“弧桜夜宵”《こざくら やよい》である。

夜宵は重火器研究部の部長であり、既に学校内階級も准将と将来有望な優等生である。

対するケンの階級は中尉であり、学校内最高学年としては夜宵の様に高くはない。

おまけにいつも夜宵と行動しており、一部の連中から俺のことを“側近”という皮肉を込めたミドルネームもつけられている。

そういえば今日は日曜日で学校も休みのはずだが、何故今日はこんな早朝から起こしにきたのかケンは疑問に思った。

「やかましい!今日は日曜だろ!!」

「今日は重火器部が山って言ってたでしょ?」

ケンは研究部や同好会には入っていないので分からないが、独自で国が保有している土地を借り、実験や訓練を行うらしい。

「早くおきなさいよー。さっさとおきないと、超能力使える事バラすわよー」

「な、馬鹿野郎!」

ケンは毛布を蹴り上げ勢い良く飛び出し、ドアノブに手を伸ばした。

少なくとも彼女をこの部屋に入れなければ、確実に何か仕掛けてくると踏んだからである。

ウィィィィィィイン

ドアの外から独特の動作音が聞こえた。

ケンの脳に電撃の様な何かが走りドアノブから手を払う様に離し、反重力作用のある強力な思念をドア自体に大量に流し込んだ。

何もない時に流せばドア本体が吹き飛ぶ量だが、ケンの想定上この量は適量かそれ以下であった。

ヴィヴィヴィヴィヴィヴィヴィ――。

強力で大量の反重力作用の思念を流し込んでも殺しきれない衝撃が、腕から肘を通り肩へと抜ける。

銃を撃つとき以上の反動が肩に直接かかるため、肩に激痛が走った。

ケンは眉間にシワを寄せ、肩が外れないように渾身の力をこめた。


ヴィヴィヴィシャャャャャー。

残弾が無くなりただ回転するだけの音に変わった瞬間、ドアから腕を払うように離した。

大量かつ強力な思念を使ったので、体に力が入らない上頭がぐらぐらする。

何歩か後ろに下がった所で椅子に足を取られ、そのまま荒々しく座り込んだ。

頭がグラグラするし面倒だがドアの外で将軍クラスの人間を待たせるわけにもいけないので、ドアに残った反重力作用の思念を自分に引き寄せドアを開けた。

目に飛び込んで来たのは、色気ゼロの大量の表彰バッチをつけた将校服に身を包んで雄雄しく銃を構えている夜宵だった。

そしてその手には、故米国製の超重量級火器のミニガンがあった。

基本的にはガンシップや拠点防衛用に用いられる代物なのだが、重火器ということで夜宵が改良して小型化、そして低反動装置の取り付けで彼女オリジナルの物を作ったらしい。

本物は銃事態は18Kgもあり、それに大容量バッテリーと弾を入れた総重量は、100Kg越えという噂である。

しかし夜宵のは銃事態は8kgで、日本製の良質な小型バッテリーと弾丸を使う事で、70kg前後に抑えているのである。

ちなみに実際これで撃たれるのは4度目ではあるのだが、今回は発砲音を抑圧するためのサブレッサーをオプションしてあるようだ。

「おはよう。いい寝覚めかしら五十嵐ケン中尉?」

嘲笑いながら彼女は、構えていた銃を下ろした。

よく見るとバッテリーはあるものの銃弾を入れてリュックの様に持ち運ぶマガジンを持っておらず、代わりに腰にある剣の鞘のような物から弾が伸びていた。

「おはようございます! 孤桜夜宵准将殿!!」

吐き捨てる様にそう言い、ケンは立ち上がった。

「堅苦しいわよ。二人でいるんだがらいつも通りでいいわよ」

そう言いつつ夜宵はミニガンと腰のモノを外し、足元に下ろした。

重圧のある音と振動から、非常に重いという事が分かった。

「その鞘はどうしたんだ?いつものリュックも無いしな」

そう聞きながらクローゼットを開け、外出用の迷彩服である。

どちらかというと実践の方が好きな准将の夜宵の横で、中尉バッチをぶら下げていても情けないので、一般兵の着る迷彩服を着るようにしている。

そのせいで、俺に敬語を使うのは自分を良く知る部下程度である。

最近ではその部下からも、段々呼び捨てにされ始めている。

「これ私が作ったマガジンよ。簡単な訓練の時は大型のより取り回しが効くのよ」


「・・・・・・ん、何?」

ケンの視線に気づいたらしく、その意味が分からない様子で夜宵はそれを疑問にしてた。

ケンは困った様な顔をして見せたが、夜宵はまだ分からないような顔をした。

「今から着替えるから出でくれないか?」

「別にいいじゃないの。どうせ下はスウェトスーツでしょ?」

急がせるような足で床を鳴らし、露骨にも速くしろという仕草をして見せた。

ケンは言い返す事が出来ず、仕方なく寝巻きを脱ぎスウェットスーツ姿になった。

このスウェットスーツは伸縮性、通気性、保温性、吸水性、耐火性を兼ね備えた高級軍事衣服の一つである。

日本の技術力と資金力を注ぎ込んだ一品である。

なぜ一介の中尉の俺が持っているかというと、夜宵が貰った物らしいが大きすぎたらしく俺に回ってきたのである。

伸縮自在なので動きやすく、彼女への敬意を込め風呂に入る時以外常に着ているのである。

まあ肌触りも最高なので、病み付きになっている事もあるのではあるが。


「ストップ」

ズボンを履こうとした時、夜宵はケンを制止させた。

胸元についた階級章を揺らしながら近寄り、目の前で止まりケンの体を舐める様に目を走らせた。

少し顔を離してみたり触ってみたりと、身体検査を受けている様である。

胸筋、腹筋、肩、二の腕、手首、太もも、ふくらはぎと撫で回され、たまに叩いて硬さを確かめていた。

「筋肉の発達が一層増してる・・・・・・。身長も伸びたわね」

微笑み掛けながら、ケンの肩を何度か叩いた。

超能力は使えても一日に何十回と出せる事はできないので、なるべく使わないように体を鍛えているのである。

超能力を使える回数は決まっている、

それに範囲はその時の体力、威力と繊細差は集中力、発動時間はその時の精神状態と、段々能力の特徴が分かってきた。

精神状態が悪い時は発動時間が短く、体力が残っていない時は範囲は小さい。

回数はだいたい一日に6回程度で、瞬間移動は距離は関係なく最高2度までだが、1回使うと2回目発動まで3時間インターバルが必要である。

無論その3時間の間は負担の繋らない事が条件で、通常は5時間弱かかってしまう。

ちなみに瞬間移動は4回分消費するので滅多には発動させない。


「よし、着ていいわよ。訓練に遅れるから急ぎましょう」

踵を返し歩き出した夜宵は置いてあったミニガンを軽々と拾い上げ、弾装に残った弾を抜いて肩に担いだ。

しかし剣の鞘に似たマガジンは無視して、階段に向かった。

不思議に思いケンは、上着のジッパーを上げながら口を開いた。

「そのマガジンはどうすんだ?」

「ん?」

再び踵を返してみせた後、ベルトに腰をあて肩に担いでいたミニガンをベットに向けて投げた。

低反発のベットは衝撃を飲み込み、たちまちミニガンの部分だけ少し沈んだ。

そっちに気が行っていると、夜宵は落ちていたマガジンを拾いこっちに向かって下から優しく投げた。

ケンは寸での所で反応して受け止め、夜宵の顔を見上げた。

「良い反応ね。階級状私が持ってたらおかしいでしょう? 持ってね」

そう言いまた踵を返し、手をヒラヒラと振り階段を下りていった。

「・・・・・まったく」

小声で呟きつつもケンは、筋力増強思念を腕に流し本日2度目の超能力を使った。

そして後を追うように、階段を駆け下りた。

次回は山中での訓練に向かう2人です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ