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夏休みの宿題  作者: ミルノ。
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観察日記 最終回

おじさんが大勢の大人達に囲まれ、連れ去られたあの日以来、僕は、おじさんと再開出来ていない。


「おじさん、一体どこに行っちゃったんだよ……。」


当初の目的だった「夏休みの宿題を早く終わらせて夏休みを満喫する計画」が今となっては、無駄になってしまった。


居なくなってしまったおじさんが気になり、宿題も友達と遊ぶ事も出来なかった夏休み。

悲しい気持ちだけが、僕の心に残った夏休み。


気が付けば、僕は、夏休みの間ずっとおじさんと同じ生活をしていた気がする。

何をする訳でもなく、ただただおじさんが帰って来るのを朝から夜まで同じ場所に座って待つだけの日々。


身を焦がす程に陽射しが強い日も、びしょびしょになった大雨の日も毎日待ったけど、結局意味のない時間を過ごしただけだった。


過ぎた時間を思い返し僕は、後悔した。


「全部あのおじさんのせいだ……。」


宿題が終わらなかった事も、楽しみだった大切な夏休みが台無しになかったのも、全部、全部アイツのせいだ。


夏休みが終わるのに宿題が終わらない。

遊んでないのに宿題もしないで遊ぶからだと、怒られる。

人助けしてたのに、嘘つきだと怒られる。

お母さんに怒られる。

お父さんに怒られる。

先生に怒られる。

友達にバカにされる。

みんなにいじめられる。

学校に行きたくない。

お家に帰りたくない。

誰も味方が居ない。

誰も助けてくれない。

攻められる。いじめられる。

逃げたい。逃げたい。逃げたい。逃げたい。逃げたい。

もう、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。


僕の中で、今まで感じたことのない黒い黒い感情が沸き上がる。

とどまる事を知らない感情がどんどん大きく膨れ上がり、制御しきれない感情は、爆発寸前

どす黒い感情が破壊衝動、死への絶望と変わりつつあった。


小さな問題も、処理しきれないから大きくなり、小さな子供に対して大き過ぎた感情は、膨らみ過ぎた風船の様になり

あと少し、あと一つ何かが加わったら踏みとどまれなくなる。


そんな時、僕に声をかけてくる人がいた。


聞き覚えのある声

この最悪な夏休みを作り出した元凶の声

僕の善意を踏みにじったヤツの声


心の中で何かが弾ける音がした。

衝動を抑えられなくなり、体が勝手に動き出し声の主へと振り返る。

瞬間、衝動が消えた。 おじさんへの殺意が消えた。


「おう、坊主! 元気にしてたか? ん?」


「お゛じざん……。」


「どうしたんだ坊主! ひでー顔になっんぞ?」


「お゛じざん…。 どう゛じだの?」


「ん? ああ。 ちょっと派手に転んじまってな! あははは!」


「転んだって……。 凄い血が」


おじさんの姿は、見るからに酷い状態だった。


誰かに殴られたのか頭から血を流し、シマシマ模様の服が真っ赤に染まる。

両手から何か強引に外したのか手が血塗れでポロぼろ、転んだっと言っていたが、それが嘘だと一目で分かる程酷かった。


何より、僕はおじさんの格好を見て、おじさんがどこに居てどこから来たのか直ぐに理解出来た。


「おじさん……。 どうしてここに……。」


「いきなり居なくなって、寂しがってるんじゃないかと思ってな! 俺は、新しく仕事が決まって忙しかったからなかなか顔を出せなかったんだよ。 すまないな、寂しい思いをさせて」


おじさんは、立ってるだけで精一杯の様でフラフラしてる。


「おじさんごめん。 ごめんなさい。 ごめんなさい。 僕、僕は……。」


言葉を遮り優しい顔をして僕の頭を撫でる。


「良い。 気にするな。」


涙が止まらない。

自分勝手な考えをしていた事が悔しい。


謝りたくて、ただ謝りたくて

言葉が出ない。


僕が泣いていると、おじさんが優しく声をかけた。


「俺みたいになるなよ。 そして強くなれ。」


その言葉を残し、フラフラした足取りで何処かへ行こうとするが目の前でおじさんは、倒れた。

僕は、直ぐにおじさんへと駆け寄る。


おじさんは、弱々しく呼吸をしている。

今にも途切れてしまいそうだ。


回りが騒がしくなりどこからか、サイレントの音が鳴り響く。


「誰か!! 誰か助けてください。 僕の、僕の友達を大切な友達を助けてください。 お願いします。 お願いします。 誰か……。」


僕の声は、虚しく響き渡るだけで誰も助けてくれない。

回りで騒がしくする大人達は、厄介事に関わりたくないのか近づかない。

それどころか、携帯で撮影し始める者までいる。


「なんで……。 どうして……?」


おじさんの顔を見ると、最初に出会った時の死だ目はしていなかった。

何かを成し遂げた後のように生き生きとした満面の笑みを浮かべて眠っていた。





僕の夏休みは、無駄な時間何かじゃなかった。

大切な友達との出会いと別れ、たくさんの感情を学び

僕は、強く生きようと思った。


ただ待ってるだけじゃ、何も変わらない事を

回りの人に助けを求めてるだけじゃ、何も救えない事を

いっぱい教えてもらった。


名前も知らない大切な友達に感謝した。


僕の大切な夏休みでした。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

誤字脱字、不平不満いろいろあると思いますが、楽しんでもらえたら嬉しく思います。


他にも小説を書いているので良かったら読んでみてください。

数少ない読者様の為に書いて行きたいと思ってるので、これからもよろしくお願いいたします。

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