観察日記 五日目
観察日記
五日目
家?を失ったおじさんは、いつもと変わらず地面に転がってる。
嬉しそうに僕を招いた日が遠くに感じた。
いつも通り僕が近くと起き上がる。
物欲しそうに僕を見つめて来たが、首を横に振り今日はお金を渡す事はしなかった。
「金がねぇなら失せろ! ガキが」
「おじさん。 家もなくなっちゃったんでしょ? 新しいお家を一緒に作ろう!」
僕の言葉を聞いた途端におじさんの穴と言う穴から汁を垂れ流しにし始めた。
うわ、汚っ。
「あ゛り゛がどぅ゛。 あ゛り゛がどぅ゛。 お゛前い゛い゛やづだなぁ。 ごべんな゛ぁ。 ひどいごど言ってごべんなぁ。」
汚い、汚いよおじさん。
汚いから僕に触らないで
おじさんの手を振りほどくとおじさんは、盛大に転がる。
知るまみれの顔に土が付く。
元から汚いおじさんが更に汚くなったが、おじさんは気にする様子はなかった。
もちろん僕も気にしない。
おじさんを連れて近くのダイエー(現在イオン)へ材料、食料の調達へ向かった。
僕がカートを押して、おじさんが欲しい物を入れる。
これが上手いんだと緑色のビンのビールを入れる。
お家を作る材料が無いので、仕方なくテントを選んだ。
楽しく店の中を回るが周りのおじさんを見る目が痛い。
ドーナッツ現象が起きている。
後ろに棒を持った
警備員が二人付いて来てる。
「おじさんは、先に帰った方が良さそうだよ。」
帰ることに進め、おじさんは、最後にビールを入れて渋々先に戻る事にした。
おじさんの後ろを警備員が三人付いて行くのが見えた。
おじさんを帰した後、僕もお菓子を入れておじさんが帰った反対の出口から出ておじさんの住みか?に向かった。
それからは、林の中にテントを立てて食料、お菓子、ビール等を中に入れて二人で宴会をした。
人助けをした日は、気分が良い。
帰り際、おじさんが地面に額を擦り付け、ぐちゃぐちゃになった顔で一生懸命お礼を言っていた。
今日は、雨が降ってないのになぜが、僕の頬に雨がつたって地面に落ちた。
観察日記
六日目
おじさんがまた、複数の大人に囲まれている。
青い制服を着た大人と揉めてるようだ。
少し離れた場所から眺めていると、おじさんは、白と黒の車に押し込められた。
その瞬間、目が合った。
言葉はなく。
死んでいたおじさんの目が少し笑っていたように見えた。
この日、淡い夏の思い出が、セミの声と共におじさんも消えた。
地獄への道は、善意と言う名の道で舗装されている。
by聖ベルナルドゥス