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私は美奈のお母さんに呼ばれ、3人で食卓を囲むことになった。


今日の献立はご飯にお新香に大根の味噌汁、ハンバーグにキャベツの千切りが添えられて、前回同様家庭的な内容となっていた。


「さあ。遠慮しないで食べてね!お父さんの分だけど。」


「ごほっ!」


食事の始めにそんなことを言われ、私は戸惑ってしまう。


「ちょっと!お母さん!隼人くんが困ってる!隼人くん、大丈夫だから。気にしないで?」


「あ、ああ。確かに急遽来てしまったからな。食事の量も急に増えるわけではないだろうからな。程々にしておく。」


「あ、えっとそういう意味じゃなくて、お父さんの分は別に取ってあるからここにある分は食べていいからね?というか、お母さんも何とか言ってってば!」


「うふふ。だって娘が初めて彼氏を連れてきたものだから、嬉しくなっちゃって、からかいたくなっちゃうのよ。」


「むー。じゃあお母さんもう何も喋らないで。」


相変わらず美奈はご両親相手だとすごく強気だ。


「あら、怖いわね。でも、そういう所も可愛いでしょ?隼人くん?」


いきなり私の方に振られてまたまた戸惑ってしまう。


「あ、はい。美奈さんは、すごく可愛いです。」


「・・・。」


「う・・・あ、う。」


お母さんは沈黙し、美奈は顔を真っ赤にしてあたふたしている。


「なんだか思っていた以上にベタ惚れなのね。この前家に来たときは大人しかったのに。」


お母さんはからかい甲斐がないと思ったのか拍子抜けしたような表情になった。親子だな。表情が豊かだ、と思った。


「あ・・・すみません。だけど、私はもう自分に嘘はつかないって決めたので。」


「・・・そう。まだ高校生なのに偉いわね。それともまだ若いから、なのかしらね。そういう所お父さんそっくりだわ。」


「え!?父と知り合いなのですか!?」


突然の発言に私は驚きを隠せなかった。美奈も驚いているところを見ると、知らなかったようだ。


「あ、ごめんなさい。お父さんは今いらっしゃらなかったのよね。」


お母さんは失言したように謝ってきた。というか、そこまで知っているのか。


「あ、はい。最近までは。」


「え!?ということは帰って来ているの?」


今度はお母さんが驚く番だった。


「・・・はい。実は幼稚園の頃からずっといなかったのですが、先日11年ぶりに再会しまして。両親は再婚しました。」


「そうだったんだ・・・。」


美奈も驚きを隠せないようだ。こんなタイミングでこんな話をするのもどうかとは思ったが、この2人になら構わないかと思った。


「じゃあ、お父さんとも仲直りできたんだね?」


美奈は嬉しそうに訊ねてきた。


「ああ。美奈の言うとおり、私の父親は私のことを大切に想ってくれていたよ。」


「・・・そっか。・・・よかった。」


「何だか感動の食卓になっちゃったけど、冷めちゃうからいい加減食べない?」


「あ、はい。あの、ですが、お義母さんと私の父親の関係が気になるのですが。」


「うん。そうだよ。私も知らなかったし。」


2人して興味津々だった。


「あー。その事ね。私達3人、高校の同級生なのよ。」


「え!?そうだったんだ!?」


美奈はまたまた驚きを隠せないようだ。まあ、私としてはそういう感じかとある程度は予想していたが。


「それでね!由加里とは寿人くんを取り合った恋敵でね!」


「ぶふっ!」


私は口に含んだ味噌汁を少し溢してしまった。


「最後に寿人くんに『私は自分に嘘はつきたくないのだ、私は由加里さんのことが好きだ』ってフラれて、ショックで一週間くらい部屋に閉じ籠っちゃったりしてねー!懐かしいわー!」


「ごほっ、ごほっ、ごほっ!」


な、・・・なんだかどこかで聞いたことがあるくだりだな・・・。


「あ、でももう終わったことだから気にしてないのよ?今はお父さんのことを愛しているし。ただ、2人が離婚したって聞いてからは会ってなかったから、心配はしていたわ。だから美奈が隼人くんのことを保育園の時から好き好き言ってたり、隼人くんが家に遊びに来た時は正直複雑だったのよねー。」


「お母さんっ・・・そういう事はあんまり言わないで!?」


「それにめぐみちゃんってすごく可愛いじゃない!?この娘がライバルだとうちの娘も私と同じ道を歩むんじゃないかって不安だったのよ。現に寝込んじゃったりしたしね?それがいきなり付き合い始めたものだから、お母さんもう嬉しくってね!?」


「・・・お母さん?」


「あ、でもめぐみちゃんが落ち込んでるかもしれないから、そこは私も同じ境遇を経験したことがある人生の先輩として慰めてあげたいのよね!あなたたち、めぐみちゃんと不仲になったりしてないわよね!?今度また家に連れてきてちょうだい!」


「・・・お母さん!」



「あ、それと、せっかく寿人と由加里が寄りを戻したのなら今度は家族ぐるみでどこかへ行ったりしたらどうかしら!?子供同士が付き合ってるんだし?温泉旅行とか楽しそうじゃない?夜は大人たちでわいわいやるからあなたたちはあなたたちでよろしくやればいいわよね!?むふっ!」


「お母さーんっ!!」


美奈は最後は真っ赤になりながらお母さんに叫んでいた。


「・・・あら、ごめんなさい。喋り過ぎちゃった!てへ!」


・・・。


何だか美奈のお母さんは・・・すごいのだな・・・。


こうして夕食の時間は過ぎていった。




夕食を頂いてから、少しだけ美奈の部屋にお邪魔した。

帰ろうかとも思っていたのだが、気になっていたこともあったので2人で少し話したかったのだ。


「何だか今日はびっくりしたね。」


「ああ。改めて世界は狭いのだな。」


「ふふ。そうだね。結局もしかしたら私たち、5才の時よりも前にすでに会っていたのかもね?」


「そうだな。赤ちゃんの時とかな。」


私達は改めて先程の話を思い返していた。


「うん。なんだかそれはそれでちょっとロマンチックじゃないなー。」


「ああ。・・・あの・・・美奈。」


私はそろそろと思い、意を決して先程気になっていたことを話そうとした。


「あ、でも生まれた時から会っていたっていう方がロマンチックなのかな。」


「・・・美奈。」


明らかに話題を引き伸ばそうとしている。やっぱり言いたくないことなのか。だが、これは避けては通れない、避けて通らない方がいいはずだ。


「隼人くんはどう思った?」


「美奈!」


「・・・何・・・かな?」


ようやく観念したように、美奈は私と会話をしてくれた。


「先月部屋に閉じ籠っていたというのはどうしてなのだ?工藤に告白されたからというのでは今一腑に落ちないのだ。他に何か引っ掛かることがあったのではないか?」


「・・・それってやっぱり話さなきゃダメかな?」


美奈は困ったようにこちらを見てくる。


「美奈、私達は恋人同士になった。お互いの気持ちが通じ合って、だがそれでも知らないことやわからないこともまだまだきっとたくさんある。もしかしたらぶつかってしまうこともあるかもしれない。だとしても、だ。だとしても変に相手に気を遣って、自分を偽ったりするのはやめないだろうか?そう思う私は美奈間違っているだろうか?」


「・・・そう・・・だよね。・・・わかったよ。」


ほんの少しだけ、美奈は沈黙して、私に話してくれた。


「明岩の花火大会の日に・・・めぐみちゃんと隼人くんが手を繋いで花火を見てるのを見ちゃったから。・・・隼人くんはめぐみちゃんのことが好きなんだって確信しちゃって。・・・だからだよ。だから、隼人くんに振り向いてもらおうって頑張ってた自分がバカみたいって、何もかも嫌になっちゃって、自分の殻に閉じ籠ってた。」


美奈は膝に手を置いて、下を向きながら、ぽつりぽつりと呟いた。

そうだったのか。私は美奈に、気持ちを伝えただけで、大事な中身の部分を伝えていない。皮肉にも椎名には話したというのに。


「美奈・・・。」


「はい・・・。」


「すまなかった。」


私はまず腰を折って謝罪した。


「・・・。」


私は大切な彼女に、私を好きになってくれた娘にこんな悲しい顔をさせてしまっている。新ためて私は最低だ。だが、美奈に嘘はつきたくないから、ありのままの気持ちをしっかり伝えたい。


「私は確かに椎名に想いを寄せていたのだと思う。」


「・・・うん。」


「だが、途中わからなくなってしまったのだ。自分の本当の気持ちが。好きだという気持ちは一体何なのかと。」


「・・・。」


「椎名や高野と接していくうちに、仲良くなっていくうちに、やがて、どちらに対しても好意を抱いているのではと思うようになった。私は2人に対してドキドキしてしまうことがあったからな。勉強会の時などにそれを自覚したのだ。」


「・・・。」


「では、本当に好きだと言える相手はどちらなのか、それを決定づける最後の決め手となる感情はなんなのか、それを考えた時、気づいたのだ。」


「・・・それって?」


「ずっと側にいたい人、失いたくない、心安らげる存在だよ。私は工藤に美奈に告白するという話をされた時、どうしようもなく苦しかった。取られたくないと思った。私が美奈の側にいたいと思っていることに気づかされたのだ。だがあの時の私には遅すぎた時を巻き戻す勇気が持てなかった。臆病になってしまったのだ。その結果椎名の優しさに甘えてしまって、結局皆を傷つけることになってしまったのだ。」


「・・・。」


美奈は話を聞きながら下を向いてほとんど沈黙していた。今美奈の中にどのような感情が渦巻いているのかはわからない。それでもしっかりと自分の想いは伝える。そうしなければ、美奈を好きでいる資格などない。


「それからは私はもう自分に嘘はつかないと、私の本当にまっすぐな想いを美奈に伝えると決めて・・・それが一ノ宮の花火大会の日であったのだ。」


「・・・そっか。」


「美奈。不安にさせたことはすまなかった。だが、私は今美奈のことを誰よりも大切に想っている。美奈・・・もしまだ私に対してわだかまりがあるのなら、何でも言ってくれ。どんなことでも応えたいと思っている。それで美奈の気持ちが軽くなるのなら。今の私は、美奈のことが好きで好きでしょうがないのだ。」


私の想いは伝わっただろうか。伝わったからといって美奈の気持ちが晴れてくれるのかは別問題ではあるが。


「隼人くん。」


すると美奈はゆっくりと私に抱きついてきた。


「じゃあもう二度と不安にさせないで?」


そしていつものように優しい声色で耳元に囁いてきた。その感覚がくすぐったくて、温かくて、私はまた美奈の優しさに救われてしまうのだなと思った。こんな最低な男のことをこんなにも想ってくれて、絶対に大切にしたい。これからどんなことがあっても。


「・・・ああ。絶対だ。」


絶対に、大切にする。


「最初から信じてたから、実はもうそこまで気にしてはなかったんだけど・・・あの・・・そこまで言うなら・・・行動で示してほしいな・・・花火大会の日みたいに・・・なんて。」


美奈は抱きしめた手を離して最後に恥ずかしそうにちらちらこちらを見ながら言ってきた。


花火大会?あの日私は告白して・・・そうか。


私は下から見上げてくる美奈の唇に正式に恋人になってから初めてのキスをした。その唇は柔らかくて、甘くて、とろけてしまいそうだった。


その時。


ガチャッ。


「隼人くん。そろそろお父さんも帰ってくるし家に帰った方がって・・・あら。ラブラブね!むふ。」


「お、お母さん!ノックぐらいしてよ!」


そう叫んだ美奈と目が合って、私達は微笑みあったのだった。




夜の8時も回っていよいよ帰ることになった。美奈とお母さんが玄関まで見送ってくれた。


「じゃあ隼人くん。美奈をこれからもお願いね?この娘、あなたが思っている以上にあなたにベタ惚れだから。」


「お母さん、この後話があります!あ、隼人くん。またね?」


「ああ。あ、美奈、お母さん、最後に1つだけお願いが。」


「何かしら?私のキスはあげないわよ?」


「だから!そんなもの望んでません!隼人くん、お願いって?」


美奈の豊かな表情を見て苦笑しながら、


「26日美奈のお誕生日を祝わせて貰えませんか?」


と言うと、2人は途端に嬉しそうな顔になった。やっぱり親子だ。似ているな。


「その日は家族でもやる予定だったから、是非家にいらっしゃい!美奈も喜んじゃうわね!」


「う、うん!」


「あー。それで、工藤と椎名も呼んだらどうかと思うのだが。」


「もちろんだよ!」


美奈は即答してくれたので、26日は賑やかな1日になりそうだ。


「了解した。では、私の方から誘っておく。」


「ええ。じゃあお願いね!隼人くん気をつけてね。」


「隼人くん。おやすみなさい。」


「ああ。またな。後、美奈。」


「ん?」


「ああ・・・毎日連絡するの、メールではなく、電話でも構わないだろうか?」


「・・・構わないよ?」


「・・・そ、そうか。」


「美奈。隼人くんは毎日あなたの声が聞きたいんですって!良かったわね!」


「ぶふっ!」


「お、お母さん!本当に今日うるさい!」


そうして、長いような、短すぎるような美奈との初デートは終わりを告げたのだった。

ここまで読んでくださってありがとうございます!


知る人ぞ知るといいますか。私のわがままな自己主張の世界が少しずつ広がっていっております。


略して『わたわが』にしようと思いますが、こちらの番外編に始まり、椎名に密かに想いを寄せる綾小路くんの空回りラブコメ、そして昨日からアップしはじめました、椎名に焦点を置いたエピソード椎名です。


まだ他にも書きたいわたわがエピソードはありますが、ぼちぼちと世界を広げていこうかと思います。


ありがとうございます!そしてこれからもよろしくお願いいたします!

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