表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命の道標  作者: 美海
1/3

第一章 憂鬱

君は直視できるか

血塗られた光景を

君は受け入れられるか

自分と・・・仲間たちが死ぬ運命を

時折、僕は思うのだ

苦しみの呪縛から解放されたらどれだけ良いかと

幸福かと

でも戦い続けなければならないのだ

何があっても・・・

武器を手放してしまうと命の灯火ともしびが消えてしまうのだから


西暦3000年代。

ある病気が進み、世界中の人口が減りつつあった。

通称:感無伝染発熱病かんむでんせんはつねつびょう。南アフリカ共和国からのもらい病だった。

この病気の初期状態は、たまに、惚けるか熱が出るだけで、一応、生活に支障は出なかった。

しかし中期状態になると、喉をかきむしったり、大声で喚いたりする。

でも、それで終わったら良かった。


その病が流行り始めた数年後に、運悪く、地球を襲ったのが、宇宙人だった。

彼等は、ここぞとばかりに地球人を殺し始め、自分たちの楽園を築いていったのだ。

ある国を除き、全ての国が崩壊した。

しかし、全人類を殺したのではなかった。

そんな中でも生き残った人類はいたのだ。

たった数万人の人。地下に住処をつくって、細々と生きていた。

約七億ほどいた人類とは、ほど遠い数。

やがて、子供を授かれない者たちが出たり、感無伝染発熱病にかかってしまう者が増加。

その病も、末期状態になると絶望するような光景になる。


末期は無差別に、人に襲い掛かるのだ。

老若男女関係なしに、残酷に。


次第に万といた人類は、二桁の単位まで下がってしまう。

時間が経つにつれ、その地下も宇宙人たちに見つかってしまい、すべての人類は、ほろんだ・・・と思われていた。

その中でも生き残った者はいた。

知恵で繁栄してきた人類たちが考えた策で一部の人間は、外の世界へ逃走。

おとりだった者等は死亡した。


それから数年後。


四人の子供が生まれる。

その後、三になると同時に食料が尽きてしまう。

彼等はいつでも宇宙人に対抗できるよう、武術をそれぞれの親から学んだ。


一人は軍刀の扱い方を。

一人は格闘技を。

一人は、弓の操り方を。

一人は銃の打ち方を。


四人はありえないほど、うまくなり、ついには各親の力を抜いてしまった。


才能・・・だった。


しかしその数年後。

各親も、片方が末期になってしまい、死亡する。



つまり・・・四人の五歳児をおいて旅立ってしまったのだった。


それから数十年。


彼らの物語をしばし、聞いてもらいたい。

あまりにも苦しく、悲しい物語を。


寒緋桜かんひざくらが咲く季節。

辺りは思わず震えてしまいそうな、冷たい風に見舞われていた。


静かなある家の中、アラームの騒音が響き渡る。

布団の中から手が出てくる。

手を彷徨わせて、何かを探しているようにも見える。


やがて、腕が痛くなったのか布団に腕を引っ込めた。

ふたたび、彷徨わせる。


それを繰り返し、何度目かでアラームの音が止められた。


人物が、ゆっくりと体を起こす。

彼の名前はかおる

明後日で16の誕生日を迎える少年だ。


黒髪茶目を持つ少年で、祖母が外国人らしい。


性格は、無口でドライで生真面目。

それが彼の印象だ。


数分後、また敷布団に身を寄せようとしたとき、大きな音が家の中に響き渡った。


バタバタ、という足音。


二つだということがわかる。

その事がわかると薫はうっとうしそうな顔になった。


「かっおるー!お早う御座いますよー!それとも、昨日と同じく寝坊ですかぁ~?」


笑いながら部屋に入ってきたのが、梨乃りの

夏に誕生日を終えている16の少女だ。


珍しいことに、彼女は茶色い髪と緑の瞳を備えている。

容姿端麗な少女だ。


背も160はあって、すらりとした長い脚はすべての者を魅了するほど美しい。


まあ、思っても口には出さないから、本人も自覚がないのであろう。


「梨乃ぉ・・・。少しぐらい待ってぇ・・・。」


苦しげな声を上げて入ってきたのが。美奈みな

彼女も秋に誕生日を終えている、16歳だ。


彼女は梨乃の方ほどまでしか身長がない。


よく食べていつも元気だから、小動物と重ねてしまうことが多々ある。


金髪碧眼。

アメリカ合衆国という国で、よく見かけた色だという。


少し、うらやましく感じたこともあった。


「もう!もう少し運動しなきゃ、おなかにお肉ばっかりついちゃいますよ!」

「ま。まぁ・・・もう宇宙人が見当たらなくなったし・・・」


美奈の言う通り、最近は見かけていない。


しかし出てきてほしいわけでもないから、今の状況が続いてくれるといいが。


でも今はそんなことより・・・。

「それより、なぜまた来ているんだ?自分からそっちに行くといったはずだ。いちいち来なくて・・・」


そこまで言って梨乃に言葉を遮られてしまった。


「だーめー!早寝早起き早朝ごはんは基本中の基本ですから!」

「梨乃?早ご飯とは言わないと思うよ?」

「え?そうなのですか!?」


まったく・・・毎朝、人の家に上がり込み、漫才みたいな風景が繰り広げられる。

・・・拷問のようだ。


こうしている間も、眠気が僕を襲う。

また、布団に潜り込み目を閉じた。


しかし、誰かが僕の体をゆすったせいで、安らかな時間は終わりを迎えた。

「ほらぁ~。美奈、薫・・・また寝ちゃいましたよ?」

「だねぇ。お寝坊さなんだよ」


決して寝坊なんかではない。


二人が来る前に起きていたし、来た後もきちんと目を覚ましていたからだ。

寝たのは、二人が勝手なことを始めたからだ。

そこを自覚してほしいと、毎回毎回思うのだ。


後、注意してほしいのだが、この会話は16歳の会話である。

5、6歳ではない。


「・・・・・・・・・。」

「あっ!起きたよ~!」

「じゃあ、行こうか!私たちの秘密基地アジトへ!」


二人は、片手を上にあげた。


僕はため息をついてしぶしぶ、片腕を上げたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ