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【第二話】委員会と腐れ縁

「ホントだ…」

 翌日の朝。

 登校して早々に、僕は教室の黒板に貼られていた、昨日決まったであろう委員会の名簿に目を通した。

 確かに、学級委員の枠には、茅ヶ崎日笠(ちがさきひがさ)という僕の名前があった。

 そしてその隣には──真鶴茉夏と書いてある。

 まだ実感が湧かないな。

 深い息を吐いてから、自分の席へ向かう。

「日笠、一生分の運を使い果たしたな」

 脱力するようにストンと腰を下ろすと、一人の男子生徒が話しかけてきた。

 足柄生(あしがらなる)、僕の人生で最も仲良くなった男子であり、中学一年生の頃から五年間同じクラスという、運命もクソもない男同士の奇縁がある。

 いわゆる腐れ縁というやつだ。

「俺、昨日学校休んでただけなんだけど」

「それだよ。学校休んでなかったら、真鶴と同じ委員会なんて絶対になれなかったんだから」

 そうなのか。

 そもそも、どうして僕が真鶴と同じ委員会で、しかもそれが学級委員会なのか、全くわからない。

 この学校では、基本的に委員会は立候補によって決めることになっていて、一つの委員会に各クラス男女一人ずつという決まりだ──つまり、真鶴が学級委員になった時点でもう一人の学級委員は男子であり、クラスの男子全員が立候補して争奪戦になってもおかしくないはずなのに(ちなみに、委員会の数はさほど多くないので、生徒全員が委員会に入ることはなく、委員会に所属しなかった生徒は、各クラスの係──黒板消したり、提出物を集めたり、そんな感じの仕事につくことになる)。

「そりゃみんな立候補したかっただろうよ──俺だってしたかったよ。けどな、真鶴が学級委員になったタイミングで手を挙げてみろ、どう考えても下心丸出しだろうが」

「なるほど…」

 なんとなくわかった気がする。

 確かに、真鶴茉夏に近づくような男子は下心があるとしか思えない──それ故に、クラスの男子には、彼女には親密に接し難いという雰囲気が若干ある。

 そんなことをすれば、クラスの男女全員に嫌われる可能性があるから。

 それで結局、男子の学級委員には誰も立候補せず、たまたま休んでいた僕が、その貧乏くじ(富裕くじ?)を引かされたということか。

「でもまあ、イケイケ男子が真鶴とペアになるよりは、お前みたいな根暗がなった方が、危険がなくて安心だな」

「そうかもな」

「あ、勘違いしたりするなよ?真鶴が日笠に恋するとかいうアニメみたいな展開はないからな?」

 生は典型的なアニメオタクだ。メガネで、髪はくせっ毛でもっさりしてる。それなのに顔は割と整ってるし、清潔感もある。

 そしてなにより、二次元と三次元をきっぱり割り切るタイプのオタクで、思考や行動はかなり現実的だ。

 だから、中学時代はそこそこモテていた印象がある。

「わかってるよ、そんなこと」

 わかってる──けれど、少しくらい期待したっていいじゃないか。


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