未来を見る瞳 3
後日、晴香は占い研究同好会を訪れた。無論、雪菜の事件についての話を聞くためだ。
同好会の部屋のドアを開けると眠たそうな顔をした海斗と、旧校舎で晴香達を助けてくれた潮がいて、晴香が部屋のイスに座るとすぐに事件の経緯を話し始めた。
「まず始めに、取り調べで倉岡先生が話した証言によると事件の発端は一年も前に遡るそうだ」
「一年前?」
「そうだ。一年前、当時からうちの大学で教諭をしていた倉岡先生は一年前にも雪菜さん同様、自らの研究室の生徒にウイルスを投与した」
「生徒の名前は川村香澄。一年前、両親から捜索願が出ていた」
海斗の説明に潮がそう付け加えると、写真を一枚撮りだして晴香に見せてくれた。晴香と同じくらいの歳の女性の写真。
この人が川村香澄―――
「倉岡先生はウイルスは投与した者の彼女を殺す気はなかったそうだ。十分なデータを取ったと後、自ら作っておいた抗ウイルス剤を投与しようとしていた」
「人をモルモットみたいに使っておいて殺す気はなかったなんてよく言えたもんだな」
「えぇ、その意見には僕も同意します。しかも彼は沢村一樹を殺し、広松俊介を殺そうとした事については一人殺したのだから二人も三人も同じだと言っているそうで……正直、僕には理解できませんね」
「ねぇ。一人殺したって事はもしかして……」
晴香の心中で嫌な予感がした。
「その通りだ。倉岡先生が川村香澄に抗ウイルス剤を投与したと時、彼のウイルスは作り手の範疇を超えてしまった」
「ウイルスが突然変異したんだよ」
「そんな……」
晴香の悪い予感は的中した。
「当然、変異したウイルスに抗ウイルス剤が効くはずもなく、程なくして川村香澄死んだ」
「そして死んだ川村香澄の遺体は……」
「旧校舎の理科準備室!」
「そうだ。倉岡先生は川村香澄の遺体を旧校舎の理科準備室に隠した。だが一年程たったある日、倉岡先生にとって予期せぬ事態が訪れた」
「私たちが旧校舎で肝試しをしようとした、ですね」
「あぁ、しかも君たちは開かずの間、つまり理科準備室に行こうしていた。だから死体が倉岡先生は遅れてきた君以外の三人を川村香澄の時と同様に背後からスタンガンで襲った」
「もっとも、広松さんは途中で逃げ出し、沢村さんは背後から迫る倉岡先生の気配に築き抵抗された」
「だから傷を失わせた後倉岡先生はすぐに沢村一樹を殺した。だが、雪菜さんだけは違った。無論、倉岡先生は雪菜さんを殺そうとした。だがその時倉岡先生の中でもう一度実験をしたいという感情が生まれた。そしてその感情に従ってしまった」
「理解できねぇな」
「えぇ。まぁ、倉岡先生の心は川村さんを襲ってしまった時点で壊れていていたんでしょうね」
潮の意見を海斗がそうまとめと、三人は少し黙り込んだ。
「まぁ、それより話を続けましょう。倉岡先生は一度、沢村さんの遺体を川村さん同様開かずの間に隠した後、雪菜さんにウイルスを注射した。ここでもう一つ倉岡先生に予期せぬ事態が起こる」
「遅れてきた晴香ちゃんが理科準備室に来たんだな?」
「そうです。従って倉岡先生は雪菜さんをおいて逃げなくてはいけなくなった」
「え? でもなんで先生は私は襲わなかったの?」
「それは君が雪菜さんを見つけてすぐに救急車を呼んでしまったからだ。隠したとはいえ近くには死体もあるんだ下手には動けない」
「それで……」
確かにそれなら納得だ。
「これで事件のだいたいの流れは説明出来たわけだが、ここでなぜ僕が倉岡先生が犯人だったと気づいたかを説明しよう」
「まずは最初に僕は君が知ってるとおり倉岡先生が広松さんを自殺に見せかけ殺そうとしたのは知っているはずだ」
「えぇ」
「これは直前に広松さんが何者かに襲われるという未来を見たからだ。さらに、僕はそこで犯人である倉岡先生の未来を見ることに成功した」
「だから旧校舎で私たちが襲われたことがわかっていたのね?」
「その通りだ」
それならあの時の海斗の動きにも納得がつく。あれは完全に相手が何をしてくるかわかっていた動きだった。
「毎回思うがお前の捜査はすごく簡単に謎を解いてるように感じるな」
「もしかして海斗さんって他にも事件に関わってたりするんですか?」
「ん? 晴香ちゃんには言ってなかったか? そうだな、こいつが中二の頃からだからもう何十回も捜査協力をしてもらってるかな……」
「そんなことは今はどうでもいいでしょう。話を戻しますが僕の捜査は一見簡単そうに見えますが簡単ではありません。僕が見えるのは悪魔でも未来に起きる現象であって過去にその人が何をしたかはわかりませんからね。今回は倉岡先生が僕が未来を見た後に僕たちに仕掛けてきたからこそ簡単にわかっただけです。彼が広松さんを襲い、僕が助ける瞬間に未来を見た後に彼が僕たちを襲わなければ僕は彼が犯人だとわからなかったかもしれません」
つまり海斗が未来を見た時点の未来で倉岡先生が何かしてこなければわからなかった。ということらしい。
「毎回だがお前の話はわかりにくい」
潮がめんどくさそうに言う。
「まぁ、潮さんは脳みそまで筋肉で出来てるわけですから、理解できなくて当然ですよ」
「海斗、それ以上言うとお前の頭をかち割るぞ」
潮の拳を海斗に向かって飛んでくる。が、海斗は潮の未来を見たのだろう。それを知っていたかと言うようにあっさりと避けてしまう。
「おっと、刑事が学生を殴るなんて大問題ですよ」
「てめぇ、覚えてろよ!」
「完全に悪役の台詞ですね、それ。っと、事件の話はだいたいこんのもんだ。君は早く行くところがあるのだろう?」
海斗は潮のことをサラッと受け流し、晴香に聞いてきた。
「行かないと行けない所って?」
「雪菜さんの退院祝いをするんだろ? 早く行かなくていいのか?」
「あぁ! そうだった! ……ってなんで海斗さんが知っているんですか?」
「それは、ご存じの通りで」
そう言って海斗は自分の左目を指さす。あぁそうか。晴香は心の中で納得する。
「私の未来を見たのね」
「ご名答」
海斗が晴香を見てニヤリとする。何だかまるで何もかもが彼に突き抜けな気がする。でも不思議と嫌な感じはしなかった。
「じゃぁ、私行くね」
「あぁ。雪菜さんにもよろしく頼む」
「うん」
晴香はイスから立ち上がると占い研究同好会の部屋を後にした。
お久し振りです! 細鐘レンです。
前のフューチャー・アイズを投稿したのがもう何ヵ月も前ですから、まぁなにをしてたんだ!?って感じですね。
まぁ、言い訳ではないのですが別にダラダラとしていたわけでは無いんですよ!
とりあえずふ部活ばっかりしていたってだけですね。
あと、受験生なので……
って、マジで言い訳みたいになってる!?
そんなこんなな僕の書くが、フューチャー・アイズですが、何とぞこれからも宜しくお願いします。
それでは、また四話で!
今度は早く投稿しよう。 細鐘レン