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未来を見る瞳 2

ファミレスから出た二人は広松に話を聞くために大学の研究室に来ていた。

「それで、あなたは怖くて逃げた」

「あぁ、そうだ」

研究室では今まさに海斗が広松から話を聞いている最中だ。だが、残念ながら雪菜の中に潜むウイルスについての手がかりは出てきそうにない。というのも広松に聞いてわかったのだが、広松は雪菜が倒れる前に怖くなって逃げ出したからだ。これでは手がかりが出てくるわけがない。

「そうですか。ありがとうございました」

海斗はそう言うとイスから立ち上がり、研究室から出て行く。晴香も広松に「ごめんね」と言ってから海斗の後を追った。

 

「あの……どうでしたか?」

 研究室から出てすぐの廊下で晴香は海斗に訪ねた。話を聞いた限り手がかりになるようなことはなかったように思えた。だがそれ以前に海斗には人の未来が見えるという能力があるのだ。もしかすると、何か手がかりを見つけているかもしれない。

「正直に言うと彼からは特に何も得られなかった。彼の未来も見てみたがこれと言った手がかりはなかったな」

「そうですか……」

調べ始めてすぐに何か手がかりが見つかる。そんな風にうまくいくわけがないのはわかっていただがそれでも晴香は落ち込んで小さくため息をついた。

「ため息をつくと顔にしわが増えるそうだ。君の顔はすでにしわだらけなのにまだしわが欲しいのか?」

「い・り・ま・せ・ん! て言うか、しわなんてありませんから」

まったく、意地が悪いというかなんというか……

「調査はこれからなんだ。一日目から落ち込んでたら仕方ないぞ」

「え?」

「何度も言わせるな。明日は旧校舎に行く。九時に食堂に集合。じゃあな」

海斗が晴香に背中を向けて去って行く。

(もしかして、さっきの悪口は私を気遣ってくれたの?)

晴香は少しそう思って考えた後……

「まさかぁ~」と、呟いた。


次の日、晴香は海斗に会うために大学の食堂に来ていた。食堂に行くと海斗がいて昨日と同じはだけたワイシャツ姿に眠たそうな顔をしながら食堂のイスに座っていた。

「やぁ。おはよう」

晴香が元気に挨拶をすると海斗はイライラと表情を浮かべた。

「遅いぞ。何十分待たせるんだ」

「え? ちゃんと九時に来ましたけど……」

「君の時計は壊れているのか? 今は九時三十分だ」

(え? そんなはずは……)

晴香は急いで食堂の時計を見た。時間はきっちり九時。

「騙しましたね……」

晴香の中でまたもや怒りが沸々と沸いてくる。

「まぁ、座りたまえ」

そんな晴香を見て海斗がクククッと笑いながら言った。

「やっぱり騙したんじゃないですか!」

「まったく……っていうかなんで海斗さんはそんなにボロボロなんですか?」

海斗の近くに来て気づいたが、海斗のはだけているワイシャツの奥からはいくつもの擦り傷や痣が見えた。

「まぁそんなことより今日の話をしよう。昨日僕は旧校舎の鍵を管理している倉岡先生に鍵を借りて……」

「篠崎君!」

 突然、背後から晴香を呼ぶ声がして、晴香はビックリして振り向いた。

「倉岡先生!」

そこにいたのはは、先程海斗の話のも出てきた倉岡先生だった。

「どうしたんですか。すごく急いでいるみたいですけど……」

「広松君が昨日、車に引かれて重傷だ」

「本当ですか?」

 聞いたのは海斗だ。

「君は……いや、それより広松君だな。本当だ。病院から聞いた話によると昨日の帰り道で途中、車道に飛び出してしまったそうだ。」

「そんな……」

「とりあえず旧校舎は後回しだな。まずは病院に行こう。」

その意見には晴香も賛成だ。

「そうですね。倉岡先生、広松君はどこの病院に?」

「東町の市民病院だが……」

「ありがとうございます。海斗さん、行きましょう」

「あぁ」

二人は病院に向けて走り出した。


その後、広松が入院している病院向かった晴香達は広松の見舞いをしてから旧校舎に向かった。旧校舎は心霊スポットにされるだけあって昼間でも十分にその雰囲気を漂わせていた。

「ここの理科準備室で雪菜は倒れていたんです」

「そうか」

海斗はいつもと同じ眠そうな声で答えた

「行こうか……」

そういって海斗は倉岡から借りた鍵でドアの鍵を開けた。五分ほど歩くと目的の理科準備室についた。

「ここが理科準備室か……」

「はい。ここで雪菜は倒れていたんです」

「そうか……」

海斗が周囲を見渡す。

「おい、あの扉はなんだ?」

 海斗は準備室の壁に取り付けられた扉を指さして言った。

「さぁ? 何でしょうか……」

「そうか。」

そういうと海斗はドアを開けようとした。しかし、扉は鍵が掛かっているのか開かない。だが、海斗はなにか悟った風な顔で……「……時間だ」っと呟いた。

瞬間、物陰からバットを持った黒い覆面姿の男が現れ襲いかかってきた。海斗はそれを知っていたかのようにスラリと躱すと、晴香の手を掴んで引っ張った。

「逃げるぞ」

二人は全速力で理科準備室から出るとさらに階段を駆け登った。

「海斗さん。このまま行ったら屋上ですよ!」    

そう、このまま旧校舎を登って行けば屋上……つまり行き止まりだ。このままでは、確実に男に捕まってしまう。

「大丈夫だ。いいから走れ」

海斗がそう言ってさらに走るスピード上げる。それにつられて晴香も走る。そしてついに屋上にたどり着いてしまった。

「ハァ、ハァ」

二人は、すっかり荒くなってしまった呼吸を整えながら屋上の入り口を見つめていた。

男はまだ……現れない。

「あの人……誰なの?」

「恐らくこの事件の犯人だ。沢村一樹を殺し、広松さんに重傷を負わせた犯人だ」

そしてなにより、雪菜にウイルスを打ち込んだ。

「そうですよね……倉岡先生」

「え?」

突然の海斗の言葉に晴香は驚きを隠せない。

「そこにいるんでしょう? 出てきたらどうです? 倉岡先生」

海斗の呼びかけに答えるように屋上の入り口から倉岡が現れた。手には金属バットと先程晴香達を襲った男がしていたのと同じ覆面を持っていた。

「倉岡先生……」

晴香の声は恐怖で震えていた。驚きと恐怖で足が震えている。

「やはり君は昨日僕の邪魔をした男だったか……」

「えぇ、そうですよ。僕は昨日、先生が広松さんを車道に突きとそうとしたのを邪魔しました」

「じゃぁ、その傷は……」

「そうだ。この傷は昨日、広松さんを助けようとして出来た傷だ」

海斗がワイシャツの下に残る傷を触りながら言う。

「さて、教えてもらいましょうか。倉岡先生、あの日何があったかのか。その全てを教えて下さい」

「意外だなぁ。その口ぶりだと君はもう全部知っている。そんな気がしたんだがなぁ」

「僕が知ることが出来るのは未来での出来事だけで、過去のことはわかりませんから」

「どう言う意味だ?」

「僕には人の未来が見える……と言ったら先生は笑いますか?」

「笑うだろうね。だがもし本当に君に未来を見ることが出来るとしたら、君には見えているはずだ……君が僕に殺されるという未来が」

倉岡がバットを海斗に向けて振ろうとする。

「いいえ、僕に見えるのはあなたが警察に捕まる未来だけです」

海斗がそういった瞬間、屋上の入り口からスーツ姿の熊のような男が現れ、倉岡に襲いかかった。

「なんだ!? お前はッ!」

倉岡はそれに反応し、金属バットを現れた男に向かって振りかぶる。

だが男はその熊のような大柄な体格からは想像できない機敏な動きで倉岡との距離を詰めると右ストレートで顔面一発! あっさりと倉岡を気絶させてしまった。

「流石、熊の見かけは伊達じゃないですね。潮さん」

「うるせぇ! 誰が熊だ、熊。お前は助けてもらった相手にそんなこと言うのか!」

潮と呼ばれた男はスーツに付いた砂埃を手でパンパンとを叩きながら言った。

「そうですね。ありがとうございました。潮さん」

海斗が潮に向かって深々と頭を下げた。

「なんだよ……お前が礼を言う何て……ビッ、ビックリするじゃねぇか……」

「いえ、本当に感謝していますよ……米粒程度には」

「てめぇ、海斗! お前もついでに逮捕してやろうか!」

「僕は一貫して無罪を主張させていただきます」

海斗が腕でバッテンを作って言う。

「あの……今更なんですけどこの人は……」

 質問したのは晴香だ。

「あぁ、未解決捜査室の警部、潮さん。僕の知り合いだ」

「警部って……海斗さん、すごい人と知り合いなんですね」

「いいや。ただの腐れ縁だ、腐れ縁」

潮が手を横に振る。海斗もこくりと頷いた。

「まぁ、無駄話はここら辺にしておきましょう。彼にはいろいろと聞くことがある」

海斗が気を失ったまま倒れている倉岡を見ていった。そうだ、彼には聞かなければならないことがたくさんある。


雪菜待ってて……もう少しで終わるから……


こんにちは! 細鐘レンです。

投稿する、投稿すると言いつつ遅くなってすみません。


さて、フューチャー・アイズ第2話、どうだったでしょうか

なんか、まだ2話目なのに犯人捕まっちゃってすみません。

ちなみに、次回は今回の事件の全容がわかるようになっています。

今回はなにが起こったのかわからないことも多いと思いますから……


では、フューチャー・アイズを読んでくださった皆さんに感謝を!

細鐘レン

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