第2話:時をまたいだキミの手紙・・・
古びた手紙には当時の彼女の切実な想いが記されていた・・・
『これを見る頃にはもう新しく生活するところに着いたかな?(なんかドラマみたいだね。ちょっと恥ずかしいかも)とにかく、面と向かうと恥ずかしくて言えないこと、たくさんあります。なので手紙にしました。
初めて会ったのは小学校だったね。覚えてる?私がブランコから落ちて膝すりむいて泣いてたときに保健室に連れてってくれたね?あの時は私誰も友達がいなくて誰もそばにいなくて寂しかった。だからキミが駆け寄って心配してくれてすごくうれしかった。安心して涙が止まらなくてキミ、オロオロしてたね。とにかくすごいうれしかった。そして、キミが初めての友達になってくれたね。内気だった私を後押ししてくれてみんなの輪の中に入るようにしてくれて、おかげで私、友達沢山できたよ。今でも付き合いあるんだよ?知ってた?とにかくありがとう。
中学生になってもキミは私の一番大事な友達だったね。覚えてる?学級委員長だった私が文化祭の出し物決めようとした時、(なんであの頃の男子って妙に斜に構えてるんだろうね)男子がうるさくて何にもできなかった時に「うるせえ」って叫んでくれたね。おかげで男子は静かになって無事に出し物が決まったね。でも、そのおかげでキミが演劇の主役になっちゃったんだよね。今でも覚えてる。まさに大根役者とはこのことだね!って思った。
受験の時は私がお世話したね。思えば助けられてばかりの私がやっとキミを助けることができた時だね。勉強はじめるとすぐに眠くなる癖、もう治った?とにかく私のおかげで無事合格できて良かった。私はきっと、キミよりもうれしかったと思う。また一緒に生活できるんだからさ。
高校は、いちばん濃い生活だった。キミも私も部活に入って、試合があったらお互い応援しに行ってさ。最後の大会の時、私負けちゃって、大泣きしちゃった時一晩中そばにいてくれたね。えーと、このことは忘れてください。恥ずかしい思い出だから。とか言うとキミは絶対「なら覚えてるよ!」とか言って忘れてくれないんだろうね。意地悪だからさ。
そういえばケンカも沢山したね。いっつも君が折れて謝ってくるの。気が弱いんだから。そういうとこちゃんと直さないとそっちに行ったら生きていけないんじゃない?大丈夫かな?ちょっと心配です。
なんか言いたことっていうか思い出綴っただけになっちゃうね。これでも何回も消したりしたんだけど、書いてるとこうなっちゃうから、仕方ないよね(開き直りかな?)
正直、キミがいなくなるの嫌です。もうずっといたのに、いなくなっちゃうの?ってね。こないだ理由知った時は正直悔しかったよ。「このまま田舎でつまんなく人生終えたくない」って、正直泣いちゃいました。だって、私はキミのなににもなれなかったんだなってさ。多分そんなことないって言うんだろうね。でも、そうなんだよ、それは。でも、私止めません。私に留める権利はないもの。
なんだか長くなっちゃったね。このまま読まれて「ホームシックにかかった」とか言われても困るからさ、ここらへんで終わります。まだまだキミに伝えたいこと沢山あります。今度は会って伝えたい。だから、約束してください。4年後の2月11日、初めて話したあの公園のブランコのところに来てください。私をすこしでも想ってくれているなら、それだけでいいから。私待ってるから。
新しい土地であなたがいつものように明るく、健康で、幸せであることを祈ります。
またね 』
彼女の手紙にさよならは無かった。
僕は自分が泣いているのに今気づいた。古びてやけ果てた紙に僕の涙が染み込んでいた。涙が止まらないのは初めてだった。なんでこんなに自分のことを心配してくれている人を忘れていたのだろう。
「なんで、なんでこんなん書くんだよ・・・約束って・・もう4年も過ぎてんじゃんか。俺、馬鹿じゃん・・」
手紙の最後には普段自分にお願いをしない彼女が僕に約束をお願いしていた。4年前、初めて会ったブランコ・・・
4年前、彼女は僕を待っていたのだろうか。冬の寒い時に白い息を吐きながら冷たくなった手を温めていたのだろうか・・・どれくらい待ったのだろうか。
「その頃、俺、お前のこと・・・何にも考えてなかった・・ゴメン、ゴメンな」
手紙に向かって何回も何回も謝った。
ふと、カレンダーを見つめた。なんですぐに気づかなかったのか・・・
「2月11日・・・・今日じゃねえかよ!」
約束の時はもう過ぎてしまったけれど、もう戻ってこないけれど行かなきゃならない。
約束を果たしに、約束から4年後の今日に、
僕は涙を拭うと旅行カバンを持って手紙をポケットに閉まって玄関から出た。
「ごめんな・・・今度こそ、果たさなきゃ」
自然と僕は走り出していた・・・
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