B-002
受験日当日。
私は味がよく分からないまま朝食をとり、家族の応援を遠くに感じながら母さんの車に乗り込んだ。
この間まで「受験って感じがしないよね」なんて余裕ぶっていたのもつかの間で、
やっぱり当日ともなると興奮に近い緊張で体も気持もこわばってしまう。
「気合い入れて!」
だけども、母さんがそう言ったのは覚えている。
試験開始までもうしばらく時間があるとは思いつつも、
今まで苦手をまとめてきたノートを汗ばんだ手でめくりながら確認する。
一切声が漏れない教室は、既に受験会場。
いつか「始め」の声が聞こえたら、それが私達のゴール地点へのラストスパートを示す声。
気がついたときは
シャーペンをおいたときだった。
ちゃんと解けたかな…
頭真っ白なって、未解答なんてないよね…
そういう不安が残りつつも 私は受験を終えたのだ、今。
思えば早い一日だった。
いや、早い一年だった。
合否はまだ分からないけれど
もう私がする事はないから、落ち着いてゆっくり待っていよう。
「受験が終わったら、どんな状態になってるか分からないから迎えに来ないで。」
朝母さんに自分で言った言葉だ。
票希高校は家の隣の市にあるから、帰りは電車を乗り継がなければいけない。
高校見学の時一度訪れた事があったけど、それも車に乗ってきたときだったから実際ここから歩いて帰るのは初めて。