A-003
「あーっ、もしかして…あいり?」
にこにこ笑う男の子はどうやら小学生みたい。
にこにこ笑う男の子はどうやら私のことを知っていた。
「だぁれ?」
「ちぇ、僕はお前のことしってるのにお前はしらないのかよ?
僕はあんどう せな」
首をかしげてみせる。
「お前の…いとこだよ。」
「いとこってなに?せなは私のおにいちゃんなの?」
「うん、そう。」
まだお昼だったのに
せなのほっぺたは夕日に照らされてるみたいだった。
「あいりのおにいちゃん。」
私はびっくりしたけど
こんなかっこいいお兄ちゃんならうれしいなって思った。
それからせなは
おばあちゃんの家で私たちといっしょに三日間をすごした。
せなは力持ちだったし、うそはつかなかった。
いっつも笑っておばあちゃんの言うことを聞いて私とこうやに優しかった。
たまに私をおばあちゃんの家の近くの女の子の家に連れて行ってくれたけど
その子達は私より年が大きかったから友達にはなれなかった。
それに、
その子達はいっつもせなの周りにくっついて騒いでいたから私はちょっとつまらなくて。
夏休みも終わりに近づいて 私達は家に帰ることになった。
せなはバイバイって手をふって、悲しくなさそうな顔をしていたけど
私はとっても悲しくて バイバイって言えなくて、せなの耳でちいさく
「また来るからね。あいりのこと待っててね。」
そう言ったのを覚えている。
そうでもいわないと、せなならどっか行っちゃうってちいさいながらに気付いていたから。
次の年からおばあちゃんの家に行くのが楽しみになったけど
パパとママがべつべつになったらしくて、
私はママといっしょにいるからおばあちゃんの家にはいけなくなってしまった。




