通り道
山野さん夫婦は中古の庭付き二階建ての家を買い、結婚と同時に越してきた。
奥さんの里美さんは、結婚前から庭付きの家に住む様になったら犬を飼いたいと言っていたので、越してきてしばらくの後、ご主人は里美さんに大型犬のラブラドルの仔犬をプレゼントした。
新婚生活が半年程過ぎた頃、里美さんは玄関でたびたびおかしな気配や物音がする事に気がついた。はじめは外の通りの音が聞こえてくるのだろうと思っていたが、どうやら物音は玄関の中でしているらしい。
気味が悪くなった里美さんは、いつもは庭に繋いでいる愛犬を玄関の中に入れてみた。
愛犬を玄関に入れてしばらくすると。いつもは大人しい愛犬が
“うおん!”
と一声、威嚇する様に吠えた。
里美さんは誰か来たのかと玄関に出てみたが、誰もおらず、ドアは施錠されたままだった。
愛犬を中に入れる様になってから、玄関ではおかしな気配や物音がする事は無くなったが、困った事に今度は二階の、玄関の真上にあたる廊下で物音がする様になってきた。
気味が悪く怖かった里美さんは、ご主人に事の次第を話して、もう一匹、家の中で犬を飼いたいといった。
ご主人は家の中で気配がするのかどうかよく分からなかったが、里美さんが怖いなら、と室内犬のマルチーズを飼う事にした。
新しく家族の一員に加わったマルチーズは、まだ仔犬だというのに自分の役割を理解しているかの様に、玄関とその真上のあたりでよくワンワンと吠え、いつも怪しい気配を追い払ってくれている様だった。
しかし。
今度は玄関の真上の屋根や天井裏のあたりで、人が歩き回る様な音や気配がする様になった。
マルチーズが天井に向かって吠えると、しばらく気配はしなくなるが完全に追い払う効果は無い様だった。
庭にラブラドルを出していると、ラブラドルも屋根に向かって吠えている時があるという。
「まぁ、ね。家の中じゃないからまだいいんだけど」
里美さんはため息をついて言った。
さすがに屋根の上にまで犬を飼うわけにはいかず、犬の数を増やしたら効果が上がるかもしれないと、ご主人に提案中だそうだ。




