詩 ノート、写させて
掲載日:2026/05/24
「ノート、写させて」
「いいよ」
俺が言うと、彼女は優しくノートを差し出してくる。
ついうとうとして、授業を聞きそびれてしまったのだ。
自分が悪いのだが、先生に怒られなくて良かったと思う。
よく雷をおとす先生なので、苦手なタイプなのだ。
「うわ、綺麗な字」
ノートを見て、俺は驚く。
皆、似たか寄ったかの字を書くのに、彼女だけは流れるような、まるで清い川のように、悪い点が1つもない字だった。
「すげえ!! しかも分かりやすい!!」
黄色いマーカーや赤いペンを使っており、先生が黒板に書くよりも見やすかった。
その先生は、字が下手で有名なのだ。
自分で自信満々なだけで、周りは認めていないのだ。
「そう? ありがとう」
彼女は前の席に座り、俺の手に注目する。
俺はちょっと緊張してしまう。
「俺、字が汚いんだけど」
「え? そう? 私的には、ダイナミックで良いと思うけれど」
本気でそう思っているらしく、素直な表情だった。
子どもみたいな澄んだ瞳に、俺は見つめられながら、ノートを写していく。
彼女の真似をして、色を使ったりすると、色んな発見があり、何かの魔法なように思える。
俺の彼女、頭が賢くて良かった。
そう思いながら、ノートに集中するのだった。




