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『異世界水先案内人 不遇職ナビゲーターの奇跡的な軌跡』  作者: アマ研


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第六話 ―絶望が産声をあげる部屋―

 

 冒険者ギルドの報告室には、重苦しい沈黙と、鉄錆のような血の匂いが充満していた。

 椅子に深く沈み込み、震える手で酒を煽る男――生き残った二名のうちの一人が、検分官を前にポツリ、ポツリと語り出した。

「救助依頼だったはずなんだ。第4階層で足止めを食っている新人を連れ戻す……俺たち8人のベテランなら、片手間でもこなせる仕事だと、誰もが思っていた」

 男の瞳には、今もあの光景が焼き付いている。

「広間に踏み込んだ瞬間、鼻を突いたのは腐肉の臭いだ。そこで見たのは、変わり果てた遭難パーティの姿……いや、肉の塊だよ。全滅していた。だが、それを悼む暇さえなかった」

 男はガチガチと歯を鳴らした。

「そこは**『モンスターハウス』だった。それも、ただの部屋じゃない。中央に鎮座するマザーモンスター**が、10秒で5匹……ドロドロとした胎液を撒き散らしながら、新たな化け物を産み落とし続ける、地獄の産卵場だ」

 検分官がペンを止める。「第4階層で、そこまでの規模のものは報告にないが」と。

「ああ、そうだ。だがな、もっとあり得ないことが起きた。産まれ落ちたのは、その辺のゴブリンやスライムじゃねえ。……トロルだ。本来なら第10階層まで潜らなきゃ拝めないような巨躯が、4階層の狭い部屋にひしめき合ってやがったんだ」

 男は力なく笑った。

「ダンジョンにゃ謎が多い。こんな事も日常茶飯事なんだろうよ。昨日までの常識が、今日は通用しない。俺たちが積み上げてきた経験も、攻略法も、あの増殖し続ける暴力の前では紙屑と同じだった」

 8人いた精鋭は、一人、また一人とトロルの棍棒に叩き潰され、マザーの餌食となった。

 救助に向かったはずのベテランが、救助される側どころか、死体すら残せなかったのだ。

「……毎日が過激なパラダイス、なんて揶揄されるがな。あそこはパラダイスなんかじゃない。ただの、食肉加工場だ」

 報告を終えた男の目は、もう二度と迷宮へ向かう者の輝きを宿していなかった。

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