第一話
とある町にある廃墟には、一度入ると大凶が出るまで外に出られないと言う噂がある。その廃墟は、4階建てになっており、最上階に行くと水みくじが置いてあるらしい。俺達は興味本位で放課後向かう事にした。
メンバーは同じクラスのいつメンだ。歳は16歳、高校一年生。
俺は松野 勇気、後は、勉強は出来るが、お調子者の佐藤 真悟、感情の揺れが少なく、本当は何を考えているのか分からない荒木 岳、ニコニコ笑い優しい性格だが、怖いものが苦手な林 俊太。
他のクラスでも行った奴らが居るらしいが、皆んな帰ってきているし大丈夫だろうと、軽はずみな考えで来たんだが…
「おいおいおい、これ大丈夫なのか入って。俺、霊感とか無いけど、なんかやばい気がする」
建物はいつ壊れるか分からない様なオンボロで、木が生えているが生えっぱなしで建物を覆いそうなぐらいだ。それと、夏なのにこの辺りだけ以上に寒く感じる。蝉の鳴き声とこの違和感に、俺はだんだん怖くなって今にでも逃げ出したいぐらいだ。
「大丈夫だろ〜。このぐらい怖くねぇと、スリル味わえねぇって」
お調子者の佐藤は、全くビビらず入りたがっている。荒木は何も言わず、じっと建物を眺め、俊太は
「無理無理無理。もう俺帰る。こんなの罰当たりだって、いくら廃墟でも不法侵入になるよ」
と、ガクガク震えるほど怯えている。確かに、怖がっている奴が居るのにこんな所に入るのは可哀想だ。学校で話している時はノリで、揶揄うつもりで来たが、ここは揶揄うどころか、俺も怖い。
「俊太やばそうだし、やめとかね?」
俺が怖いと言えず、友達を使って言ってしまった自分に、情けなく思うが、これでいい。
だが、
「いや行こうぜ、俊太が怖がってるのは元々怖いのが苦手なんだし、俊太囲いながら歩いたら大丈夫だろ。ほら行こうぜ〜」
「ちょ、先々いくなって!…」
キィーーーー…
勝手に扉を開けた佐藤に続いて扉に近づく荒木。
「荒木まで…」
後ろを振り向くと、首を振る俊太。怖いのに入らせるのも可哀想だが、あの二人だけ行かせるのも心配だ。よし。
「俊太、今日は帰りな。なんか分かんねえけど、ここに踏み入れるのは危険な感じがする」
すると、俊太は申し訳なさそうに帰って行った。俺も怖いが、先に帰って何かあっては後味が悪い。頬を叩き気合を入れ、俺も開いた扉に向かった。
扉の中は電気もなく真っ暗だ。スマホのライトをつけて床の軋む音を響かせながら先に進む。蜘蛛の巣があちらこちらにかかって居て、ヤモリが壁に張り付いて、建物の中は埃っぽい。噂のせいか、しばらく誰も中に入って居なさそうだ。
雰囲気はあるが、勝手に電気がついたり、鳴らないはずの電話が鳴ったりと言う様な、怪奇現象は起きず、すんなり最上階の4階まで上がる事が出来た。ほっとする俺の横で、
「なんか味気ねぇな〜、誰だあんな噂流した奴」
と、佐藤はがっかりしている。荒木は表情が一定で、何も話さない。
ただ、噂通り、水みくじが置いてあった。
「まぁ来たんだからやってから帰るか」
と、佐藤が一枚の紙を水が張った石の桶の中に入れる。だんだんと浮かび上がる文字。
大…
「大吉…」
「よっしゃあ、大吉だ。今年末吉だったから、大吉引けて良かったわ」
喜ぶ佐藤に、肩をトントンと叩く荒木。
「これ、大凶の反対だ。一応、噂では大凶が出ないと出られないんでしょ」
「あー! 本当だ! 喜び損じゃねぇかよぉ。何も起きねえし、もう一回引いとくか…」
と、佐藤と荒木が話している後ろに何か気配が…
「お前ら後ろ!!」
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