表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

クソ広告に花束を

作者: 猫長明

「エロ広告、脱毛のぐろ画像広告、下からせり上がるポップアップ広告。

 これらの広告ってネットに必要だと気付いたの」

「何言ってるんですか頭湧きました?」


「まぁそういう反応になるわよね。

 私もずっと鬱陶しく思ってたのよ。

 なんでこんな広告ばかり増えるんだろうって考えたこともある。

 何故だと思う?」

「結局は効果があるからなんですよね。

 仮に1万人が見るサイトに広告を掲載するコストを1万円として、

 千人に1人がクリックして2000円分の商品を買った場合、

 広告効果は0.1%で99.9%の人を不快にさせますけど

 売上は2万円なのでコスト引いて1万円の儲け。

 資本主義のバグ感ありますよね」


「そうね。私もそうだと思ってたの。

 クソ広告で商品買っちゃう0.1%。

 お前らのせいでネット環境が悪くなってるんだぞ、って。

 でも、それだけじゃない。

 むしろクソ広告がネットを良くするって気付いたのよ」

「ありえないと思いますが話だけは聞いてあげますよ」


「えっとね、私ずっとpixivの見る専なのよ」

「創作・二次創作のイラストサイトの大手ですね。

 もう開設されて18年というのだから驚きます。

 開設時に生まれた赤ちゃんが今はR-18イラスト見てるんですもん」

「YouTubeもずっと見る側で楽しんでるわ」

「HIKAKINのデビューも同じくらいなんですね」

「この辺ってもうネットのインフラになってるわよね」

「そうですね」


「で、これらのエンタメインフラサイトって、広告・タイアップ・プレミアム会員サービスで利益を得てるわけだけど、この中で最も効率的に利益になるのってどれだと思う?」

「広告、とはならないんですよ。

 クソ広告会社に収益が行くのが納得できないんですよ。

 どう考えてもプレミアム会員サービスです」


「そうよね。プレミアム登録が一番ストレートな儲けで、顧客と企業がWinWinの関係になれるのよね。

 でも、pixivもYouTubeも致命的な欠陥があるのよ。

 最初から便利すぎるの」

「どういうことです?」

「ソシャゲは無課金で楽しむのってなかなか難しいじゃない。

 でも、pixivもYouTubeも無課金で十分楽しめちゃうわけ」

「あー、まぁ、そうですね」


「プレミアムの意味が薄いなら、ユーザーも登録しないわ。

 この問題を解決するためには、プレミアムの付加価値を高めればいいんだけど、単純なインフラだからこそこれが難しい。

 ユーザーとしてpixivもYouTubeもなくなると困るのはそうだからプレミアム登録するべきだとは思うんだけど、結局みんな財布には制限があるわけで、お金を使うならBOOTHでクリエイターさんの商品買ったり、メンバーシップの推しのVにスパチャするわけよ」

「それで運営に利益が回るなら別にいいかって思っちゃいますよね」


「ただここで別の方法があるの。

 無課金状態での利便性を下げればいいのよ」

「理屈の上だとそうなりますが……」

「うん、不便になるとpixivやYouTubeの運営が嫌いになるのよね。

 これは資本主義の仕組みとしてよくない。

 じゃぁ、ここで広告がどんどんクソになっていったら?」

「あっ!」


「そうなのよ。

 クソ広告がサイトの利便性を下げると、ヘイトの大半がクソ広告に向くのよ。

 それで、ここまで不便だともうプレミアム登録もやむなしかってことになって、登録すると広告の出ない快適な環境が待ってるわけ」

「あー……」


「だいぶ前、YouTubeの動画内で表示される広告の回数が増えた時。

 YouTubeへの文句が一気に湧いて出たわよね」

「まともに動画が見られませんでしたもんね」

「広告で利便性を下げプレミアムに誘導するという仕組みは同じでも、広告の量を増やすのは運営側の対応だから、これだと運営にヘイトが向いちゃうの。

 でも今は広告の数は変わらないけど、クソ広告だけがどんどんクソを強めている。

 これは全部クソ広告会社がヘイトを吸い取るわよね」

「うわー……」


「もちろんインフラサイトの運営はクソ広告の掲示で収入を得るわ。

 つまり運営側としては、もう広告はクソになればなってくれるほど良い。

 この共犯めいた関係が、ここ数年のクソ広告のクソさを飛躍的に成長させていると気付いたの。

 pixivもYouTubeもFA◯ZAの品性の欠片もないような最悪なエロ広告を見て『もっと品性下げてウザい感じでいきましょう!』って裏で煽ってる可能性まであるわ。

 つまり、クソ広告はインターネット泣いた赤鬼だったのよ」

「インターネット泣いた赤鬼」


「本来、無料で何かを楽しむってこと自体がおかしいのよ。

 日本人は水と安全はタダだと勘違いしてるって言われるけど、今はエンタメもタダだと勘違いしてるの。

 ソシャゲだとなんかもう、無課金であることが賢くカッコイイ自慢みたいになっちゃってるしさ。

 運営側も『無料で◯◯できます』って感じで無料を押すから、勘違いが加速しちゃう。

 でも実際は、私達はエンタメインフラにお金を払うべきなのよ。

 なくなっちゃうと困るんだから。

 それを気付かせてくれたクソ広告に、今はちょっとだけ感謝してるわ」

「なんか発想の逆転感がありますねぇ……」


「で、そこから思考を発展させると、クソ広告を殲滅する方法に気付くの。

 今までは『クソ広告を見ない、買わない』ってことしかできなくて、買ってる人に『買うなー! お前のせいだー!』って叫ぶだけ。

 能動的な行動ができなかったんだけど……」

「そうか、プレミアム登録することが能動的な撲滅を進めるんですね」

「そうなのよ。みんなプレミアム登録して広告をオフにすれば、広告効果がなくなって、広告コストが利益を上回ってしまう。

 また、プレミアムだけで収益が維持できれば、運営も自分のサイトの印象を悪くする広告の掲載なんてしなくなる。

 こうして広告はネットを汚染し、最終的にネットを浄化する。

 まるでナウシカの腐海みたいだわ」

「世の中腐ってやがる!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ