(28)無垢な言葉
アルマが問いかけたダンジョンの儀式について、シオンは記憶を辿るようにしばし目を伏せ、静かに語り始めた。
「あの儀式のことだね…。王家の伝統で、十五歳になるとダンジョンに入ることが定められている。でも、正直に言うと、僕自身はほとんど何もしていないんだ。ただ奥へ進み、ダンジョンのコアにたどり着いたら、白いローブを纏った魔法使いたちが儀式を始めて、それで終わりさ。」
シオンは苦笑とも取れる微笑を浮かべ、軽く肩をすくめながら言葉を続けた。
「彼らが何やら荘厳な儀式を行っていたけど…正直、僕には何のための儀式なのか、いまだによく分からない。形式的なものなのか、それとももっと深い意味があるのか…」
その何気ない言葉に、アルマとカーライルの間に一瞬、緊張が走った。
「白いローブを纏った魔法使い」
それは、王妃が長を務める王立魔法研究所の者たちが着用する正装。この儀式に王妃が深く関わっていることを暗示していた。何げない一言だったが、その背後に潜む意味を二人は瞬時に悟った。
アルマは内心の驚きを押し隠しながら、慎重な微笑を浮かべ、柔らかな声で返した。
「代々続く王家の儀式ですから、きっと形式を超えた何か、深い理由があるのでしょうね。」
シオンはその言葉に特に疑問を抱くこともなく、再び肩をすくめて答えた。
「そうかもしれないね。ただ、あの儀式を経たことで、僕はようやく王家の一員として、成人した証を得た。それで十分だと、僕は思っているよ。」
その言葉の背後に隠された無邪気さと、儀式の真相に気づいていない彼の現状が、二人にかえってさらなる不安を呼び起こした。
カーライルは無表情を装っていたが、その内心では、目の前の王子が無意識に背負わされている何かについて思索を巡らせていた。アルマもまた、静かな表情を保ちながら、胸の内でこみ上げる疑念を抑え込んでいた。
やがて、部屋の空気が再び静寂に包まれる中で、シオンはふと眉をわずかに動かした。それは感情を押し隠そうとする無意識の仕草だったが、彼の瞳には一瞬、覚悟にも似た光が宿っていた。
深く息を吸い込み、シオンは慎重な声で言葉を紡いだ。
「カーライル殿、少し席を外していただけるだろうか。アルマ殿と話をしたい。」
その言葉は穏やかだったが、内に潜む緊張感を覆い隠すことはできなかった。カーライルはその意図を敏感に察し、黙って頷くと無言で部屋を後にした。扉が静かに閉まると、重い静寂が玉座の間を包み込んだ。
シオンは再び深く息を整え、アルマをじっと見つめた。その眼差しには揺るぎない決意があり、同時にどこか儚げな迷いも混じっていた。
「実は…アルマ殿に伝えたいことがある。」
その声は低く、慎重に選ばれた言葉の一つ一つが、彼の内に秘めた葛藤と覚悟の重みを浮かび上がらせていた。玉座の間に漂う静寂は、シオンの言葉をより一層深刻なものとして際立たせ、その瞬間の重要性を強調しているようだった。
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