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愚痴聞きのカーライル ~女神に捧ぐ誓い~  作者: チョコレ
第三章 建国の女神様
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(15)王都のギルド

 王都の街を巡り歩き、気づけば太陽も傾き始め、空が橙色に染まり始めていた。朝、宿を出たときからフィオラが「絶対に寄るで!」と意気込んでいたギルドへ、ようやく三人は足を向けた。


 重厚な扉を押し開けると、石造りの広間に冒険者たちの喧騒と熱気が渦巻いていた。空間全体が低いざわめきで満たされ、壁際の掲示板には討伐、素材採取、護衛依頼といった多種多様な紙が所狭しと貼られている。掲示板の前には冒険者たちがひしめき合い、各々が目当ての依頼を探していた。


 フィオラは一言も言わず、真っ直ぐ掲示板へ向かった。彼女の目は鋭く光り、掲示板に並ぶ紙を一枚ずつ丹念に読み取っていく。その姿はまるで宝石を選り分ける職人のようで、その集中力にはカーライルとアルマも自然と目を引かれた。


「どんなモンスターが出るのか、何が求められてるのか、ここでしっかり把握せなあかん。」フィオラは声に力を込めながら言った。「街ごとに需要は違うから、それに合わせた魔具を作らんと。自分がええと思うものだけ作っても、売れんかったら意味ないやろ?」


 その真剣な横顔に、カーライルは腕を組みながら小さく微笑む。「なるほどな。お前、本当に商売人だな。」


 フィオラは掲示板に貼られた依頼書を指でなぞりながら、満足げに頷く。「当然や!お客さんが満足してくれる魔具を作らんと、職人としての誇りが立たんからな。」鋭い視線を掲示板全体に走らせながら、一際興味を引く依頼を見つけては小さく頷いていた。


「『輝石の瞳』が王都で人気なんやねぇ。これって死霊系モンスターに有効やろ?王都近くのダンジョンでそいつらが出るって噂やけど、対策に使うんかなぁ。」とフィオラが呟く。


 その横で、アルマが掲示板の隅に目を留めた。「夢幻の塔への入り口を見つけた者には銀貨五枚…古代遺跡の挑戦者求む。」彼女の青い瞳がその依頼書をじっと見つめ、小さく息を漏らす。「古代…特級魔法への手掛かりがあるかもしれないわね。」


 その静かな呟きに、フィオラが興味津々の顔を向けた。「夢幻の塔?なんや、それ。そんな遺跡があるん?」


「塔は伝説だけど、もし本当に存在するなら、失われた魔法が眠っている可能性があるわ。」アルマの声には、知識を追い求める強い意志が込められていた。


 カーライルは掲示板の右下に目を留め、険しい表情でつぶやいた。「未解決事件…魔石の盗難か。定期的に起こってるってことは、何者かが計画的に動いてるんだろうな。」


「金貨三枚…えらい高額な報酬やな。でも、それだけ厄介な案件ってことやろ。」フィオラが冷静に指摘する。


 三人はしばらく無言で掲示板を眺め、それぞれが胸中で思いを巡らせていた。フィオラは新たな素材への好奇心に胸を躍らせ、アルマは古代の謎を解き明かす可能性に期待を膨らませ、カーライルはその裏に潜む危険の気配を探りながら思索を深めていた。


 やがてフィオラが掲示板から顔を上げると、受付に目を向けた。軽やかな足取りでカウンターへ近づくと、端正な顔立ちと落ち着いた佇まいの女性が彼女を迎えた。受付嬢はギルドの賑わいの中でも、どこか凛とした雰囲気をまとい、頼りがいのある存在感を放っている。


「最近、面白い動きとか、何か情報ない?」フィオラが明るい笑顔を浮かべて尋ねる。その声には好奇心と期待が色濃く滲んでいた。


 受付嬢は微笑み、少し考えるように視線を宙に彷徨わせた後、「そうですね…」と静かに言葉を紡いだ。「近々、ミスリル級の冒険者が王都に戻ってくるという噂があります。その方が来れば、溜まっていた高難易度の依頼が一気に片付くでしょうね。」


「ミスリル級!」フィオラは驚きに目を丸くし、大きな声を上げた。「それって、冒険者の中でもめっちゃすごい階級やんな?」


 受付嬢は優雅に頷き、「ええ、ミスリル級は冒険者階級の中でも最上位に近い存在です。鉄、銅、銀、金と階級を重ね、さらに数々の実績を積み上げた者だけが辿り着ける称号です」と穏やかな声で説明した。


 その話を聞いていたカーライルが、軽く鼻を鳴らしながらぼそりと呟く。「ミスリル級か…どんな奴なんだろうな。ちょっと興味が湧くな。」


「王都のギルドにとっても、大きな出来事ね。」アルマが柔らかな口調で続けた。「高みを目指す者の姿を見るのは、私たちにとっても刺激になるわ。」


「ほんまやな!」フィオラは笑顔を輝かせ、「そんなすごい冒険者、どんな人なんやろ?直接話してみたいわ!」と声を弾ませた。


 受付嬢もその熱意に引き込まれたかのように微笑み、「詳しいことは分かりませんが、有名な方だそうですよ。王都でお目にかかれるのは珍しいので、楽しみですね」と誇らしげに答えた。


「そいつが戻ってきたら、ギルドの雰囲気もガラッと変わりそうだな。」カーライルは肩をすくめながら軽い口調でつぶやいたが、かつての冒険者らしい期待がその表情に浮かんでいた。


 受付嬢は三人のやり取りを楽しげに見守りつつ、「きっと王都のギルドにも新しい風を運んできてくれるでしょう。彼がどんな物語を紡ぐのか、楽しみです」と語った。


 ギルドの喧騒の中、三人の間にはほのかに温かな空気が漂っていた。背後では冒険者たちの活気に満ちた声が響き、新たな冒険の予感が胸を高鳴らせていた。

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