(7)魔法の学び舎
宿に着いた頃には、空はすっかり黄昏の色を失い、夜の帳が静かに降り始めていた。宿の前には旅人たちが行き交い、明かりが灯された窓からは賑やかな声が漏れ聞こえてくる。三人は荷物を降ろし、手続きが終わるまでの間、しばしの休息を取ることにした。
カーライルは手荷物を軽く肩から下ろし、短く「少し休む」と言い残して部屋へと向かった。その足取りには微かな疲労が滲み出ていたが、肩越しに振り返ることもなく消えていった。アルマとフィオラは、彼の背中を見送りながら互いに目を合わせたが、特に言葉を交わすことはなかった。
ロビーの椅子に腰掛けたアルマの表情には、どこか物思いにふけるような影があった。彼女は遠くを見つめながら、ぽつりと呟いた。「母校の王立魔法学院に、少し顔を出してみたいわ。学院長にも挨拶をしておきたいし、久しぶりにあの場所の様子を見ておきたいの。」
その言葉に、フィオラがすぐに反応した。「ええやん!ウチも一緒に行くわ!」彼女の声には明るい響きがあり、その瞳には純粋な好奇心がきらきらと輝いていた。「学院って、きっとウチの魔具作りのヒントになるようなものがたくさんあるんやろなぁ。」そう言いながら、彼女は心躍るような表情を浮かべていた。
アルマは柔らかく微笑み、「そうね。一緒に行きましょう」と応じた。その表情には懐かしさと、少しばかりの期待が混じり合っているようだった。二人はカーライルを宿に残し、静かに学院へと向かった。夜の帳が街に降りる中、王都の石畳の道は影と光が織りなす神秘的な情景に包まれていた。
王城の南側に位置する王立魔法学院の大門が見えたのは、しばらく歩いた後だった。その堂々たる構えは、薄明かりの中でさらに荘厳な輝きを放ち、訪れる者に威厳と感動を与えるには十分だった。学院全体が放つ魔法の気配は、周囲の空気そのものを震わせるような力強さを持ち、二人を圧倒した。
フィオラは立ち止まり、目の前に広がる光景に息を飲んだ。「初めてやけど、ほんまにすごい場所やな…」小さく呟いたその声は、学院の荘厳さとそこに宿る歴史に対する畏敬に満ちていた。
アルマは彼女の隣を通り過ぎ、慣れた足取りで学院の受付へと向かった。彼女にとってこの場所は、特別な記憶を多く宿す学び舎でありながら、今ではどこか日常の一部のようにも感じられる場所だった。アルマは受付の魔導板に指先をそっと触れると、青白い光が静かに広がり、手続きをスムーズに進めていった。
学院内に一歩足を踏み入れると、空気が一変した。どこからともなく漂うマナの粒子が、青白い光を微かに放ちながら宙を漂い、あたり一面に魔法の存在を知らしめていた。フィオラは目を丸くし、目の前の光景に完全に魅了されていた。床に描かれた複雑な魔法陣が美しく輝き、その上で生徒たちがマナを操る姿は、まるで別世界のようだった。
「なんちゅう場所や…まるで魔法そのものが生きとるみたいやん。」フィオラは感嘆の声を漏らしながら、その場から動けずにいた。学院全体に流れるマナの脈動は、まるで大地そのものが鼓動しているかのようであり、彼女の心に深い感動を刻み込んだ。
一方のアルマは、その光景を懐かしむような微笑みを浮かべながら静かに歩みを進め、学院長との面会の準備を進めていた。彼女の足取りは落ち着いており、かつての日々を思い出しながらも、確かな目的を持って進む姿勢があった。そんな彼女の背を追いかけるフィオラの瞳には、新たな世界への扉が開かれる予感と希望が宿っていた。
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