(38)無邪気な酒豪
フィオラの堂々とした飲み方に、酒場の視線が自然と集まる。彼女は気にする様子もなく、懐から取り出した銀貨を手の中で弄び始めた。その仕草は銀貨の価値など気にも留めていないかのような余裕を感じさせる。それはまるで冒険の成果を手にした後の贅沢を、当然のように楽しんでいるかのようだった。
「この店、中級のボトルも置いてるんやね!」
フィオラは目を輝かせ、嬉しそうに声を上げた。その興奮に満ちた様子は、まるで宝を見つけた冒険者そのものだった。目が留まったのは、水属性のマナを含んだ「水酒」のボトルだ。特に中級品は、水棲馬の角を漬け込んだ逸品で、冷たい海底を思わせる爽快感が味わえる酒として知られている。この街ではめったにお目にかかれない貴重な品だったが、偶然にも棚の隅で静かに輝くそのボトルが、彼女の目を捉えて離さなかった。
銀貨を掲げて注文すると、青みがかったボトルがテーブルに置かれた。フィオラは待ちきれない様子でそれを手に取り、瓶を光に透かして中を覗き込んだ。冷たく輝く青い液体が、まるで氷の結晶が溶け合うかのように煌めき、その美しさに彼女の瞳が輝いた。
「温まった後に、この冷たくキュッと冷えるのが最高やねん!」
フィオラは栓を勢いよく外し、冷気がほのかに漂うのを感じながら慎重にグラスへ注いだ。透明で澄んだ青い液体がグラスの中でゆらめき、その美しさを見つめる彼女の表情は喜びに満ちていた。まだ口をつけていないにもかかわらず、その期待感が周囲にも伝わるようだった。
彼女が水酒を口に含むと、その冷たさが電流のように体中を駆け巡った。温まった体にひんやりと染み渡る感覚は、まるで冷たい海底に一気に潜り込んだかのようだった。フィオラはその瞬間を全身で味わい、ゆっくりと飲み干した。
「ふぅーっ!」フィオラはほっとしたように大きく息を吐き出し、瞳を閉じた。彼女の頬には、心地よさと深い満足感が宿っており、まるで全身がその冷たさに包まれて癒されているかのようだった。
隣では、アルマが炭酸水のグラスを静かに持ち上げ、フィオラの飲みっぷりをじっと見つめていた。小柄な体にどこか幼さが残るフィオラだが、彼女の堂々とした飲み方には不思議な貫禄が漂い、見ているだけで頼もしさすら感じられる。その様子にアルマは微かに笑みを浮かべたが、ふと彼女の年齢が気になった。しかし、そんな考えを抱いたこと自体が失礼だと気づき、その疑問を胸の奥へ押し込めた。
フィオラの無邪気な笑顔と大胆さが絶妙に交錯する姿に、アルマは目を細める。炭酸水を一口飲むごとに、その冷たさが静かに喉を潤しながら、隣の仲間を見守る安らぎが彼女の中に広がっていた。
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