(27)闇と氷の牢獄
完全復活を遂げたゴーレム。その巨体を止めるには氷の魔法が不可欠だった。アルマは冷たい空気をまとい、静かに詠唱を始める。しかし、ゴーレムはまるで彼女の意図を察したかのように、目を不気味に輝かせながら突進してきた。
「危ないっ!」
アルマは咄嗟に横へ跳び、ゴーレムの巨大な腕が地面を砕きながら振り下ろされる瞬間を間一髪で避けた。しかし、代償は大きかった。詠唱は途切れ、完成寸前だった魔法が霧散してしまった。額に浮かぶ冷たい汗が、彼女の焦りを物語っている。
「このままじゃ、氷に閉じ込められない…!」
アルマの心に焦燥が募る。その間にもゴーレムは彼女を執拗に追い、まるでアルマを唯一の標的と定めたように正確に迫ってくる。その動きは容赦なく、巨大な腕が一度でも彼女を捉えれば、逃れる術はない。「動きを止めなきゃ…!」
カーライルは双剣を構え、ゴーレムの背後に素早く回り込んだ。全力で剣を振り下ろすも、硬質な音とともに刃は弾かれ、ゴーレムの巨体に傷一つつけられない。
「くそっ、やっぱり効かねえ…!」歯噛みするカーライルの焦燥が場の緊張をさらに高めた。
その時、フィオラの鋭い声が飛ぶ。「あんちゃん、さっきもらったゴーストスライムのコア、使わせてもらうで!」
カーライルが驚いて振り返る間もなく、フィオラは熟練の手つきでリュックからゴーストスライムのコアとナイトバットの羽を取り出していた。迅速かつ滑らかな動きで、それらを祖父特製のアルカナカノンに装填する。その手には迷いが一切なく、むしろ確信すら感じられる。
だが、迫る危機は待ってくれない。アルマの前で、ゴーレムの巨大な体がその手を振り下ろそうとしていた。クリスタルの表面が不気味な光を放ち、その威圧感が周囲の空気を張り詰めさせる。
「ここで止めな、あねさんが危ない…!」フィオラは強く歯を食いしばり、アルカナカノンを構える。そして、力強い声で叫んだ。
「そうはさせへんで!闇の帳!」その一声と共に、アルカナカノンから濃密な闇が噴き出した。闇は瞬く間に広がり、戦場全体を覆い尽くす。ゴーレムのクリスタルが放つ光をも無力化し、視界を完全に奪った。
「これで一旦、ヤツの目は潰したで!」フィオラは自信たっぷりの声で叫び、素早くアルマに視線を投げた。
「今や、アルマさん!」その声には、今しかないという確信と仲間への全幅の信頼が込められていた。
アルマはフィオラが作った好機を逃さず、深呼吸で焦りを押し込め、再び詠唱を始めた。その声には迷いがなく、全身を魔法の集中に捧げていた。
「氷獄牢!」
その声とともに冷気がゴーレムを包囲し始めた。空気が一瞬で凍てつき、戦場全体がまるで時を止められたかのような冷たさに包まれる。アルマは冷気だけを送り込むよう細心の注意を払い、マナがゴーレムに直接触れないよう慎重に魔法を操った。冷気は目に見えない蛇のようにクリスタルの隙間へと忍び込み、着実にその巨体を蝕んでいく。
クリスタルの表面が白く曇り始め、次第に霜が立つ。透明だった輝きは霞み、結合部からはきしむような音が響く。それは、ゴーレムの力が徐々に奪われている証だった。そして巨体は厚い氷に包まれ、ついに動きを止めた。
わずかに震える動きは最後の抵抗だったが、それもすぐに収まり、氷の鎖がクリスタルを完全に覆い尽くした。あれほど威圧的だった巨体は、忘れ去られた彫像のように凍りついていった。
「よっしゃ、第一段階成功や!」
フィオラは短く叫び、手早く次の準備に取り掛かる。
だが、安堵する暇はなかった。アルマの瞳には鋭い緊張が宿り、すぐに次の段階に意識を移す。「氷が持つのは一瞬よ。この隙に、コアを狙うしかない…!」
カーライルは剣を握り直し、ゴーレムの胴体と首の接続部を見据える。「胴体と首を切り離せば、ヤツは再生を始める。その瞬間に反射が解除されるはずだ。その瞬間を叩く…これしか手はねぇ。」
フィオラがすかさず口を挟む。「せやけど、首の接続部はめっちゃ硬いで!」
「わかってる。それでもやるしかない。」
カーライルの声は冷静でありながら緊張感が滲み出ていた。剣を握る手に力が込められ、その目には迷いのない決意が宿っている。
氷が砕ける前にすべてを終わらせなければならない――その時間との戦いが三人の覚悟をさらに固めていく。戦場に再び静寂が訪れる中、彼らの心には一つの確信が宿っていた。
これが最後の一手だ。失敗は許されない――全てを賭けるしかない。
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