(3)真実を求める歩み
カーライルは肘をつき、手を組みながら静かに口を開いた。
「嬢ちゃん、どうも妙な話だな。冒険者たちは普通にポーションを買えてるし、値段も変わっていない。ギルドの受付嬢も霊草の採取は順調だって言ってた。」
「お前の話と食い違ってる。」
アルマの眉がわずかに動いた。
「でも…ポーション工房では霊草が足りない、それがもう一カ月も続いてるって確かに聞いたわ。それが本当なら、一体どこで止まっているの?」
カーライルは短く息を吐き、テーブルを見つめる。
「そこが問題だ。」
霊草は採れているのに、工房に届かない。つまり、どこかで流通が意図的に止められている可能性がある。
「ギルドがその中心にいるなら、何か理由があるはずだ。」
アルマは唇を噛み、目を伏せて考え込んだ。しばらくの沈黙の後、顔を上げる。
「なら、ギルド長に直接話を聞くしかないわ。」
カーライルは目を細め、わずかに笑う。
「ギルド長に直談判か。肝が据わってるな。」
「ディーン様とは昔から顔見知りよ。」
アルマは毅然とした口調で答えた。
「銀貨一枚くれるなら、ついて行ってやってもいいぞ。」
カーライルが皮肉げに言うと、アルマは肩をすくめて微笑む。
「そんな無駄遣いするわけないでしょ。でも、どうしてもついてきたいなら隠蔽魔法をかけてあげるわ。」
カーライルは軽く吹き出し、肩をすくめた。
「隠蔽魔法とは念が入ってるな。まあ、ここまで首を突っ込んだんだ。銀貨なしでも手を貸してやるよ。」
アルマの口元に、微かな笑みが浮かぶ。
「ありがとう、カーライル。意外と頼りになるのね。」
「褒めてるのか、馬鹿にしてるのか分からんな。」
カーライルは苦笑しながら立ち上がる。
「さて、行こうか。」
二人は領主の屋敷を後にし、昼の日差しが照らす通りを歩き出す。柔らかな光が石畳を包み、木々の影が揺れる中、カーライルはアルマの小さな背中を見やる。
「嬢ちゃん、本当に覚悟はできてるのか?」
ふと、低い声で尋ねた。
アルマは立ち止まり、振り返る。
その碧眼は太陽の光を反射し、揺るぎない意志を宿していた。
「もちろん。この街を守るためなら、私は何だってする覚悟があるわ。」
カーライルは一瞬、言葉を失う。
だが、すぐに笑みを浮かべた。
「じゃあ行こう。ギルド長との話がどんな展開になるか、楽しみだ。」
アルマは頷きながら歩き出し、「覚悟だけじゃ足りないわ。準備も必要よ。」と呟く。
次の瞬間、彼女は低く呪文を唱え始めた。
「虚ろなる影の帳が、光を捻じ曲げ、真実を欺き、かの物の姿を永遠に覆い隠さん──幻衣幕!」
呪文の響きが静かに消える。
カーライルは肩をすくめ、冗談めかして言う。
「で、俺はもう誰にも見えなくなったってわけか?」
アルマは振り返り、小さく笑う。
「その通りよ。ただし、私には見えるから、変なことはしないで。」
「変なことって…俺を何だと思ってるんだ。」
カーライルは苦笑し、再び歩き始めた。昼の陽光が二人の足元を照らし、長い影を伸ばしていく。その影は、これから直面する真実への道筋を象徴しているかのようだった。
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